調査の方法
三組分の資料が、静かに机の上へ並べられていた。
ブレッドの視線が、三組分の資料の間を行き来する。
「この三組の中で、どの組が一番怪しいと思う? 何か気づいたことはあるか?」
会長は少し迷ったあと、一枚目の資料を指差した。
「これ……でしょうか。動物商人たちだと思います」
「生きた動物の種類も多いですし、封鎖がなかなか解除されないことにも、かなり苛立っているようです」
ブレッドは目を伏せて資料を見つめたが、すぐには答えなかった。
しばらくして、ようやく口を開いた。
「こんなにたくさんの動物を連れて国境で足止めされていたら、毎日かなりの費用がかかる。苛立つのも無理はないだろう」
「あ、ええ、はい。そう、ですね」
会長は額の汗を手で拭った。
「残りの二組については、今のところ特に重大な問題は見つかっておりません。ただ、このような状況ですから、可能性を完全に除外することもできません」
「わかった」
ブレッドはそれ以上追及しなかった。
その視線は再び、三組分の資料へ落ちた。
しばらく、誰も口を開かなかった。
ソウリュウも机の上の資料を見つめていた。
「直接、一組ずつ調べに行くのは駄目なのか?」
彼は顔を上げた。
「どうせみんな同じ町にいるんだし、逃げられないだろ」
「駄目だ」
ブレッドは軽く首を横に振った。
「問題は、調べられるかどうかじゃない。俺たちだけで、全部の場所を一度に調べることはできないんだ」
彼の指が、机の上を軽く叩いた。
「最初に調べた場所が目的の場所じゃなかった場合、相手に俺たちの動きに気づかれる可能性が高い」
ソウリュウの眉がゆっくりと寄った。
「そうなると……」
「そういうことだ」
ブレッドはその言葉を受け、口を開いた。
「相手に異変を察知されたら、事前に警戒される可能性が高い。その時になって調べても、何も見つけられないかもしれない」
ソウリュウは黙り込んだ。
カミアもすぐには口を挟まなかった。
彼女は机の上の資料を手に取り、三組の記録へゆっくりと目を走らせた。
しばらくして、ようやく口を開いた。
「商隊がこの町から出られないからといって、本当の標的がこの町から逃げられないとは限りませんわ」
彼女は一枚めくった。
「連絡役が、商隊とずっと一緒にいる必要もありませんもの」
カミアは最後の一枚までめくり、資料を机の上へ戻した。
「それに、もし龍の首がすでに彼らの手にあるのなら、こちらの動きに気づいた時点で、私たちが捜索している間に隠れることもできますわ」
彼女は顔を上げた。
「この町から直接出ていく可能性だってあります……もちろん、それは最悪の場合ですが」
カミアの指が、机を軽く叩いた。
「龍の首を持って堂々と街を歩く者がいるとは思えませんわ」
彼女の視線が、再び机の上の三組分の資料へ落ちた。
「おそらく、先にどこかに隠して、関所を通れるようになるまで、そのままにしておくのでしょうね」
応接室は、再び静まり返った。
ソウリュウは机の上の資料を見つめたまま、顔を上げた。
「そうだ……」
皆の視線が彼へ向いた。
ソウリュウはマリカを見る。
「マリカ、君のペンダントは? ある程度の距離まで近づけば反応するって言ってただろ?」
マリカはわずかに驚いた。
彼女は反射的に胸元の銀色のペンダントを握った。
「……うん」
彼女はうなずいた。
「この町に到着した時、確かにペンダントは一瞬だけ反応しました」
彼女は目を伏せた。
「ただ……あまりにも弱い反応だったので、最初は自分の気のせいかと思ってしまって、すぐには言いませんでした」
「今は?」
ブレッドは声を荒らげることなく尋ねた。
マリカは顔を上げ、ペンダントを軽く握りしめた。
「今は……途切れ途切れですけど……確かに、少しだけ反応があります」
ソウリュウは彼女を見る。
「本当? それなら、それを使って見つけられないのか?」
マリカは小さく首を横に振った。
「たぶん無理です。今はまだ、かすかな反応を感じられるだけです」
彼女は目を伏せ、指はなおもペンダントを握っていた。
「あたしは……龍の首が何かによって隔絶されている可能性もあるんじゃないかと思っています」
「隔絶……それなら……」
ソウリュウの視線が、三組分の資料の間を行き来した。
「やっぱり近づいて確認するしかないな」
マリカはうなずいた。
「はい」
マリカの答えを聞き、ブレッドの視線が再び机の上の三組分の資料へ落ちた。
「かなり弱い反応だが、反応がある以上、少なくともこの町に、俺たちが探しているものが存在する可能性は高い」
カミアが続けた。
「けれど、どの組なのかは依然として分かりませんわ」
ブレッドはすぐには答えなかった。
しばらくして、彼の視線が先ほど会長の持ってきた資料へ落ちた。
「……商会……そうだ! 商会だ!」
ソウリュウが驚いたように振り向いた。
「商会?」
「ああ」
ブレッドは立ち上がり、商隊資料のうち一つを手に取った。
「この三組の商隊は、今はみんな封鎖のせいでここに足止めされている」
彼は顔を上げた。
「だったら、商会が封鎖中の再確認という名目で、もう一度こいつらを調べたって何も不自然じゃない」
カミアの口元がわずかに上がった。
「その理由を利用して入り込むつもりですの?」
「そういうことだ」
ブレッドはうなずいた。
「無理やり捜索するんじゃない。直接尋問するわけでもない」
彼は資料を軽く閉じた。
「普通の商隊検査という名目で、人員、貨物、登録状況を確認する」
「そのついでに……」
彼の視線がマリカへ向いた。
「俺たちが近づく機会を作る」
マリカは小さくうなずいた。
「わかりました」
「その時は頼む」
ブレッドは次にカミアを見る。
「魔力に関する異常には、お前が注意してくれ」
カミアは短く返事をした。
「お任せください」
ブレッドは一度、言葉を切った。
「それから」
彼の表情が再び引き締まった。
「標的だと確認できても、何か怪しいところを見つけても、すぐには動くな」
「まず記録して、外へ出てから報告する」
三人はうなずいた。
「わかった」
ブレッドは会長のほうを向いた。
「もう一つある」
会長は慌てて背筋を伸ばした。
「はい。何でしょうか」
「今回の検査には、商会からも人を出してほしい」
会長は一瞬、呆気に取られた。
「商会の人間を?」
「ああ」
ブレッドはうなずいた。
「俺たちだけで三組の商隊をそれぞれ調べたら、かえって狙いすぎているように見える」
「商会の人間が一緒に普通の確認を行ったほうが、ずっと自然だ」
会長はすぐに理解した。
「なるほど……」
彼は何度もうなずいた。
「承知しました。人員を手配して、皆様に協力させます」
「それから」
ブレッドは机の上の三組分の資料を一瞥した。
「もし彼らがほかの商隊を調べている時に何か妙なところを見つけたら、それもまず記録しておいてくれ。調査が終わったあとで、まとめて俺たちに伝えてほしい」
「はい、承知しました」
会長は答えた。
ブレッドはそこでようやく、仲間たちへ再び目を向けた。
「じゃあ、行こう」




