ー某所ー
薄暗い部屋で男の声が響く。
「どうだったかね?実験の方は。」
「実践データは上手く集められました。これで何時でも次の計画に移行できます、所長。」
研究員らしき男が答える。
「よろしい。期待していた以上であるな、この魂獣の力は。末端の戦闘員とはいえ、経験豊富な異能者7人を相手に、60秒もかからず全滅させるとは…素晴らしい出来だ。」
所長と呼ばれた男は嬉しそうに笑う。
「このまま進めたまえ。私は次の作品に取り掛からねば。あー楽しみだ。」
所長はにやけた顔のまま部屋を出ていこうとする。
「お待ちください。」
研究員の男にそう引き止められ、所長は少し不機嫌そうな顔になる。
「なんだね?私の研究の重要性は今しがた理解してもらったはずだが?」
「失礼を。ただ、現場の処理班から懸念点が上りまして。報告によると、隊員の死体は7名分だったそうですが、近くにあった装甲車の座席には8名分の指示書が残されていたようで。」
研究員の男が言った。
「ふむ、1人取り逃した可能性があると?」
所長が顎に手を当て男を光の無い瞳で見つめる。
「そうです。それと、魂獣ですが、回収不可能なほど損傷が激しかったようです。」
研究員の男が言った瞬間、所長の目が見開かれる。
「ありえん!回収不可だと!?一体いくら注ぎ込んで創り出したと思っている?アレはこの私が心血注ぎ込んで、対異能者用に開発した最高傑作!あの魂獣の攻撃を耐えることすら異能者には不可能であるのに、撃破されるほどの損傷だと?背中のカートリッジが誤爆したと言うならまだわかるが!?」
ありえないと声を荒げる所長。
「撃破された線は薄いでしょう。私も誤爆による能力の暴走と考えます。ただ不可解な点が、あの魂獣には自身の能力のように潰れた外傷がありましたが、その潰れ方は異常です。仮に暴走した自分の能力で潰れたとしても、あそこまではならないかと思うのです。」
冷静な声で研究員の男が答える。
「信じられんな…。」
所長は納得できていないようだ。
「それと。」
「まだあるのか?」
「はい、戦闘データにある魂基底層の数値が異常です。魂獣による磁場の乱れの数値はコレです。」
研究員の男が指を指し、次にもう1つの数値を指さす。
「魂獣が攻撃を行った後、魂基底層の数値が異常なほど跳ね上がり、直後、数値が日常的な値に戻っています。」
「馬鹿な。魂獣が倒れたとはいえ、一度乱れた魂基底層は数日かけて元の数値に戻るはず…。このような魂獣が存在していなかったような数値になるはずが…ありえん。」
所長は前例のない事態に取り乱しているようだ。
「私も信じられませんよ。機器の故障ならわかるのですが、他のセンサーが拾った数値を見ても同じ結果です。」
研究員の男も同意する。
「もう少し詳しく調べる必要があるようだな。圧倒的なエネルギーの爆発と、正常化の力? は!そんなもの両立するわけがない!」
「はい、私もそれには同意見ですよ。色々と気になる点はありますし、数値の方はおいおい調べるとして…。今は現場にいたと思われる8人目をどうするか考えましょう。」
研究員の男が声音を変えて言う。
「ふん、そんなの決まっておるわ。現場を見られて生きていられるのはまずい。すぐに調べ、対象を処分せよ。」
所長は感情のこもってない瞳でそう告げた。




