旧街道を街へ
>>[幻影投射]で実際の年齢より若くして庇護欲を与える顔つきにする。
「……鏡が手元にないのが残念ですわ。もう少し、か弱く、守ってあげたくなるような『悲劇の美少女』を演出できれば、野蛮な男たちも少しは紳士的に振る舞ってくれるでしょうに」
あなたは森の泉の水面に顔を映し、幻影魔法で自らの表情を微調整します。目元にわずかな憂いを加え、肌のトーンを少しだけ青白く。まるで嵐の夜に迷い込んだかのような、壊れそうな雰囲気を醸し出す……。
旅人との遭遇に備え、移動中も絶えず魔法を使い込みます。
判定:[幻影投射] 練度向上訓練
ダイスロール:13
補正:[直感] +1
合計:14(判定:成功)
「ふふ、これよ。これなら、どんな冷血漢でも慈悲深い騎士様気取りで声をかけてくださるはずだわ」
訓練は実を結びました。あなたの幻影魔法は、単なる視覚的な偽物から、対象の心理に働きかける「演出」へと進化しています。自分の顔つきを少しだけ幼く、かつ保護色のように儚げに見せるこの術は、今のあなたにとって最強の武器。
夕刻、森を抜けて再び旧街道に戻ったとき、運良く(あるいは不運にも)一台の荷馬車がゆっくりと近づいてくるのが見えました。御者は小太りな商人と、護衛らしき若い兵士の二人組です。
あなたは街道の脇、古びた石碑の横にそっと座り込みました。いかにも力尽きたかのように、うなだれて。
「さて……。この『哀れな亡命者』という舞台装置が、上手く彼らの道徳心を刺激してくれれば良いのですが。……兄様、あなたの愛したこの国の人々は、どこまで親切なのでしょうね?」
>>旅人が目の前を通り過ぎるのを待つ。迷子のようにふるまい、少しせき込んで注目を集める。
「ふっ……、哀れな少女を演じるというのも、なかなか骨が折れますわね。……ゴホッ、ゴホッ」
あなたは湿った街道の土を少し掴み、自身のローブにこすりつけて薄汚れた風情を演出すると、わざとらしく小さく咳き込みました。通りかかる馬車の車輪の音がすぐ近くまで迫ってきています。
あなたは顔を上げ、まるで方向を見失ったかのように、大きく潤んだ瞳で空を仰ぎ、周囲を不安げに見渡します。その姿は、この荒れた街道には不釣り合いなほど無垢で、守るべき弱者のように見えたはずです。
判定:演技・[幻影投射](注目を集める)
ダイスロール:18
補正:[直感] +1
合計:19(判定:大成功)
大成功です。あなたの「か弱き少女」の演技は、商人と護衛の兵士の心を完璧に掴みました。
馬車はギギギと音を立てて急ブレーキをかけ、停止しました。商人が慌てた様子で御者台から飛び降り、続いて護衛の若い兵士も腰の剣に手をかけながらも、あなたの姿を見て目を見開きます。
「おいおい……! こんな奈落の峡谷の近くで、一人で何をしているんだい!? 傷だらけじゃないか!」
商人はあなたの前で膝をつき、慌てて背負っていた水筒を差し出しました。兵士の方も、険しかった表情を完全に解き、困惑した顔であなたを見つめています。
「……あ、あの、大丈夫か? ここは魔物も出る危ない道だぞ。どこから来た? 両親はどうしたんだ?」
彼らはあなたを単なる「親を亡くしたか、迷い込んだ世間知らずの貴族令嬢」か何かだと疑っていないようです。今のあなたは、追放された大罪人ではなく、ただの迷える少女として彼らの視界に映っています。
>>相手の反応をうかがって話の流れに乗る。
「……あ、あの、ごめんなさい。お騒がせするつもりはなかったの。ただ、道に迷ってしまって……」
あなたは声を震わせ、うつむき加減で視線を泳がせます。指先でローブの端をぎゅっと握り締め、自分でも惚れ惚れするほどの「怯えきった令嬢」を演じ切りました。
商人は顔を見合わせ、重い溜息をつきました。
「やれやれ……。こんなところで独りぼっちなんて、親御さんは何を考えているんだか。おい、連れて行くしかないだろう。このまま放っておけば、夜の魔物の餌食だ」
護衛の兵士も同調するように頷きます。
「そうですね……。次の街まで数時間はかかりますが、このまま放置するわけにもいきません。お嬢さん、俺たちは商隊だ。隣のルンデンの街まで行く予定だが、とりあえず馬車に乗っていきなさい」
商人は厚手の毛布を肩にかけてくれ、優しく馬車の中へと促しました。
「名前はなんていうんだい? ……まあ、今は答えられなくてもいい。まずは温かいスープでも飲んで落ち着きなさい」
「ありがとうございます……。私、本当にどうしたらいいのか……」と控えめに礼を言い、馬車に乗り込みます。
「ふふ、実に情に脆い方たちですこと。……この隙に、兄様が撒いた毒の巡り具合でも確認しておきましょうか」
心の中で皮肉を呟きながら、あなたは次なる一手を考えます。
>>世間話のフリ
「最近……何だかとても怖い夢を見るんです。見知らぬ人たちに追いかけられて、森をさまよって……。この国って、最近何か悪いことでも起きているのでしょうか?」
あなたは肩をすぼめ、わざとらしく不安げな瞳で商人の男性を見上げます。商人は「やれやれ」といった様子で苦笑し、馬車の揺れに合わせてスープの入ったカップを傾けました。
判定:交渉・情報収集(人心操作)
ダイスロール:15
補正:[直感] +1
合計:16(判定:成功)
「お嬢さん、悪い夢を見たねぇ。無理もない、このご時世だもの」
商人は周囲を気にするように声を潜めました。
「王都の方じゃ、とんでもないお騒ぎさ。……何でも、第三王女様が王家の至宝を盗み出して行方をくらましたとかでね。騎士団が躍起になって、血眼で探しているそうだよ。お嬢さんくらいの年の娘を見かけると、検問も厳しくてねぇ。……ったく、上の権力争いに巻き込まれるのは、いつだって俺たち下々だ」
護衛の兵士が補足するように口を挟みます。
「そうですよ。街の入り口にも『怪しい人物は報告しろ』って手配書が貼り出されてるくらいですからね。お嬢さんも、本当に危ないところでした。もし悪い連中に見つかっていたら、俺たちだって庇いきれなかったかもしれません」
「……そう、なのですね。第三王女様……。一体、どうしてそんなことを?」
「さぁな。ただの噂じゃ、影に心を売っただの、恐ろしい魔術師だの言われているが……。俺に言わせりゃ、王族の権力争いのスケープゴート(生贄)にされただけだろうさ。まぁ、口に出すのも恐ろしい話だ」
「(影に心を売った、ですって? フフ……兄様、中々面白いプロパガンダを打つものですわね。おかげで私、この国で一番有名人ではないの)」
心の中で不敵に笑いつつ、あなたは表情を崩さず、怯えた迷子を演じ続けます。
さて、ルンデンの街に到着すれば、そこには厳しい検問が待っています。このまま迷子の少女として通過できるか、あるいは何か細工が必要か……。街の門が見えてきました。




