臨検
午後。
四人は商会が用意した制服に着替え、検査用の書類を持って商会を出て、三組の足止めされている商人たちの滞在地へ向かった。
ほどなくして、四人は第一組の商人たちの滞在地に到着した。
ブレッドは手元の資料に目を通した。
「第一組は陶磁器商人だ。まずはここから始めよう」
ブレッドはできるだけ商会の職員らしい口調を真似て、入口で声をかけた。
「すみません! これから定期検査を行いますので、ご協力をお願いします」
滞在地の中にいた人々は、手を止めた。
突然やって来た検査に、明らかに戸惑っている。
だが、すぐにそのうちの一人が自分から歩いてきた。
「商会の検査ですか?」
「そうです」
ブレッドはうなずいた。
「主に人員、荷物、それから登録状況の確認です」
「分かりました」
相手はすぐに他の者たちに声をかけ、荷箱を開けさせた。
滞在地には木箱が山積みになっている。
一つ、また一つと箱が開かれ、その中にはさまざまな陶磁器が整然と並べられていた。
杯、皿、壺、それに精巧な造りの器具もいくつかある。
「どれも普通の陶磁器です。皆さん、ご自由にお調べください」
ブレッドはしゃがみ込み、登録記録に従って一つずつ確認していく。
カミアとマリカも登録表を手に、滞在地の中を行き来していた。
ソウリュウも他の者たちの真似をしながら、できるだけ自分が商会の職員に見えるように振る舞っていた。
彼は一つ一つ箱を開けて確認していく。
だが、いくら開けても、中にあるのは陶磁器ばかりで、特に変わったものは何もなかった。
考えてみれば、それも当然だ。
陶磁器商人の箱の中には、もともと陶磁器しか入っていないはずなのだから。
ソウリュウは目を細め、軽く息を吐いた。
本当に何か問題があったとしても、そう簡単に見つけられるはずがない。
カミアはゆっくりと一周し、木箱の上を視線でなぞりながら怪しいところがないか確認すると同時に、周囲の魔力の痕跡を感じ取っていた。
その隣では、マリカも一緒に一周し、指をずっと胸元のペンダントに軽く添えている。
ほどなくして、二人の検査も終わった。
ブレッドは二人に顔を向けると、二人の視線が一瞬だけ彼と交わった。
ブレッドは立ち上がり、書類に簡単に数か所書き込んだ。
「検査は終了です」
そう言って書類をしまう。
「ご協力ありがとうございました」
「いえいえ」
商人は慌てて答え、四人はそのまま滞在地を後にした。
ソウリュウは振り返り、後ろの滞在地を見た。
先ほどあれだけ多くの荷物を調べたのに、何も見つからなかった。
ソウリュウは眉をひそめた。
(……本当に何もないのか?)
しばらく歩いたところで、ソウリュウがようやく口を開いた。
「本当に何の反応もなかったのか?」
「うん」
マリカは首を横に振った。
「まったく」
カミアも口を開く。
「わたくしのほうも、異常な魔力は何も感じませんでしたわ」
ブレッドは手元の資料を見た。
「なら、第二組へ行こう」
* * *
第二組は織物の貿易商だった。
滞在地にある荷物は、第一組よりもかなり多かった。
何巻もの絹織物や麻布が整然と積み重ねられ、そのそばには四人の護衛が立っている。
臨検の目的を聞くと、中年の女性が一人歩いてきた。
どうやらこの商隊の責任者らしい。
「また検査? 二日前に検査したばかりじゃないかい?」
その口調には、明らかにいら立ちが混じっていた。
「本当に申し訳ありません。上からの指示ですので、私たちも規則に従っているだけです」
ブレッドは書類を取り出した。
「すぐに終わります」
中年の女性はそれに目を通し、最終的にはうなずいた。
「分かったよ。おい、あんたたち。彼らを連れて荷物を見せてやりな。荷物を汚さないように気をつけるんだよ」
「はい」
彼女は人を呼び、いくつかの荷箱を開けさせた。
ブレッドは登録されている数量の確認を始めた。
「この絹織物は、いつ運び込まれた?」
「四日前です」
ブレッドはうなずき、荷物についている印をもう一度確認した。
中年の女性はそばに立っていた。
顔にはいくらかいら立ちが浮かんでいるものの、質問に答える時にはまったくためらいがなかった。
ソウリュウは傍らに立ち、話をする二人を見ていた。
こういう検査は簡単なものだと思っていたが、実際に見てみると、想像していたよりずっと面倒だった。
あれだけの荷物と登録内容を確認するだけでも、ソウリュウは少し頭が痛くなりそうだった。
授業の時だって、こんなに真面目にやったことはない。
だが、ブレッドは最初から最後まで少しも苛立った様子を見せず、相手との会話もとても自然だった。
もし自分が彼を知らなかったら、本当に商会の人間だと思っただろう。
……以前から、こういうことをよく処理していたのだろうか?
ソウリュウの記憶では、初めてブレッドを見た時は、訓練場で人と戦っていた。
普段の様子を見ても、ずっと事務所に座ってこういう仕事をしているようには見えない。
カミアは荷物のそばをゆっくりと歩いていった。
彼女は布に触れず、ただ目を閉じて魔力を感じ取っている。
しばらくして、彼女は目を開けた。
やはり、注意すべき魔力の痕跡は何も見つからなかった。
その隣にいるマリカのペンダントも、依然として反応を見せない。
二人の視線が再びブレッドと一瞬交わった。
「よし、検査は終了だ。協力に感謝する」
ブレッドは書類をしまった。
「お邪魔しました」
四人が滞在地を出ようとすると、中年の女性が彼らを呼び止めた。
「おい、ちょっと待ちな」
「ん? 何かありましたか、ご婦人?」
「ここの封鎖は、いったいいつ解除されるんだい?」
「それは……」
「私はこの町であまり時間を無駄にしたくないんだよ。あんたたちも分かっているだろう? 私たち商人にとって、時間は金だってことくらい」
「申し訳ありません、ご婦人。具体的な時期についてはお答えできませんが、そう長くは封鎖されないはずです。どうかご理解ください」
中年の女性は彼を上から下まで見つめた。
その後、目を閉じ、軽くため息をつく。
「分かったよ。あんたの顔がなかなかいいことに免じて、もうしばらく待ってやるよ」
彼女は手を振った。
「あんたたち、お客さんを送っておいで」
そう言うと、彼女は背を向けて立ち去った。
相手の滞在地を離れた後、皆で調査結果を確認し合ったが、それでも何の収穫もなかった。
第三の滞在地へ向かう途中、ソウリュウは思わず尋ねた。
「それにしても、本当にすごかったな、さっき」
「ん?」
「さっき話していた時、本物の商会の人みたいだった」
ブレッドは少し気まずそうに微笑み、わずかに視線を逸らした。
「まあ、代理団長だからな。いろいろ処理しなきゃいけないことも多いし、会議もかなりこなすんだ」
「そうなのか。お前も大変なんだな」
ブレッドは小さく笑い、それから前方を見た。
「でも、こういう経験のおかげで、いろいろ学べたよ」
それを聞いて、カミアとマリカも思わず笑った。
ブレッドは二人を一度見てから、再び前を向いた。
「よし、残るは最後の一組だ」
彼は手を上げ、袖口を整えた。
「もうひと頑張りしよう。もしかしたら、今度こそ何か見つかるかもしれない」
ソウリュウは彼の視線の先を追った。
最後の滞在地は、もうそれほど遠くないところにあった。
前の二か所と比べると、そこは明らかに数倍も大きかった。
巨大なテントがいくつもつながっていて、遠くから見ると、まるで小さな城のようだった。




