なにがいい?
「うぉぉ!マジか?」
久しぶりのスロット。
たまたま座ったジャ○ラーで大勝ちした。
ホクホクの俺は行きつけの居酒屋にいた。
「なんだ?今日はやたら機嫌いいじゃねぇか。」
「あは? わかるっすか?」
この人は、この居酒屋の大将で河さん。
俺がやってた建築業の大先輩でもある。
「この間まで死にそうな顔してたのによぉ? スロットでも勝ったか?」
「まんまっすけどね。」
「まぁ、ヤサ焼けたらあんな顔もするわな。」
「それは言わないでくださいよ。」
河さんはガハハと笑う。
これが好きだ。
「今はどこに住んでんだ? まさか橋の下じゃねぇだろうな?」
「ちょっと知り合いの家に厄介になってるっす。」
「そういや朱里が言ってたな?出版社?の編集の厄介になってるって。」
あいつ、口止めしとかないとな。
「それ、女か?」
河さんが身を乗り出してきた。
「いやいや、違うっすよ! 男です!男!」
「へぇー男ねぇ……」
「お前じゃ女は無理か。」
どういう意味だよ!
「は、ははは…」
「髭も剃って、もう少し小綺麗にしねぇと!」
「男前が台無しだぜ、秀。」
うるせぇ!
「でもなんでそんな出版社の人間と知り合いなんだ?」
「あ~えーっと…」
「小説書いてるぅ?!お前が?!」
「売れてないっすけどね。」
「へぇ、器用だ器用だとは思ってたが、人は見かけによらねぇんだな。」
そこまで言わなくてよくない?
「本とか出してんのか?」
「いや、まだっす、短編ばっかりで。」
「雑誌に載ったりしてないのか?」
「載ってるけど言わないっすよ?」
「どうせお前のことだから成人物とかだろ?」
失礼な!そんなエロじゃないわ!!
「つうか、家賃とか払ってるのか?」
「いえ、なんかいらないって言うんですよねそいつ。」
「女か?」
「男ですって!」
「ふぅん、でもなんか返しといたほうが良いぞ?」
「ですよねぇ…」
「まぁ、そいつとこれからも続けていきたいならな。」
「気は心っていうだろ?」
この人の一言はいつも考えさせられる。
「…じゃぁやっぱ物で返す方が良いんですかね?」
「金だと受け取ってもらえないかもな。」
「本人に聞いてみたらいいじゃねぇか?」
う~ん、聞くのかぁ。
「ただいまぁ…」
「お帰り、勝ったか?」
「その様子じゃ負けたみたいだな。」
爽やかに笑いやがって。
「なぁ?」
「ん?」
「いま、なんか欲しいもんってある?」
「欲しいものか…特にないな。」
「強いて言うなら?」
「……なんで?」
「いや!いいから!参考までにだから!」
「なんだっけ、パスタケースが欲しい、あの調理できるやつ。」
「いや、そういうのじゃなくてさ! なんか他にないのかよ!」
「なんだよ!気持ち悪いな。」
「いいから!なにがいいんだよ!!」
「……新しい腕時計が欲しい。」
おまえロレックス着けてるじゃねぇか!!
しかもデイトナをよ!!
「すいません、お客様こちらのカードは限度額に達していますので…」
「ですよねぇ…」
やんわり断られた。




