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逃げ続けた先に

それからあっという間に時は立ち

臆病者も成熟する歳になってしまいました。


遂に臆病者にも決断の時が来たようです。


村に残って、今のような安全で無意味な生活を一生続けるか、村を出て、危険だけれども退屈はしないお宝を探す一生をおくるかの二択を迫られていました。


臆病者は、もちろん安全な方を選ぼうとしました。


ですが、臆病者と同い年の村人がやって来て言いました。


「お前、そういえば、お宝を探しに行くって言ってたよな?一緒に頑張ろうぜ!!」


安全な方を選ぶ村人が多い中、その勇敢な村人は、お宝を探しに行く事をずっと夢見ていました。


そんな勇敢な村人を見て、臆病者は

密かに憧れていたのです。


「おーい、コイツもお宝を探しに行くってよ!!」


勇敢な村人は、皆に知らせました。


村人たちは、目を開いて駆け寄り

二人を褒め称えました。


「すごいね、頑張れよ!!」


「まじかよ!?見直したぜ!!」


臆病者は、完全に断るタイミングを失いました。


でも悪い気は、しませんでした。


笑い者だった臆病者は、久々に褒めて貰えて嬉しかったのです。


そして、つい自惚れて言ってしまいました。


「僕は、お宝を発見して、村へ帰ってくる!!」


その言葉に村人たちは、歓声を上げて、祝福しました。


その日から植物や道具の使い方などの勉強、体力や精神力、筋力を鍛えるトレーニングが始まりました。


勇敢な村人は、夢を追い続けて、ずっと自分でそれらのトレーニングをし続けていたので、みるみる上達し、村人全員から認められる優秀な人間になっていきました。


それに比べて、臆病者は、自分で何かするなんてことは、一切やったことがなく、やれと言われたことだけやって来ました。


自分で、前に進む勇敢な村人に追いつけるわけが無かったのです。 


村人たちは、臆病者を非難して睨みを効かせました。


やがてその視線が嫌になった臆病者は

また逃げ出そうとしました。


トレーニングもバレないように手を抜くようになり、家でもゴロゴロとダラけた生活を送るようになりました。


そんなある日、勇敢な村人は、言いました。


「お前、本当に宝を探しに行くんだよな?」


臆病者を睨みつけて、今にも刺し殺されそうです。


臆病者は、恐れて頷いてしまいます。


すると、勇敢な村人は、ふっと笑顔になり


「んじゃ、もっと、頑張らなくちゃな!!」


と肩を叩きました。



その目に恐れてしまった臆病者は、家から一歩も出れなくなってしまいました。


外からは、臆病者を心配する声や非難が聴こえます。


耳を塞ぎ、布団に閉じこもった臆病者は

自分と村人たちを昼も夜も責め続けました。


慟哭、嫉妬、憎悪、嫌悪、自傷と、どれも無意味で、醜い感情を繰り返して、夜を超えました。


そうして、辿り着いた答えが、ショーでした。


幼い頃、泣きじゃくりながら見たショーは、臆病者の醜い感情を綺麗に表してくれたのです。


臆病者は、久々に外に出て

村のショーをしている人に頼み、ショーをさせて貰うことになりました。


集まった周りの目は、戸惑いと睨みを効かせていました。


「おいおい、どうなってるんだ?アイツ。お宝を探しに行くんじゃなかったのか?」


「さぁ?でもアイツ、努力も何もやってないよ。」


「また、失敗するに決まってるよ。そんな奴のショーなんて見たくも無いね。」


ショーが始まると村人たちは、口々に言いました。


それでも、臆病者は、その日から

狂ったようにショーをし続けました。


人を騙した道化師が独り、贖罪の旅をする

という、内容のショーでした。


そんな暗い内容なんて、誰も見たくなかったのでしょう。


臆病者を慕って、見ていてくれた人々もやがて離れて行ってしまいました。


独りになった臆病者は、夜が明けてもショーステージで泣き喚きました。


それでも夏蝉の声に掻き消された号哭は、誰にも届かず、何一つ変わることは、ありませんでした。


「そうか、皆、自分のことで精一杯なんだ。僕を救えるのは、僕だけだ。」


全て、失って気付いたのが

こんなちっぽけな答えです。




臆病者の選択の時は、もうすぐそこでした。

読んで下さってありがとうございます。


臆病なことは、悪いことなのでしょうか?


いい評価でも悪い評価でも

頂けたらとても嬉しいです!!

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