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Cross:僕らの旅  作者: 森の森
第一章

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容疑者

ヴァンとカールが、気を失った獣人の女性を連れて、人目を避けながら裏道を通って宿へ戻った頃には、すでに正午になっていた。

ほかの宿泊客に見られないよう、二人はできる限り足音を立てず、裏口から階段を上って、自分たちの部屋へ戻った。

部屋に入ると、カールは肩に担いでいた獣人の女性を「ドン」と音を立ててベッドの上へ下ろした。

その後、二人はベッドのそばに立ったまま、黙って一度、互いの顔を見合わせた。

(……それで、今はどうすればいいんだ? 起こすのか?)

ヴァンは腕を組み、軽くため息をついた。

(それにしても……今朝から、運の悪いことが次から次へと起こるな。最初は国境を通れなくて、その次は怒っていた傭兵、今度はこの獣人の女……)

ヴァンはベッドの上に横たわる獣人の女性へ視線を落としたが、彼女にはまだ目を覚ます気配がなかった。

(最近、僕の運が悪くなってるのかな……?)

…… ……

「とりあえず、もう昼だな」

ヴァンは顔を上げた。

「外に行って、何か食べるものを買ってくるよ。彼女の分も合わせて、三人分だな」

そう言って、ヴァンはカールのほうを向いた。

「悪い、カール。ここで彼女を見ていてくれるか?」

「……ああ」

カールはうなずいた。

「彼女が目を覚ましたら、まず落ち着かせて、勝手にどこかへ行かないようにして、僕が戻るまでここで待たせておいてくれ。とにかく、無茶はするなよ」

「わかった」

カールは壁際の椅子まで歩き、そこへ腰を下ろした。重い身体を受け止めた木の椅子が、かすかに音を立てた。

彼はそれ以上何も言わず、ただ静かにベッドの上の獣人の女性を見つめていた。

ヴァンは一度カールを見ると、ようやく少しだけ安心した。

「頼んだよ。すぐ戻るから」

そう言い残し、ヴァンは一人で部屋を出ていった。

* * *

その頃。

アールデンの城門の外では、巻き上がる砂埃とともに、一台の馬車がゆっくりと停車した。

十日間の強行行程を経て、ソウリュウたちはついに、国境に位置するこの町へ到着した。

最初に馬車から降りたのは、カミアとブレッドだった。

カミアは馬車を降りると、長衣の裾についた埃を手で払い、それから顔を上げて周囲を見回した。

行き交う商隊、荷物を満載した馬車、そしてあちこちから聞こえてくる呼び声。

「ここがアールデンなの……? ずいぶん騒がしいところね」

ブレッドは城門のほうへ目を向けた。

「ああ。とにかく、まずは中へ入ろう。商会の連中が俺たちを待ってる」

続いて、馬車の中から再び物音がした。

一人の少年が馬車の扉につかまりながら、顔を真っ青にして降りてきた。

「オエッ……」

ソウリュウは地面に足をつけた途端、両脚から力が抜け、身体が倒れそうになった。

「そ、ソウリュウ様!」

続いて馬車から降りてきたマリカが、慌てて彼のもとへ駆け寄り、身体を支えた。

「ご無事ですか?」

「……大丈夫」

ソウリュウは目を閉じ、そのまましばらく休んだ。

「ただ……やっと着いたんだな」

その様子を見て、カミアは思わず小さく笑った。

「ふふ。異界の勇者様が馬車に酔うなんて、意外ですわね」

「……誰にだって、苦手なものくらいあるだろ」

ソウリュウは恨めしそうに彼女を見た。

「それに……俺だって、こんなに揺れ続けるものに十日間も乗ったことなんてないぞ」

「ははは! 気にするな! 慣れれば平気になる!」

ブレッドは快活に笑いながら、ソウリュウの肩を叩いた。

ソウリュウの表情がわずかにこわばり、反射的にブレッドへ目を向けた。

その時、マリカの指が胸元の銀色のペンダントにそっと触れた。

ペンダントの中で、ごくかすかな光が一瞬だけ瞬いたように見えた。

マリカはすぐには口を開かなかった。ただ俯き、手をペンダントに添えた。

しかし、その時にはもう、ペンダントには何の反応もなかった。

……気のせいだったのだろうか。

彼女にも判断できなかった。

しばらくして、マリカは手を引いた。

門番に案内され、四人はほどなくして町へ入り、この町の商会へ向かった。

* * *

商会のホールへ足を踏み入れた途端、四人は、つい先ほどまで騒ぎが起きていた痕跡に気づいた。

ひっくり返された机や椅子はまだ完全には片付いておらず、石板の床にもはっきりとした亀裂が残っていた。

近くには、まだ立ち去っていない客が何人かおり、声を潜めて何かを話していた。

ブレッドは周囲を見回した。

「ここでさっき何があった?」

彼は近くにいた商会の職員へ歩み寄った。

職員は額の汗を拭い、苦笑を浮かべた。

「い、いえ……つい先ほど、足止めされて苛立っていた傭兵と、うちの者たちの間で少し揉め事がありまして。幸い、通りかかったお客様がすぐに助けてくださって、一撃だけで彼を制圧してくれました。すぐに騒ぎも収まり、大きな損害もありませんでした」

「一撃だけで?」

ブレッドの視線が、石板の床に残された亀裂へ落ちた。

彼はしゃがみ込んで亀裂を見つめ、それから立ち上がると、眉をわずかに上げた。

「すごいな。どんな人なのか、ぜひ会ってみたいもんだ」

職員は首を横に振った。

「残念ながら、その方は騒ぎが終わったあと、すぐに立ち去ってしまいまして。名前を聞く暇さえありませんでした」

「そうか……」

ブレッドは立ち上がり、少し残念そうに入口のほうを見た。

「それは惜しいな」

その時、ホールの奥から慌ただしい足音が聞こえてきた。

「おお! 財運の神に感謝します! ついに、ついに到着されたのですな!」

豪華な服を着た、恰幅のいい男が足早に姿を現した。

この商会の会長だった。

「皆様が王国から派遣された特使様ですな!?」

会長は満面の笑みを浮かべながら近づき、両手でブレッドの手を固く握った。

その瞬間、ブレッドの顔から笑みが消えた。

先ほどまで人当たりのよかった青年は、一瞬にして王国騎士にふさわしい冷静さと鋭さを取り戻していた。

「はい、俺たちがそうです。会長殿、場所を変えて話しましょう」

「は、はい! こちらへどうぞ!」

会長は慌ててうなずき、四人を二階へ案内した。

* * *

応接室の扉が閉じられた。

ブレッドは席につくと、余計な挨拶をすることなく、すぐに本題へ入った。

「単刀直入に聞こう」

彼は会長を見る。

「十日前、封鎖命令が出されたあと、アールデンに足止めされている商隊や商人について、すでに全員の再確認を済ませているはずだな?」

「はい」

会長はうなずき、机の上から整理済みの資料を取り上げた。

「王国側からの要請に従い、最近この町へ到着し、現在も足止めされている商人たちについて、改めて確認いたしました」

彼は手元の記録をめくり、その中から数枚を抜き出した。

「その中から絞り込んだ結果、現在、特に注意すべきなのは三組です」

ブレッドが顔を上げた。

「三組?」

「はい」

会長は三組分の資料を順番に机の上へ広げた。

まず一枚目の資料を皆の前へ差し出した。

「一組目は、動物を売買している商人たちです。大規模な商隊で、数十人が所属しております。多数の鳥類、爬虫類、トカゲ、それに非常に巨大な野獣を一頭連れております」

そう言って、彼は二枚目の資料を手に取った。

「二組目は、陶磁器商人です。比較的小規模な商隊で、十人おります。主に東西両大陸の特色ある器具を取引しております」

最後に、三枚目の資料を机の上へ置いた。

「三組目は、布地を扱う商人です。人数が最も少なく、護衛を含めてわずか五人。主に絹と布地を販売しております」

会長が話し終えると、部屋は静まり返った。

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