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原稿が上がるまで  作者: 御園 秀吉
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2/7

なに食べたい?


野郎。


ほんとに書き上げるまで、赦してもららえなかった。


「はい、はい、PDFですぐ送ります。」


ほぼ同じ時間起きてるはずなのに、やつは涼しい顔で電話してやがる。

対する俺は満身創痍、グロッキー状態だ。


「はい、では。」


やつが振り返った。


「ほら。」


やつがスーツの内ポケットからなにか投げてよこす。

新品のセブンスター!!

俺は早速一本火を点けた。


「あれ?Wi-fi繋がんねぇぞ。」


「あー払ってない。」


「…え?」


「だから原稿料入らないと払えない。」


「お前、このデータどうやって送るんだよ…」


やばい、やつの声のトーンが危険領域に向かってる。


「え、え~っと…どうしよう?」


俺は精いっぱいのサービススマイルでやつを見上げる。


「はぁ…」


やつは深いため息をつくと、またもやスーツのポケットから何か取り出した。




「へぇ~スマホでも送れんのか。」


やつはPCとスマホを繋ぐとサクサクと書き上げた原稿を送り始めた。


「お前いったい幾つだよ。」


メガネをかけたやつが、俺を睨みつける。


「27だが?」


「知ってるよ!俺より若いんだから、これくらいわかれよ!」


「二つしか違わねぇじゃねぇか!」


「それでも下は下だろうが!」


画面には、送信中の表示。


「お前、通信費払ってないって…電気代や携帯代いったいどうしてんの?」


「だから、払ってないって。」


威張れることじゃ無いが、隠しても仕方ない。


「それじゃ、お前…」


バツン!


部屋が暗くなった。


俺はセッタを一吸い、煙を吐き出した。


ブツン!


その時、ノートもブラックアウトした。


「え?なんでPCも落ちた?」


「そりゃそうだ、稀代のSO○Yフリークの俺が使う年代物のV○IOだぞ。」


「バカ!言ってる場合か!」


やつが、明らかに慌てだす。


「フフン、慌てめさるな。」


「ハァ?」


「こんなこともあろうかと。」


俺はカーテンの裏をまさぐる。


「大家の部屋から引っ張ったコンセントー。」


やつは茫然と俺を見ている。


「お前なぁ…それって盗電だぞ?」


「気にしない、気にしない。」


「第一どうやって気付かれずに、コンセント引っ張ったんだよ。」


「そこは俺の元電機屋のスキルがね。」


「あーもうわかったから、手を動かせ。」


アダプターを接続すると、VA○Oが息を吹き返した。


「もう一度初めからだな。」


やつが眼鏡をかけたまま呟く。

こいつ眼鏡かけると、ちょっと可愛くなるのなんでだろう?


「どうせ飯代もないんだろ?」


画面を見ながらやつが言った。


「自慢じゃないがないぞ。」


「なに食いたい?」


「おごりか?」


「貸しだよ!貸し!」


「じゃ、肉が良いな。」




「って!す○家かい!」


近所の商店街を歩きながら、盛大に突っ込んだ。


「仕方ないだろ?一番近いし、焼肉だと臭い着くからな。」


近いって2キロありますが?


「あれ!秀ちゃん!」


パブやってる美咲が声をかけてきた。


「お~す。」


「そっちのイケメンさんは?」


「仕事関係。」


「こんにちは。」

こいつはぁ!俺にもそんな極上スマイルしてみろや!


「素敵。 借金取りじゃなさそうね。」


「あーもう、今から飯いくからまた今度な!」


「えー秀ちゃん来るの待ってたら、おばあちゃんになるよ。」

「ね、イケメンさん。」


「じゃ、僕が連れて行きますよ。」

「こいつ、近々金が入るんで。」


「えー嬉しい!約束ね!」

「あと秀ちゃん!ツケも精算してよね!」


余計なことをペラペラと!!




「お前、ああいうタイプが好みなの?」


やつが、美咲の後ろ姿を見ながら聞いてきた。


「んータイプって言うか10代から知ってるから…幼馴染み?」


「ふーん、まぁ今のでお前の事色々分かるわ。」


どういう意味じゃい!!




腹立ちまぎれに頼んだメガをかきこんでいると、やつと目が合う。


「なんだよ?」


「いや、旨そうに食うなと思って。」


頬杖をつきながらやつが答える。


「実際旨いしな!でもメガは調子のり過ぎた。」


「今度なんか作ってやろうか?」


「へ?」


我ながら情けない声が出た。


「俺、ずっと自炊してるから料理得意なんだ。」


いや、なにアピール!?

そんなのは女にしろよ!


「あ、あーまた今度な。」


困惑した俺の返答は、消防車のサイレンにかき消された。




「○○区で先日発生した火災は、漏電が原因と…」


大型のテレビからはニュースがながれる。

空調の効いた快適な部屋だ。

室内の装飾もモダンで良い感じ。

やつにはもったいない!

あんな安月給であろう一介の編集に、不釣り合いな部屋だ。

なんか悪事でもしてんのか?


「ただいま。」


やつのご帰還だ。


「少し待っててな、なんか作るから。」


「うむ。」


腕組みしテレビを凝視しながら、返事を返す。


「♪~」


鼻唄なんぞ歌いおって!

そんな楽しいことがあったのか?


これじゃ…これじゃまるで…




「あ?辛かったか?」


「いや…」


「パクチー苦手だったか?」


「いや…」


「じゃなんだよ!不満そうにしやがって!」


「旨いし不満なんかねぇよ!ありがたいよ!アパート焼けて路頭に迷いそうな時に助けてくれて!」


くそぅ、ありがたくて涙がでる。


「え?泣いてんのか?」


「泣いてるよ!泣いちゃ悪いかよ!」


「あ、いや…ごめん。」


「とりあえず、原稿料入ったらすぐ出ていくから。」


旨いなぁこの料理。


「いや…別に焦んなくてもいいけどな。」


「へ?」


「いや、ほら、食べてくれるやついると料理しがいがあるし。」


なに顔赤くしてんだこいつ。


「俺にいてほしいの?」


「はぁ?勘違いすんなよ!その、あれだ…編集者として管理しやすいっつーか、なんだ。」


あーもうこいつ、なに言いたいのかわかんねぇよ。


「なにが言いたいんだよ!」


「あ~もう!じゃなに食べたいんだよ!」



その時インターホンが鳴った。


「夜分すいません。こちらで言い争う声がすると通報がありまして。」


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