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Cross:僕らの旅  作者: 森の森
第一章

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29/35

命令

ブレッドは振り返り、マリカを見る。

マリカは軽くうなずいた。

二人は一緒に鉄籠へ向かって歩き出した。

一歩。

二歩。

三歩。

二人が鉄籠の前まで来て、布をめくろうとした、その瞬間――

――ドン!!

巨大な衝撃音が突然、鉄籠の中から響き渡った。

鉄籠全体が激しく揺れる。

「何――」

ソウリュウは反射的に数歩後ろへ下がったが、足元が乱れ、身体をよろめかせて、危うくバランスを崩しかけた。

次の瞬間。

大人の身長ほどもある一本の巨大な牙が、猛然と鉄柵へ突き当たった。

――ドン!!

分厚い布の一角がめくれ上がる。

驚異的な大きさの巨獣が、鉄籠に激しく体当たりした。

その身体は分厚く硬い甲殻に覆われ、その巨大な身体から、耳をつんざくような咆哮が上がっている。

「ひゃっ!?」

口ひげの男は驚いて、その場に尻もちをついた。

ブレッドとマリカはその場に立ったまま、平静に目の前の巨獣を見ていた。

巨獣はしばらく鉄籠の中で激しく暴れていたが、やがてその動きが少しずつ収まっていった。

ゆっくりと身体の向きを変え、暗がりの奥から、二人へ向けられた目だけが静かに光っていた。

ブレッドはわずかに目を細め、その姿を上から下まで確認する。

「よし」

「確認できた」

ブレッドは振り返り、口ひげの男を見る。

「中にいるのは確かに一頭の犀甲マンモスだけだ。登録情報とも一致している」

口ひげの男は鉄籠とブレッドを交互に見た。

「え?」

ブレッドは書類をしまった。

「本日の検査はこれですべて終了だ。ご苦労さまでした」

「ですが……」

「では、私たちはこれで失礼します」

口ひげの男がまだ状況を理解できていないうちに、ブレッドはすでに振り返り、三人を連れて動物商人の滞在地を後にしていた。

* * *

しばらく歩き、周囲に誰もついてきていないことを確認してから、四人はようやく足を止めた。

四人はしばらくの間、誰も口を開かなかった。

カミアはマリカを見る。

「どうだった?」

マリカはペンダントを見下ろし、しばらく黙っていた。

「ほんの一瞬だけど、さっき、ペンダントの共鳴が明らかに強くなったよ」

ソウリュウはすぐにマリカを見る。

「本当か?」

「うん」

マリカはうなずいた。

「あの犀甲マンモスが突っ込んできて、布がめくれた時」

ブレッドは動物商人の滞在地を見た。

「つまり……」

「龍の首は、あの辺りにある可能性が高いってことですわね」

カミアが言葉を引き継いだ。

「でも、具体的にどこにあるかまでは分かりませんわ」

「マンモスの身体に?」

ソウリュウが尋ねる。

「可能性はある」

「鉄籠の近く?」

「それもあり得る」

「じゃあ、今から戻って捕まえるのか?」

「いや」

ブレッドは首を横に振った。

「今はまだその時じゃない」

彼は動物商人の滞在地の方向を見つめた。

「さっきの臨検だけでも、十分に相手の警戒を引き上げてしまった」

ソウリュウは彼を見る。

「じゃあ、これからどうする?」

ブレッドは少し黙った。

「とにかく……まずは商会に戻ろう」

ブレッドは動物商人の滞在地の方向を見た。

「いったん戻って休んで、夜になったら、もう一度こっそり来よう」

カミアは彼を見る。

「どうするつもりですの?」

ブレッドは彼女を見る。

「まずは何か手がかりがないか探す。龍の首の場所を特定できれば、それが一番いい」

ブレッドは一度だけ言葉を切った。

「証拠を見つけるか、あるいは本人たちを証拠と一緒に押さえられれば、そのほうが手っ取り早い」

そう言うと、四人は商会へ戻っていった。

* * *

一方その頃――

ヴァンは大量の荷物を抱えて宿へ戻ってきた。

「ごめん。お腹空いたよな」

ヴァンは体で扉を押し開けながら言った。

「もっと早く戻るつもりだったんだけど、つい夢中になって歩き回っちゃって――」

言葉が終わるよりも早く。

――ヒュッ!

――ドン!!

尖った木片が彼の頬をかすめ、背後の壁へ深々と突き刺さった。

ヴァンはその場で固まった。

彼はゆっくりと振り返り、壁に刺さった木片を見た。

それから部屋の中へ目を向ける。

室内はすでに完全に荒れ果てていた。

ひっくり返った机。

砕けた椅子。

乱れた寝具。

そして部屋の中央では、カールが身体を低くし、両手を握りしめている。

その向かいには、先ほどまで意識を失っていた斑鬣犬獣人の女が、すでに目を覚ましていた。

彼女は背中をわずかに弓なりにし、牙をむき出しにしている。

金色の獣の瞳が、カールをじっと睨みつけていた。

二人の間には数歩ほどの距離しかない。

どちらも一歩も引こうとはしない。

どうやら二人とも、ヴァンが戻ってきたことにまったく気づいていなかったようだ。

ヴァンは入口に立ったまま、目の前の光景を見つめていた。

しばらくして、抱えていた荷物からゆっくりと両手を離した。

ドサッ――

荷物が床に落ちた音が響き、そこで初めてカールとハイエナの女が同時に振り返った。

二人の視線が、入口に立つ男へ向けられる。

「……二人とも」

男の顔から笑みは消えていた。

その表情も冷たくなっていた。

声は普段とそれほど変わらなかった。

ただ、その中にあった穏やかさと丁寧さだけが、完全に消えていた。

「……今すぐ、止めろ」

怒りはない。

責める言葉もない。

その言葉には、何の感情も、ない。

そこにあるのは、ただ純粋な命令だけだった……

さっきまで一触即発だった二人は、今、同時にその場で動きを止めた。

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