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異世界に転移したので今度は魔獣保護官として生きていく  作者: オツタロ
1章 新生活

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第1話 転移してきました。

マエダ ケンスケ、32歳。都内でITエンジニアとして働くサラリーマンだったもの。

2か月前にこっちの世界にきた。というか俺は転移してきた、らしい。

異世界に渡るときに付与されると言われるチート級の特別な力もなく俺はこちらに来ていた。

覚えているのは寝る前にひどくしんどかったということくらいだ。

同僚が無断欠勤した結果同僚のプロジェクトを引き継ぐことになった。

案の定炎上していて連日連夜プロジェクトを軌道に乗せるべく奮闘していた。

恋人もいたがデートするどころか電話で話す気力もなくなっていた。

毎日スマホに届くメッセージを見て終わっていた。

余裕があるときに返そう。明日返そうと思っていたらこの世界に来てしまっていた。


私は魔法学院という学校の敷地内に倒れていたらしい。

巡回していた警備員が気が付いて守衛室に運んでくれた。

仮眠用のベッドで目が覚めた俺は自分が違う世界に来てしまったとすぐに気が付いた。

警備員が「目が覚めましたか」と声をかけて水が入ったコップを渡してくれた。

その警備員は獣人だった。

顔は豹で体が人間。手は手袋をしていてわからないが腰あたりからしっぽが生えていた。

驚いて何も話せない俺に警備員がおろおろとしているとゴリラの獣人と人間の美人な女性が現れた。

美人な女性は30代半ばくらいで自分と同い年くらいだと感じた。

黒髪がよく似合っている。

雰囲気もどこか恋人に似ているなと、恋人のほうが10歳は年下のなので10年後の姿はこんなだろうと思った。

女性は学院に勤める先生だと紹介された。

ゴリラの獣人は優に2mは超えていたが一言も話さず本当はただのゴリラではないかと思った。


先生からのいくつかの質問に答えると

「あなたは転移者に該当します。」

と言われた。

以前の姿形を保ったまま異世界を渡ってきたものを言う。

一方転生者は赤ん坊になって異世界に来るのだと言う。

先生は異世界のことを研究している研究者でもあった。


太陽の光が眩しい午前中の車内。

「おーい。ぼーっとすんじゃねーぞ」

車が道なき道を走っていた。

荷台にある長椅子に私は座っている。

先輩が運転席から声をかけている。

「もうすぐ目的地だ。準備しておけよ。」

私たちは今魔獣保護区の平原を車で走っている。

車はガソリン車の4輪駆動エンジン。

舗装されていない道路でも問題なく力強く走ってくれる。

5分経過したころ私たちは目的地に着いた。

車が停車し俺は荷台に積まれていた荷物を下ろすために車を降りた。

見渡す限りの平原の先にポツンと小高い丘が見える。

その先に今回の目的の魔獣がいる。

魔獣、普通の動物と違い魔力を持ち魔法に似た超常の力を使う。

魔法使いと人間の戦争から200年が経過し魔法使いは破れ世界は人間のものとなった。

魔法のような超常の力を使うものは今や魔獣が最多の存在となっているが、その魔獣でさえ人間の生み出した武器の前では赤子も同然と言ってよかった。

兵器が魔法を超えたとき魔獣は格好の獲物となり乱獲され多くが絶滅した。


一部で魔獣を保護しようという市民運動が起こり法律が制定され魔獣保護区が制定された。

しかし魔獣のもつ特別な素材を狙って魔物ハンターと呼ばれる者たちが暗躍している。

守衛室で美人さんと一緒に現れたゴリラの獣人はこの保護区で魔物保護活動をしている会社の社長だった。

たまたま職員の枠に空きがあるということで私は魔獣を保護する魔獣保護官としてこの保護区で働くことになった。


「この先にいるってことで間違いないか?」

先輩が丸形のレーダー装置を見ながら言った。

「いやいやその装置にもしっかりとマークが出ているじゃないですか、私への確認なんていらないですよ。」

「いやいや貴重な魔法使い様じゃないか、魔獣が近くにいるのがわかるんだろ?」

「ええまぁそうですね。数と方向がおおよそわかります。

この丘を越えたところに魔獣がおおよそ10頭くらいいる感じですね。」

「お、せいかーい。正しくは13頭だな。発信機の信号のほうが正確だね。」

先輩は笑うと丘の方に歩いて行った。

撮影はスマホで行う。撮れたら専用のアプリを通じて会社に送付する。

私は胸ポケットから社用スマホを取り出した。

黒の長方形、薄くて物理的なボタンがなく画面のみの構成。

俺がいた世界と同じものだ。

ブランド名こそ違うが操作の仕方は一緒だ。

「またそんな顔して、あれかー、”俺がいた世界にも同じのがあったんですよ”って言うんだろ」

先輩が下手な口真似をする。

そうなのだ、俺は確かに転移してきた。

その結果若干ではあるが魔法が使えるようになっていたが低レベルの検知能力しか得ていなかった。

魔法があり魔獣がいるし社長にいたっては獣人だ。

ファンタジー要素てんこ盛りなのにこの世界は現実的すぎる。

移動は車しかもガソリンで動く。近未来的な乗り物ってあるじゃないか、逆にレトロに馬車というチョイスでもいい。

なのになんで車なのか。

スマホはあるわ。インターネットは高速だわ。空には飛行機も飛んでいる。

最初こそ獣人を見て腰を抜かしたが見慣れてしまうと異世界なのに異世界に転移したことを忘れてしまう自分がいた。

なんでも、魔法使いは昔の戦争でほとんど滅びてしまったという。

魔獣も銃の前では歯が立たず乱獲の末今や絶滅寸前だという。

夢がない。。。

魔法ってもっと凄いもんじゃなかったのかよ。

魔獣ってもっと強かったんじゃないのかよ。

何のためにこんな夢の無い世界に来てしまったのか。



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