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異世界に転移したので今度は魔獣保護官として生きていく  作者: オツタロ
1章 新生活

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第11話 逃避

私は呼吸するのも苦しくなっていた。

赤の他人を使って記録を植え付けた?

まともじゃない。

エルなら以前のエルならこんなことはしなかったはずだ。

私が死んだことがショックなのはわかる。

それでも超えてはならない一線があるだろう。

彼女は狂っている。


「どうして、、、そんなことを。。。」

それだけしか言えなかった。

「あなたをケンスケさんを愛しているから。

この世界であなたとやり直したい。」

彼女は私を見つめるが目を合わせることができない。


「本当は目が覚めたあなたに私だと気づいてほしかった。

でも無理な話ですよね。

10年経ってしまいましたから。

私はもうあの頃とは変わってしまったから。」

そう言って私の体に触れようと手を伸ばしてきた。

「触るな!」

彼女の伸びかかった手がビクンッと止まる。

「狂っている。君は頭がおかしい。」

私が仕事にかまけて挙句の果てに過労死したのがいけなかったのか。

過労死しなければ彼女はここまで狂うことがなかったのだろう。


どうしたらいいのだ。

私の理解を超えていた。

聞かなければよかったとすら思っている。

あの生徒たちに乗せられて開けてはいけない扉を開けてしまったのだ。


私はおぼつかない足どりで部屋を出た。

彼女が後ろから何かを言っていたがまったく耳に入ってこなかった。

衝撃が強すぎて自分の精神のキャパシティで超えていた。


消えてしまいたい。

そう思った。


どこか遠くに行こう、そう思い魔獣保護区内のビジターセンター横の車両置き場に向かった。


「どこにいくのかな。マエダくん。」

車両置き場手前のところに人が立っている。

あの時彼女と一緒にいた守衛室にいた社長だ。


「あなたもグルだったんですね。」

「そうだよ。」

「こんなことをして正気ですか。」

「正気だとも。魔法は万能であるべきだと思わないか。

今はまだ万能ではない。

まだ発展途上だ。伸びしろがあるんだよ。

君はこの世界で新たな生を受けたというのに何が不満なのかね。」

「あの方は今ひどく精神が乱れている。落ち着くまで事務所で君も休んでいたらどうだい?

君はあの方の恋人なのだろう?

恋人として側にいて寄り添うべきだろう。」


「個人的には君のことを伝えるのは慎重にならなければいけないと思っていたんだがね。

男女の機微はガラス細工のように繊細だ。」


その全身を獣毛で覆われ2mを超える体格からは似合わないセリフ。


「そこをどいてください。」

彼は私と車両を交互に見て道を譲った。

私は一歩ずつ慎重に社長を睨みつけながら並んでいる車両に近づいた。

鍵がさしっぱなしになっている車両があるはず。

車両はそれぞれのグループで決まったものを使用している。

他のグループがずぼらのことをしていても注意などしていない。

本来使用の都度鍵は事務所の保管庫に収納するルールだが守っていない人がいるのは知っていた。

その保管庫のチェックも毎日行うルールだがそれも形骸化していてきちんと確認している人はいない。


次々と車両のドアのノブを動かし、5台目でドアが開いた。

キーは車内に置かれたままになっている。

そのままキーを差し込み車を走らせた。


「あちゃー、車のキーは使い終わったらボックスに戻せって言ってあるのに。

No.5の車両か、最後に使ったやつは始末書だな。」

社長は毛深い頭を書くとこめかみに指をあて


「すみません、お嬢。彼は車で逃げてしまいました。行先は保護区内なので追跡は問題ありません。

追いましょうか。

・・・はい。こちらに来られるのですね。

了解です、では待っておきます。」


どれくらい走っただろうか。

仕事終わりに研究室に行ったときは夕暮れ時だった。

それから彼女の告白を聞き魔獣保護区に来た。

その時は日は沈みかけていてほぼ夜と言ってよかった。

今はすでに日は落ちていた。

腕時計を見ると20時を指している。

魔獣保護区でのスマホの電波は届きどこでも使用できる。

それでも時間の確認となると腕時計より早いものはない。

1時間は走っている計算になるのか。


月明りと車のヘッドライトだけが頼りだった。

街灯もない草原は暗く、ヘッドライトの明るさを強調するように闇が広がっていた。

自分はどこに向かってアクセルを踏んでいるのかも、どこに行きたくてハンドルを握っているのかもわからない。


夜のパトロール経験はまだない。

特別な時にしかしないと聞いている。理由は肉食獣が活動しているからだ。

昼間に活動する動物は夜になると眠る。

その眠っている動物を狙う魔獣や肉食獣がいる。

今は車が走っているから安全だろうがガソリンが尽きた時どうするべきか考えておかないといけない。

そう思っても思考がまとまらなかった。

このまま朝まで走るのか、どこかで休憩するのか。

それすらも考えることができなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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