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原稿が上がるまで  作者: 御園 秀吉
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6/7

なにがいい?


「うぉぉ!マジか?」


久しぶりのスロット。

たまたま座ったジャ○ラーで大勝ちした。

ホクホクの俺は行きつけの居酒屋にいた。


「なんだ?今日はやたら機嫌いいじゃねぇか。」


「あは? わかるっすか?」


この人は、この居酒屋の大将で河さん。

俺がやってた建築業の大先輩でもある。


「この間まで死にそうな顔してたのによぉ? スロットでも勝ったか?」


「まんまっすけどね。」


「まぁ、ヤサ焼けたらあんな顔もするわな。」


「それは言わないでくださいよ。」


河さんはガハハと笑う。

これが好きだ。


「今はどこに住んでんだ? まさか橋の下じゃねぇだろうな?」


「ちょっと知り合いの家に厄介になってるっす。」


「そういや朱里が言ってたな?出版社?の編集の厄介になってるって。」


あいつ、口止めしとかないとな。


「それ、女か?」


河さんが身を乗り出してきた。


「いやいや、違うっすよ! 男です!男!」


「へぇー男ねぇ……」

「お前じゃ女は無理か。」


どういう意味だよ!


「は、ははは…」


「髭も剃って、もう少し小綺麗にしねぇと!」

「男前が台無しだぜ、秀。」


うるせぇ!




「でもなんでそんな出版社の人間と知り合いなんだ?」


「あ~えーっと…」



「小説書いてるぅ?!お前が?!」


「売れてないっすけどね。」


「へぇ、器用だ器用だとは思ってたが、人は見かけによらねぇんだな。」


そこまで言わなくてよくない?


「本とか出してんのか?」


「いや、まだっす、短編ばっかりで。」


「雑誌に載ったりしてないのか?」


「載ってるけど言わないっすよ?」


「どうせお前のことだから成人物とかだろ?」


失礼な!そんなエロじゃないわ!!


「つうか、家賃とか払ってるのか?」


「いえ、なんかいらないって言うんですよねそいつ。」


「女か?」


「男ですって!」


「ふぅん、でもなんか返しといたほうが良いぞ?」


「ですよねぇ…」


「まぁ、そいつとこれからも続けていきたいならな。」

「気は心っていうだろ?」


この人の一言はいつも考えさせられる。


「…じゃぁやっぱ物で返す方が良いんですかね?」


「金だと受け取ってもらえないかもな。」

「本人に聞いてみたらいいじゃねぇか?」


う~ん、聞くのかぁ。




「ただいまぁ…」


「お帰り、勝ったか?」

「その様子じゃ負けたみたいだな。」

爽やかに笑いやがって。


「なぁ?」


「ん?」


「いま、なんか欲しいもんってある?」


「欲しいものか…特にないな。」


「強いて言うなら?」


「……なんで?」


「いや!いいから!参考までにだから!」


「なんだっけ、パスタケースが欲しい、あの調理できるやつ。」


「いや、そういうのじゃなくてさ! なんか他にないのかよ!」


「なんだよ!気持ち悪いな。」


「いいから!なにがいいんだよ!!」


「……新しい腕時計が欲しい。」

おまえロレックス着けてるじゃねぇか!!

しかもデイトナをよ!!




「すいません、お客様こちらのカードは限度額に達していますので…」


「ですよねぇ…」


やんわり断られた。


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