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第三話 ー鎮圧任務ー

装甲車は程なくして現場に到着した。

降りて深呼吸すると少し森の香りが鼻をくすぐる。

周りを見渡すと、森の少し開けた台地に支柱用の分厚いコンクリートの塊が散見される。


「おかしいな....先遣隊はどこだ?」


この部隊の隊長である毛利が呟く。


現場は基本、先遣隊が魂獣や亜獣を逃がさないよう見張りをし、管理しているのだが、姿が見当たらないようだ。


「亜獣1匹って情報でしたし、退屈すぎて休憩行ったんじゃないっすか?笑」


緊張感のない1人が言うが、毛利はおかしな空気の重さを密かに感じていた。


「少し見てくる。澤田と松崎は着いてこい。他のものは、そこでいつでもいけるようにアルマレギュレーターの準備をしておけ。」


「了解!」


隊長達が向かってしばらくして。


「ジャーン!見てくれ新調した俺のアルマレギュレーターを!」

「うお!マジか、この前出たばっかの新型じゃん!いくらしたんだよ。」

「ハハハ!なかなかに高かったとだけ言ってやろう~」


隊員達は新機種のアルマレギュレーターに夢中のようだ。

異能者にとってアルマレギュレーターは必需品だ。

魂は四層構造で、異能を行使するのには魂にある、一層目の精神波か、二層目の異能波を使用しなければいけないらしく、使う際、魂が振動し、魂波が乱れることによって事象に干渉、発現させることができる仕組みだ。

ただ、精神波、異能波供に訓練しなければ制御が難しく、アルマレギュレーターが無ければ、達人でも簡単に暴走してしまうことが、アルマテックから発表されている。


僕が何でアルマレギュレーターに詳しいかって?

まだ小さい頃、異能が発現した時に備えて研究資料ばっかり漁ってた皮算用期があったからです..........。


「しっかし、アルマレギュレーターってすげーよなぁ。俺たちみたいなのが異能暴走しねぇのも、アルマテック様様だぜ。」

「魂の過分な振動を抑える安定装置だったっけ?構造はさっぱりだけど、コレのお陰で異能の暴走なんて無縁だし便利だよね。」

「なんなら、異能の出力補助機能ついてるし、俺らが魂獣とやり合えるのも、コイツのお陰ってワケだな!」


隊長を待つ間、ハハハと談笑する隊員たちを尻目に、僕は1人離れたところで小さくなっている。

離れているせいか、慣れない空気の中で不安が首をもたげてくる。


「あぁ、なんでみんなあんなに楽しそうに待てるんだよ。異能が使えない僕からしたら、こんな現場、死と隣り合わせみたいなもんじゃないか…。使えもしない道具の話なんてどうでもいいから、早く帰らせてくれ……。」


僕のそんな呟きは聞こえる訳もなく、隊員達は更に緊張感なく話していく。


「この任務さえ終われば久々の休暇だぜ!この仕事は給料もいいから、来週は家族と旅行の予定だ」

「いいよなぁ竹内さんは、美人な奥さんと可愛い子供が居てよぉ。俺なんて一昨日彼女に振られちゃいましたよ!」

「お前が仕事とかいう彼女作っちまったから怒ったんだろ笑」


僕が不安に駆られている中で、隊員たちは、ワハハと楽しそうに会話を続けている。

僕にも異能さえあれば安心して話せる、ああいった世界もあったのだろうか。

考えるだけ無駄だとわかっているけど、普通の生活ができている彼らが羨ましい。


「お前ら、もう少し緊張感持って待つことぐらい出来ないのか。」


隊長の毛利が帰ってきたようだ。


「隊長!先遣隊は見つかったんですか?」


隊員の1人の問いかけに毛利は、眉間に皺を寄せる。


「いや、誰もいない。1人でもいればいいのだがな、誰もいないというのは今まで1度もなかったことだ。本社に問い合せているから、もう少しだけ待機だ。」


「えぇ、まだ待機なんすか〜。もう着いてから結構時間経ってるってのに。亜獣も、どこかに移動してたりするんじゃないすか?」


隊員の1人が飽きたとばかりに愚痴を吐く。


「その可能性もあるから、本社に確認している。気が緩むのは分かるがここは戦場だ、最悪の場合も想定しておけ。」


毛利がキツく言い放つ。


「は!すいませんでした!」


さすがに姿勢を正す隊員達。


誰もいないことなんてあるのかな?亜獣って言っても多少の異能を使えるわけだし、街からさほど離れていないから、被害が出てからじゃ遅いと思うんだけどな.....。


僕はそう思いながら、何故か嫌な予感が払えない。

来た時からそうだか、異常な程に静かな空気が、どこか、この世のものじゃないような錯覚をさせる。

辺りも暗くなってきたし、夜での戦闘はそれこそ先遣隊の支援無しじゃ成り立たない。


「ふむ。本社からの連絡も無い。今回は大事をとって引き上げよう。夜になってからでは視認性が下がる。万が一、魂獣にでもなられていては、先遣隊の支援無しの現状の装備では鎮圧は難しいだろう。」


毛利がそう言い、ほかの隊員たちが引き上げの準備に取りかかったその時。


「ズシッ」


小さな音と共に資材置き場の奥から、何かが近づいてくる気配がした。


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