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召喚獣戦士 ヴィオ  作者: 朧月 氷雨


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第52話 これからの進む道

フォートレスティーとヴィオの挿絵あり。

 お昼ご飯を食べ終えた僕とメルティナ、フォートレスティーの三人は、冒険者ギルドを目指して街中を進んでいく。

 やっぱり、商人たちが急げや急げとばかりに慌ただしく作業をしていた。

 店内から次々に商品を運び出して荷車などに積み込んでいる。

「早くしないか」

 店主と思われる恰幅かっぷくの良い男が、せわしなく荷物を運び出している人たちに向かって叱咤しったしていた。

「この街から逃げ出そうとしているみたいだね」

 僕が呟くと「さっきの店で聞いた話は本当みたいね」と、メルティナは不安そうな表情を見せた。

「ヴィオ様、巨大な魔物という話しでしたけれど、どれほどの大きさなのか気になりますね」

 確かに、フォートレスティーが言う様に魔物の大きさは気になるね。

 街を壊滅させるほどの魔物で、なおかつ冒険者を全滅させることができるとなれば、相当大きいのだろうと想像してしまうけれど、現実味は感じられなかった。

 巨人ジャイアントと呼ばれる種族の魔物は、建物の二階くらいの大きさが当たり前くらいだ。

 竜族ドラゴンなんかになると、それ以上に大きな魔物になる。

 街を壊滅させ、冒険者を退けてしまうような魔物は、いったいどんな魔物ヤツなのか僕は興味があるんだけれどなぁ~。

 怖いもの見たさって奴だろうけれど。

「魔物が迫っているってことを知らない人たちもいるのかしら?」

 周囲を見渡すと、普段と変わらぬ生活をしている人たちが多いような気がする。

 逃げ出そうとしているのは商いをしている人……特に武器や防具、雑貨などを販売している人たちのように見える。

 飲食店は普通に営業しているようだ。

 商人たちは、商人ギルドというものに所属していて、その中で様々な情報を共有しているらしい。

 それは、冒険者が冒険者ギルドを介して情報を共有するのと何ら変わらないことだと思う。

 だから、魔物が迫っていることを聞き及んだ商人たちは、いち早く逃げる準備を進めているんだろうね。

「多分、ほとんどの人が知らないんじゃない」

「そうですね。皆、それを知ったら、今ここはパニック状態になることでしょうね」

 そんなことになれば、大混乱してしまう。

 かといって、このままだとこの街が魔物に襲われて壊滅的打撃を受けることになるだろう。

 そうなれば、多くの人が亡くなるかもしれない。

 でも、そうならないように、冒険者ギルドは動くはずだと思う。

「とりあえず、正確な情報を掴むことが大事だよ」

 話しをしながら歩いていたので、あっという間に冒険者ギルドの前に辿り着いた。

 僕らと入れ替わるように、二十人くらいの冒険者の集団がギルドから離れて行く。

 鎧兜に身を包み、それぞれが思い思いの武器を携帯していた。

 表情は硬く、緊張した面持ちだった。

「魔物の討伐隊かしら?」

 街の外へと向かって行く冒険者の集団に視線を向けながら、メルティナが呟いた。

 その可能性が高いね。

 皆、重武装していたし、強そうな人たちばかりだった。

 彼らが討伐してくれればいいんだけれど。

 僕たちは、冒険者ギルドの中へと足を進めた。

 ギルド内には、まばらに人がいる。

 先ほどすれ違った集団の人たちと比べると、貧相な装備に身を包んでいる。

 擦り切れた革の鎧や傷だらけで今にも壊れそうな盾を腕に装着した人などがいた。

 大抵、そう言った人たちは実力が低い人たちだ。

 魔物の討伐隊には編成されなかったんだと思う。

「くそっ、俺も一稼ぎしたかったのに……」

 リクエストボード前で、悔しそうに毒づいている人がいた。

 大きな斧を肩に担ぎ上げているけれど、ほぼ半裸で変質者にしか見えない人だ。

 さすがに強そうには見えないし、あんな人も冒険者なんだと思った。

 僕たちは、三つあるカウンターの一つに近づいて行った。

「どのようなご用件でしょうか?」

 カウンター内にいた受付嬢が声を発した。

 僕は、フォートレスティーにチラリと視線を向けた。

 フォートレスティーは、すぐさま察してくれた。

 僕の背後に立ち、カウンターの上に顔が来るように抱き上げてくれた。


挿絵(By みてみん)


 カウンターの位置が、ちょっと高かったからね。

 僕の背丈では、背伸びしても厳しい。

「僕たち、さっきこの街に来たばかりなんだけれど……」

 そう前置きをしてから「この街におっきな魔物が近づいて来ているって話を聞いたんだけれど、本当?」とド直球に尋ねた。

「え~と、それはね……」

 受付嬢は、一瞬困ったような表情を見せた。

 本当のことを言うべきか、ごまかすべきかといった逡巡しゅんじゅんしているような感じに受け取れた。

「僕たち、南の方へ行こうと思っているんだけれど……」

 そう言うと「待って、それはダメ」と慌てた様子で声を荒げていた。

「ダメ?何で?」

「あ~……それは……」

 受付嬢は、意を決したように一度頷くと、しゃべりだした。

「君が言ったように、巨大な魔物がこのバジールの街に迫っているっていう情報は入っています。この街の南にあるファントムートの街がその魔物に壊滅させられたとも……」

「本当に魔物が街を壊滅させたんですか?」

「はい……三日前にその情報が入りました。でも、安心してください。その魔物を討伐するために先ほど討伐隊を編成して向かわせましたので、彼らが見事に退治してくれることでしょう」

 さっきすれ違った冒険者の集団は、魔物の討伐隊で間違いないようだ。

「さっき、その人たちを見かけたよ。強そうな人たちだったよね」

「はい、選りすぐりの冒険者たちを集めましたから、彼らが必ず何とかしてくれるはずです」

 受付嬢は、討伐隊が何とかしてくれると信じているようだった。

「大きな魔物は、この街の南にいるんですね?」

 メルティナが確認するように尋ねた。

「はい、今はそうですね。北上してこの街に迫っていると聞いています」

「じゃあ、僕たちは、西か東に行くしかないね」

 僕たちが進む道は二つしかない。

「そうね、ランドレイクの街からやってきたわけだから、北へ行ったらまた戻ってしまうものね」

「みなさんは、ランドレイクの街から来られたのですね?だとしたら、東へ行くことをお勧めします」

 受付嬢の言葉に「?……東?何で?」と尋ねた。

「この街の西側には、険しいゴルディオル山脈が連なっています。この山脈を超えることは不可能です。恐ろしい魔物が徘徊しているという話しを昔から聞きますし、ファントムートの街を壊滅させた魔物はそのゴルディオル山脈から降りてきたのではないかとも言われていますので……さすがに危険すぎます。それならば、東にあるメギドの街を目指した方がより安全です」

「東にどれくらい行けば、そのメギドって街はあるの?」

「そうですね……街道に沿って歩いて二日ほどかかると思います」

 ランドレイクの街からこのバジールの街までは四日ほどかかった。

 僕が湖で遊びながらフラフラとやって来たので、それだけ日数がかかってしまったけれど、二日位なら食料を少し買い込めば、すぐにでも出発できる。

「他に街や村はないの?」

「メギドの街へ行けば、そこから東と南に街がありますよ。森を抜けて行かなければなりませんけれど……」

 受付嬢から得た情報をまとめると、南には行けない。

 南にあるファントムートという名の街は、大きな魔物によって壊滅させられてしまっているので、行く意味がない。

 さらにその魔物がこの街に向かってきているので、南に向かったら確実に遭遇することになる。

 討伐隊がその魔物を討伐してくれるかもしれないけれど、行った先に街がないのだから行く意味がない。

 なので、南に行くのは却下だ。

 逆に北は、僕たちがやって来たランドレイクの街に戻ってしまうので、こっちにも進んでもしょうがない。

 西には、険しい山脈があって越えられないし、魔物がいるらしい。

 危険だと言われたので無理してそんなところを越えていくメリットがないので、西も却下だ。

 となれば、僕たちは東にあるメギドの街に行くしかないようだ。

 その街へ行けば、さらに東と南に街はあるらしい。

 僕は決まった場所を目指しているわけじゃないので、とりあえず先に進めるならどこへ向かおうと構わない。

「じゃあ、東にあるメギドって街に行こうか?」

 僕はメルティナとフォートレスティーに視線を向ける。

「そうね。選択肢は、それしかないみたいだから、それでいいんじゃないかしら?」

わたくしは、どこへなりともヴィオ様が行く場所へとついて行きます」

 僕を抱え上げていたフォートレスティーは、ゆっくりと床に下ろしてくれた。

「でも、食料を買い足さないと足りないかも……」

 僕がそう言うと「だったら、早く買い物をして出発しましょう?」とメルティナが慌てた様子で言った。

「えっ?今日中に、この街を出るの?」

「そうよ。魔物が迫ってきているんだもの、早く出た方がいいと思うの」

「でも、少ししたら夕方になっちゃうよ?」

「わかっているわよ。それでも、魔物が迫って来ているってわかっていて、この街で悠長に寝られないもの」

 まあ、メルティナの気持ちもわかる。

 脅威となる魔物が迫ってきているとわかっているのに、その街でスヤスヤと安眠などできるわけがない。

「しょうがないなぁ~……今日は野宿か……」

 街に辿り着いたから、ベッドでゆっくりと寝られると思ったんだけれど、仕方ない。

「ほら、早く買い物を済まして、出発しましょう」

 メルティナは、足早にきびすを返してギルドの出入り口へと向かって行ってしまった。

「どうされますか?ヴィオ様?」

 フォートレスティーは、ゆっくりとひざまずく。

 視線の高さを合わせて僕の顔を覗き込みながら、僕の選択に従うといった表情をしていた。

 何か意見があれば、フォートレスティーは言ってくるはずだ。

 でも、何も言って来ないということは、僕が考えて決めなくてはならない。

「メルティナの言う通りにするよ。夕方まではまだまだ時間があるから、買い物を済ませて出発しよう。そうすれば少しでもメギドの街には早く辿り着けると思うし……」

 僕はメルティナを追いかけるように歩き出した。

「ヴィオ様の御心みこころのままに……」

 フォートレスティーは、ゆっくりと立ち上がると僕の後ろをついてくる。

「えっ?進路を変えた?」

 僕の背後で受付嬢が、そんな声を上げたのが微かに耳に入った。

 何のことをしているのかはわからない。

 この街に向かって来ている魔物のことなのか、それとも討伐隊のことなのか、はたまた別件のことなのか。

 僕は気にせず、冒険者ギルドを後にした。

 フォートレスティーの耳にも、あの受付嬢の声は届いていたことだろう。

 けれど、何も言っては来ない。

 ならば、気にすることはない。

 ただ、さっさとギルドを出て行ってしまったメルティナには、さっきの受付嬢の声は届いてはいないはずだ。

 

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