鉄籠
四人が第三組の滞在地にあるテントの前まで来ると、家畜の臭いが一気に鼻を突いた。
鳥の鳴き声、獣の咆哮、そして鉄柵がぶつかる音が混じり合い、テントの中から絶えず聞こえてくる。
「すみません! これから定期検査を行いますので、ご協力をお願いします」
ブレッドが声をかけると、口ひげを生やした男がテントの中から足早に出てきた。
「いやいや、商会の皆さん、お疲れさまです」
男は終始愛想のいい笑顔を浮かべていた。
彼は手を上げ、皆を中へ招いた。
「どうぞお入りください。ご自由にお調べください」
ブレッドはうなずいた。
「ただの定期検査だ。緊張しなくていい」
「もちろん、もちろんです」
男は笑顔で答え、それから振り返って案内を始めた。
四人は彼の後についていった。
テントに入った途端、大きさの異なる檻が視界に入ってきた。
ほとんどテント全体を埋め尽くすほどだった。
空気中の家畜の臭いは外よりもかなり濃く、頭上から鳥の鳴き声が絶えず聞こえてくる。
時折、鳥が檻の中で羽ばたく音も聞こえ、そのほかにも、中の動物がもがくたび、いくつかの檻がわずかに揺れていた。
檻の中には、さまざまな動物が閉じ込められている。
鳥もいれば、トカゲもいる。
それに、彼らが今まで見たこともない奇妙な生き物もいた。
「どこから検査を始めますか? 鳥からですか、それともトカゲですか?」
「先にトカゲを調べよう」
「分かりました。すぐに人手を手配します」
男が何人かを呼ぶと、トカゲの入った檻が次々と脇へ運ばれていった。
検査が始まると、ブレッドは登録されている情報に従って一つずつ確認していった。
ソウリュウは周囲の檻を見回し、思わず口にした。
「ここ、動物が本当に多いな。まるで動物園みたいだ」
そう言って、彼は檻の中の動物たちをもう一度見た。
「でも……あまり元気がないように見える」
マリカは軽くうなずいた。
「こんなに小さな檻にずっと閉じ込められていれば、当然そうなるよ……」
口ひげの男は笑った。
「お恥ずかしい限りです。動物が多くなれば、どうしても行き届かないところが出てきますから」
検査は順調に進んだ。
最後のトカゲの檻まで調べ終わっても、誰も異常を見つけることはできなかった。
口ひげの男は頭上に吊るされている鳥籠を見上げた。
「次は鳥ですか? あの籠を下ろさせましょうか?」
「いや」
ブレッドは首を横に振った。
「先に下のほうを調べよう」
「分かりました」
男は答えた。
四人はそのまま奥へ進んでいった。
カミアは後ろを歩きながら、絶えず周囲の檻へ視線を向けていた。
鳥籠のほとんどは宙に吊るされている。
何層にも重なるように吊り下げられ、それぞれがかなり近い位置にあり、ものによっては他の檻に隠れてしまっているものもあった。
口ひげの男がブレッドの質問に答えていた、その時。
カミアが突然、足を止めた。
「それは……」
彼女の声はとても小さかった。
マリカが振り返る。
「どうしたの?」
ソウリュウも足を止めた。
カミアは手を上げ、脇を指差した。
「あそこ」
皆が彼女の視線の先へ目を向ける。
似たような色の鳥籠が何層にも重なる、その奥。
一羽の青藍色の鳥が静かに身を丸めていた。
周囲にも似た色の羽を持つ鳥が何羽もいる。
だが、その鳥の羽はより鮮やかで、頭から垂れ下がる長い冠羽も周囲の鳥とは違っていた。
マリカはその鳥を見て、表情をわずかに変えた。
「あれは……青冠鳥?」
「青冠鳥?」
ソウリュウは疑問そうにマリカを見る。
「うん」
マリカはうなずいた。
「熱帯森林地域に生息する希少な鳥で、その羽はとても貴重な魔法素材なの」
カミアが続ける。
「ですが、過去に大量に捕殺されたため、今では数が非常に少なくなっていますわ」
マリカは鳥籠の中の青冠鳥を見つめた。
「今はもう、捕獲も取引も禁止されているはずだよ」
ソウリュウは一瞬呆然とし、疑問そうに尋ねた。
「じゃあ、どうしてここにいるんだ?」
「おそらく、闇市で売るつもりなのでしょうね」
カミアはソウリュウを一瞥した。
「希少なものほど、高い金を払ってでも欲しがる人がいる。ましてや、別の大陸へ持っていくとなればね」
彼女は手元の資料をめくり、もう一度鳥籠を見た。
「彼らが提出したリストには青冠鳥は載っていません。当然、載っているはずもありませんけれど」
カミアはその青冠鳥を見た。
「周りの、色の似た鳥たちは、おそらくこの鳥を隠すためのものでしょう」
「ブレッドに知らせる?」
「いえ、まだ言わないで」
カミアは声を落とした。
「今の段階では、これがわたくしたちの探しているものと関係があるかどうか、まだ分かりませんわ。まずは検査を続けて。わたくしたちが何か見つけたと悟られないようにして」
その隣のマリカも軽くうなずいた。
「その点については、あたしも賛成だよ」
「分かった」
ソウリュウは黙り込み、もう一度背後の鳥籠を振り返った。
あの青い鳥は、相変わらず静かに身を丸めていた。
さらに奥へ進んでいくと、檻の数は少なくなり、周囲も次第に静かになっていった。
最後に、巨大な鉄籠が皆の前に現れた。
その鉄籠は周囲の檻よりも数倍大きく、分厚い布が全体を覆っている。
ただ側面に、細い隙間だけが残されていた。
口ひげの男が足を止めた。
「これは……」
彼の笑顔がわずかに強張った。
「これは、見なくてもいいんじゃないですか?」
ブレッドは彼を見た。
「どうしてだ?」
「中のやつは気性が荒いんです」
男はとっさに鉄籠の前に立ちはだかった。
「普段からこうやって閉じ込めているんです。驚かせたりしたら、何が起こるか分かりません」
ブレッドは答えず、手元の資料に目を落とした。
そこに登録されている名前は、犀甲マンモスだった。
男は無意識に半歩後ずさった。
「ただ確認するだけだ。中にほかのものがないか確認する」
ブレッドは平然と言った。
「問題ないだろう?」
口ひげの男は歯を食いしばった。
しばらくして、ようやく体を横へずらした。
「……分かりました」




