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Cross:僕らの旅  作者: 森の森
第一章

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同行の誘い

ハナが自分のことを紹介し終えると、その態度が急に変わった。

嫌悪感を滲ませながら、自分の獣のような腕を見つめる。

「数年前、アタシは一人の『シノア人』の男から依頼を受けて、古代遺跡にある物を探しに行ったの」

そう話すうちに、ハナの口調はますます苛立ちを帯びていった。

「かなり苦労したけど、やっと遺跡の奥で目的の物を見つけたの。変な腕輪だったわ」

ハナは無意識に、指を少し強く握りしめた。

まるで、またその時のことを思い出したかのようだった。

「ところが、それに触れた瞬間、強烈な不快感に襲われて、アタシの身体はこんな獣人の姿になったのよ。あのクソ野郎は最初からこうなることを知ってて、こっそりアタシの後をつけてた。アタシがこんな姿になってから、ようやく姿を現して、腕輪を持っていったの」

ずっと話を聞いていたカールが、低い声で尋ねた。

「……牧師や魔法使いでも、解けないのか?」

「当然でしょ。腕の立つ牧師や魔法使いを何人も訪ねたわ! でも、みんな答えは同じ。『お手上げだ』って。普通の変身魔法なら、必ず時間制限があるか、魔力が尽きるはずなのに……アタシにかけられたこの呪いには、時間制限がない。『永久的な変異』なのよ。記録すら残っていない、古い呪いかもしれないって、みんな言ってたわ」

ハナはそこで言葉を止め、歯ぎしりした。

「呪いを解くには、あの腕輪と、それを奪ったシノア人の男を見つけるしかないのよ」

だが、そう言った直後、ハナは自嘲するように息を吐き、肩を落とした。

「……でも、アタシは商人じゃないから、『通行証』すら手に入らない。護衛として雇ってもらおうとしても、身元の分からない獣人なんか、誰も相手にしてくれない。もともとは人間だったって言っても、誰も信じちゃくれない。アタシ一人の力じゃ、オーレン大陸には行けないのよ」

「……だから、ずっとこの大陸の国境付近をうろついていたんですか?」

ヴァンの問いに、ハナは後悔しながらうなずいた。

「そうよ。仕方ないから、国境近くのいくつかの町をあちこち渡り歩いて、いろんなところで情報を集めてた。たまに珍しいシノア人を見かけたら、ちょっと『痛い目』を見せて、無理やり聞き出したり……それから、何度かあの遺跡に戻って、あの呪いの手がかりを探したりね」

ハナはため息をついた。

しばらくしてから顔を上げると、少し気を取り直したようにヴァンを指差した。

「それを二、三年くらい続けてた……数日前、前の町で偶然あんたを見かけるまではね。珍しい黒髪、シノア人特有の顔立ち……」

ハナは当時のことを思い出しているように、視線を少し逸らした。

「夜、窓の外からあんたたちの話を盗み聞きして、あんたたちがオーレン大陸へ行くつもりだと確信した。だから、その日以来ずっとあんたたちの後をつけてたのよ」

「ああ、なるほど……そういうことだったんですね」

ヴァンは何かを思い出したように、小さく呟いた。

「何よ?」

ヴァンは手を振った。

「何でもありません。僕のことです。続けてください」

「チッ……でも、あんたのそばにいるあの緑色の大男、一目見ただけで厄介な奴だって分かるじゃない。ずっと隙を見つけられなかったのよ。やっとあんたが一人になったから、ちょっと『話をする』だけのつもりだったのに。まったく、運が悪いったらありゃしないわ。一瞬のミスでこいつにやられちゃうなんて……」

ハナは悔しそうに首を横に振り、深いため息をついた。

「なるほど。分かりました」

ヴァンは静かにうなずき、ハナの目をまっすぐ見つめた。

「それでは……今日の昼に話しきれなかったことですが」

「え?」

「残念ですが、ハナさんが探しているその男について、僕は本当に知りません。それに、本当にあなたを騙しているわけではありません。僕はオーレン大陸の人間ではないんです……信じてもらえますか?」

ヴァンの率直な眼差しを受け、ハナはすっかり怒る気もなくしたように肩をすくめた。

「分かったわよ。あんたみたいな変な奴が、嘘をつくような奴にも見えないし」

ハナは困ったように髪を掻き、長いため息をついた。

「はぁ――こんなに長いこと後をつけてきたっていうのに、結局何の収穫もなし。そのうえ、人の部屋まで掃除させられるなんて、ツイてないったらありゃしないわ……」

肩を落とすハナを見ながら、ヴァンは少し考えてから口を開いた。

「ねえ、ハナさん」

「……何よ。用でもあるの?」

ハナは顔を上げ、気の抜けた様子でヴァンを見た。

「ハナさん。もしよければ……僕たちと一緒にオーレン大陸へ行きませんか?」

「……はぁ!?」

ハナは思わず声を裏返らせた。

「あんた、冗談でしょ!?」

「冗談ではありません」

ヴァンは数歩近づき、真剣な表情で彼女を見つめた。

「あんたが探している男はシノア人でしょう? だったら、ここでずっとうろついて情報を探すより、僕たちと一緒にオーレン大陸へ行ったほうが、その男を見つけられる可能性も高いと思います」

「だから、さっき言ったでしょう! アタシには『通行証』がないから、国境を越えられないのよ! ちゃんとアタシの話、聞いてたの? それに、あんたたちだって持ってないんでしょう?」

ヴァンは笑った。

「そうですね。でも、今日は親切な女性に出会ったんです。その人の提案で、今は南の港へ向かって、船でオーレン大陸へ行くつもりです」

「ふ、船!?」

ハナは目を見開き、思わず身を乗り出した。

「あそこまでの船賃が、どれだけ馬鹿みたいに高いか知ってるの!?」

ハナに詰め寄られ、ヴァンは困ったように笑って頬を掻いた。

「まあ、お金のことは後で考えましょう。まだ時間はありますし、何とかなるでしょう」

ヴァンはそこで言葉を切り、隣で我関せずといった様子のカールへ視線を向けた。

「ねえ、カール。僕たちはこの辺りのことをまったく知りませんよね? だったら、この辺りの事情に詳しい人が一人いてくれたほうが、いいんじゃないですか?」

それを聞いたカールは、ハナをちらりと見て、鼻で「フン」と短く鳴らした。

「……俺は構わない」

カールは無表情のまま、淡々と答えた。

数秒の沈黙のあと、さらに一言付け加えた。

「ただ、こいつ、腕はいい」

それを聞き、ヴァンは満足そうにうなずいた。

「よし」

ハナは「ドン!」とテーブルを叩き、ヴァンに詰め寄った。

「あんたたち二人、いくらなんでも適当すぎるでしょ!? アタシたち、今日初めて会ったばかりなのよ! そんな簡単に初対面の相手を信用して、本当に大丈夫なの!? 裏切られるかもしれないのよ!? 夜中にあんたたちが寝てる間に、荷物を持って逃げるかもしれないのよ!? あんたたちも少しは警戒しなさいよ!」

ハナが興奮してまくし立てても、ヴァンは動じず、ただ静かに彼女を見つめていた。

「でも、このままずっとこうしているわけにもいかないでしょう?」

「え……」

「この国境付近でずっと足踏みしていても、何も進みません。だったら、ここで時間を使い続けるより、一歩前へ進んでみたほうがいい。もしかしたら、何かいいことが起こるかもしれませんよ」

優しいのに、痛いところを突いてくるその言葉に、ハナは一瞬言葉を失った。

「……なんでよ」

ハナは怒る気もなくなったような声で、ぽつりと呟いた。

「なんで、赤の他人にここまでするのよ……」

その問いに、ヴァンは少し懐かしそうに目を細めた。

「僕の母が、昔こんなことを言っていたんです。『有縁千里来相会』……縁のある人は、たとえ千里離れていても、いつかきっと出会う、という意味です」

ヴァンは微笑みながら肩をすくめた。

「今日みたいに出会えたのも、きっと何かの縁なんでしょう。目的地も同じなんですから、助け合わない理由もないでしょう?」

そう言いながら、ヴァンはカールを一度振り返った。

「……それに、食事の時に口が一つ増えるだけですし、僕はまったく気にしませんよ」

「……俺はちょっと気になる」

隣で、カールがぼそりと呟いた。

ヴァンは思わず笑った。

「カールは、自分の分が減るのが嫌なだけでしょう?」

「……」

カールは反論せず、ただ顔をそむけた。

目の前で緊張感のかけらもなく振る舞う二人を見て、ハナは完全に呆れ果てた。

自分はこんなにも悩み、こんなにも警戒しているというのに、目の前の二人は、まるでピクニックの予定でも立てているかのように、何事もなかったように言い合っている。

あまりにも計画性がなく、あまりにも楽観的だ。

これからどうするのか、本当に真剣に考えたことがあるのかと疑いたくなるほどだった。

以前の自分なら、きっと相手を馬鹿にして、鼻で笑っていただろう。

だが今は、いくら頭をひねっても、これ以上にいい方法が思いつかなかった。

ハナはしばらく俯いて考え、最後に仕方なくため息をついて顔を上げた。

「……まあ、そこまで言うんなら、一緒に行ってやるのも悪くないわ」

ヴァンは振り返り、ハナを見る。

「アタシみたいな腕の立つ護衛がいれば、あんたたちも旅をしながら金を稼ぐのがずっと楽になるでしょう?」

ハナはわざと顔を背け、胸を張って、まるで自分のほうが一枚上手だと言わんばかりの態度を見せた。

「うん」

ヴァンは小さく笑い、右手を差し出した。

「では、これからよろしくお願いします、ハナさん」

「……うん。よろしく」

ハナは少し照れながら、ヴァンの手を握り返した。

「そういえば」

ヴァンが唐突に口を開いた。

「あの日の焼き魚……美味しかったですか?」

「え……!?」

ハナは呆然と口を開けた。

数秒後、その頬がわずかに赤くなる。

「……ま、まあまあだったわ……!」

ハナは気まずそうに顔をそむけ、必死に強がって答えた。

「そうですか。それはよかったです」

ヴァンは笑った。

「……違う!アタシが言ってるのはそこじゃないの!」

ハナは顔を赤くしたまま、慌ててテーブルを叩いた。

「とにかく、アタシが言いたいのは――」

ハナがそう言いかけた、その時だった。

――ゴゴゴゴゴゴン!!!!

突然、窓の外の遠くから、夜の静寂を引き裂くような爆発音が響き渡った。

「な、何!?また何か起きたの!?」

ハナは慌てて身構えた。

カールも警戒して窓の外へ目を向ける。

ヴァンは窓辺まで歩き、音が聞こえてきた方向を見た。

すると、町の反対側、遠く離れた場所から、空へ向かって燃え上がる炎と濃い煙が立ちのぼっていた。

「何が起きたんです……?」

燃え盛る炎を見つめながら、ヴァンは訝しげに小さく呟いた。

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