第2話 転移してきました。
私は丘の上に立ち景色を一望した。
数百メートル先に魔獣の群れがいた。
名前はサイクルホーン。犀の角がドリル状になっていて体は鉄の板を張り付けたような魔獣。
体は太陽光を反射して光って見えている。
この反射してぴかぴか光っているほど異性にモテるという。
性格はおとなしく近くまで寄ることができる。
そのおとなしく攻撃性のない性格が災いして乱獲の憂き目にあった。
昔は色違いのサイクルホーンがいたらしいが今ではこの種類だけになっている。
角は美術品として人気があると言う。一部では粉末にして薬としても使われるらしい。
肉の方は滋養強壮効果があると言われ人気がある。
サイクルホーンの撮影を終えて画像を事務所に送った。
保護官に就職したときは何の仕事をするのか想像がつかなかったが基本的には毎日車で保護区内を走りまわるパトロールが主な業務だった。
パトロールと並行して発信機を取り付けた魔獣に異常がないか確認する。
子供が生まれていたりするとある程度成長するのを待って発信機を取り付ける。
魔獣ハンターと呼ばれる密猟者もいるらしいがまだ遭遇したことはない。
前の世界では一日中椅子に座りパソコンとにらめっこの日々ばかりで運動不足に悩まされていたがここでの仕事は180度変わって新鮮で楽しかった。
外仕事は向いていないと勝手に思っていたが外仕事も悪くないと思いなおしていた。
サイクルホーンの撮影後しばらくパトロールを行い昼になったので休憩をとっていた。
「そういえば魔法の訓練とかしてんの?」
車の荷台の椅子で昼ごはんの弁当を食べている時に話しかけられた。
「いえ、特にはしていないですね。保護区の隣が魔法学院なんで通うのもありかなって思ったんですが年齢がね・・・」
「あー魔法学院な。たしかに学生っていう年齢じゃないな。」
「今年で32歳、これで10代の子と一緒に学校に通うとなるのは精神的につらいですね。
ボッチ確定です。」
「それに魔法学院は評判がよくない。あんなところに通うなら普通の学校に通ったほうがいい。
魔法学なんて勉強しても就職で不利になるだけだ。魔法ばっかり勉強するから大学受験でも苦労するらしいぞ。」
「魔法王国って名前の国なのに魔法学院の評判悪いですね。」
「魔法全盛の時代なんてとっくの昔に終わってる。
魔法が社会に有益ならいいがそうじゃないからな。どちらかというと迷惑なもんだし。」
「確かにこれだけ便利な世の中なら魔法が使えてもメリットないですね。」
そうなのだ、この世界では魔法はもう古代の遺物と思われている。
魔法が使えなくても生活に何も支障はなかった。
魔法学院では魔法の強化に力を入れているのではなく魔法の制御に重点を置いて教育しているとインターネットの学院のホームページに書かれていた。
社会に出たときに魔法が暴走して危害を加えないようにとのことだ。
せっかく魔法が使えると言うのにいろいろな魔法を習得して一流の魔法使いを養成するようなところはないようだった。
隣が魔法学院の敷地なので悪口を言っても失礼と言うものだ。
それに魔法学院には美人な先生がいることも知っている。
「あんまり魔法学院の悪口を言っているとそれこそ魔法で聞いているかもしれませんよ。」
と冗談を言うと
「こわいわー。」
と先輩は笑っていた。
先輩は魔法は使えず使える知り合いもいないという。
私が学院の守衛室で目ざめた後ゴリラの獣人が”転移者”として行政手続きをしてくれた。
美人であるエルミナ先生が学院の教師寮の空き部屋を住まわせてくれるように手配してくれた。
学院には世話になりっぱなしなので評判がよくないと聞いて残念な気持ちになった。
エルミナ先生からこの世界には時折”転生者/転移者”が現れると聞いた。
古代の書物にもそのことが書かれており現実的な問題として扱われ法律まで整備されているという。
転生者は前世と言う形で異世界のことを覚えているので聞き取り対象になるという。
転移者は記憶喪失になっていることも多く、単に事故などで記憶喪失になったのを誤って転移者と認定してしまっているケースもあるという。
私のように元の世界の記憶を保持しているのは非常に珍しくエルミナ先生は興味津々であった。
それにしても転移者用の行政手続きがあるいうのが実にファンタジーぽくていい。
その法律のおかげで住民票を作成することができ1人の人として人権を有することができた。
転移したからか見た目は以前の俺と同じだった。
せめてイケメンとかになってくれていたらよかったのにと思ったものである。




