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第八話 ー凜の異能ー

「佐藤さん。私の異能について何かご存じですか?」


凜の能力に関しては、仁さんが頑なに話してくれなくて分からずじまいだった。


「いや、何も聞いてはないけど、そのいつも身に着けてる革手袋に理由があったり?」


凜は普段から皮手袋を着けている。

それは小さい時からで、人と接するのも一歩距離を置いていたように思う。


凜がゆっくりと口を開く。


「そうですね。」


一息おいて


「佐藤さん、私の異能は「サイコメトリー」です。サイコメトリーは記憶を読む力。私が対象に触れた時に限り、そのモノが持つ残留思念を読み取ることができます。ただ、時間が経っていたりすると断片的にしか見れませんが。」


サイコメトリーか。

だから凜は普段から皮手袋をずっと着けているんだな。

便利だし強力な能力だ。

どんな人にも知られたくはないものが一つや二つあるだろう。

それを無条件に白日の下にさらすことができるわけだ。

そりゃ能力について仁さんが教えてくれないわけだし、凜もここまでの人生、それでいろいろ苦労してきているのは目に見えてわかる。


「なるほど、とても珍しい能力なんだね。」


僕は素直に感想を伝える。


「ええ。なので私、この能力で社長室の中を調べてみたくて。協力をお願いできますか?」


確かに、凜の能力があれば、仁さんの身に何が起きたかわかるはずだ。

問題は、僕が今日退職届を出してしまったこと、社長室には黒崎社長がいることだ。

退職届はどうにかなるかもしれないが、黒崎社長は別次元で問題だ。

僕は当たり前に嫌われてるから取り合ってくれないだろうし、凜は仁さんの娘ということで何かしら警戒されている。

うーんどうしたものか。


「かなり難易度が高いけど、仁さんのことは心配だし、わかったよ。僕も協力する。」


言ってても仕方ない。

仁さんの身に何が起こったのか調べなければ。

もしどこかで僕らのことを待ってるのだとしたら、何としてでも探し出さないと。


そう伝えると、凜は普段とは違う柔らかい表情で


「ありがとうございます。私が言うのもなんですけど、娘思いの人だったんです。母は私を産んですぐ亡くなっちゃいましたから。父しか頼れる人いないですし。異能のせいで周りに馴染めない私を、いつも心配してくれていましたし。大学に入っても浮いていた私をいつも励ましてくれていました。だから…心配で。」


やはり凜は、異能のせいで人との距離を無意識に作っていたのだろう。

その冷たい印象もあってか、周りから浮きいじめの対象になっていたようだ。

異能を持っていても、その能力のせいで周りから遠ざけられる。

仁さんがいたとはいえ、僕とはまた違う生き辛さに、でも似ている境遇に、自分を見ているようでひどく衝撃を受けた。

僕が協力することによって、少しでも気が楽になったならありがたい。

僕なら一人で仁さんを探すとなると、どうしたらいいかと不安で何も進まなかったと思うし。


「大丈夫、無能力者で頼りないけど、全力で協力するよ。」


凜はそんな中、無能力者の僕を頼ると言ってくれている。

そんな人は今までいなかったから、胸が少し熱くなり、頼られるという初めての感覚に戸惑った。

無能力者の僕だけど、持てる限りのことをしようと心に誓うのだった。


ーーー


佐藤さん。

協力してくれると言ってくれて正直すごく安心した。

久しぶりに話したし、終始ビクビクしてるから、最初は大丈夫かなと思ったけど.....。

私一人では不安だったし、何より他人とは違って父を理解している人だし。

ただ、彼には伝えていないことが一つある。


父は私の異能が発覚した時からただ一つ、絶対に厳守させたことがあった。


それは


【佐(・)藤(・)に(・)は(・)絶(・)対(・)に(・)そ(・)の(・)能(・)力(・)を(・)使(・)わ(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)】


正直なんでかはわからない。

ただ、そう言った父の顔が見たことないぐらい真剣だったことを覚えている。

息子同然の佐藤さんに私の能力を明かさなかったのも、少しでも私から遠ざけるためだとか。

無能力者のはずだけど、父しか知らない何かがあるのは確かだ。

私を信じようとしてくれている佐藤さんに、隠し事をするのには気が引けるが、今はこれからのことに集中しよう。


私はそう思いながら、目の前にいる協力者に再度向き直った。

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