エピソード82 よそ者のための水
その日の夕暮れが近づいても、ヴェルシャインの国境交易場では、西側の貯水槽の前の列がなくならなかった。
石敷きの作業場のそばには、記録と計量のための細長い机が置かれていた。
その前には空の樽が並んでいる。
さらに後ろでは、荷車がひしめき合っていた。
一頭の馬が乾いた地面を蹄で蹴った。
御者は馬を水路の縁から引き離した。
だが、馬はまた木の水桶へ鼻先を伸ばした。
そこに水はなかった。
「俺は昼から待ってるんだぞ!」
「こっちは朝からだ!」
声が車輪の軋む音をかき消した。
セヴィラ・デインは、石敷きの作業場の縁に計量用の容器を置いた。
彼女は周囲に集まった者たちの大半よりも背が高かった。
長く突き出した竜の顔、首、そしてたくましい前腕は、暗い銅色の鱗に覆われている。
頭の骨質のとさかの下からは、短く曲がった角が伸びていた。
縦に細い瞳孔を持つ金色がかった目が、列の様子を追っている。
爪のある指が、容器の縁をしっかりと握っていた。
作業着には紋章も軍の階級章もなかった。
「水路から離れて」
低い声には、ざらついた響きがあった。
全員が従ったわけではなかった。
セヴィラは空の計量容器を持ち上げた。
「最後に誰へ水を渡したか、言い争いたいの?」
彼女は貯水槽を示した。
「それとも、まず残りがどれだけあるか確かめる?」
騒ぎが少し静まった。
御者の一人が水路の縁から下がった。
もう一人はその場に立ったままだった。
セヴィラは計量容器を貯水槽へ沈めた。
目盛りまで水を満たす。
それから、翌朝も水を運んでくる馬たちのために確保してあった樽へ移した。
そばの作業員が、木の板に新しい印をつけた。
セヴィラはそれを確認した。
貯水槽の底には、まだ水が光っていた。
「ほら、あるじゃないか!」
御者の一人が暗い水面を指さした。
「それなのに、ないって言うのか!」
「あるわ」
セヴィラは否定しなかった。
「でも、この分は今夜ここに泊まる者たちと、作業用の馬のために残してあるの」
「じゃあ俺たちは何だ? 馬でも人でもないってのか?」
「あなたたちは、まだ道を進まなきゃいけない」
セヴィラは計量容器を石の縁に置いた。
「今ここで残りを全員に分けたら、誰にとっても道中に足りない量になる」
彼女は空の樽へ顎を向けた。
「それに、夜にはここまで水を運んでくる馬に飲ませる分さえなくなる」
左側から作業員が、印のついた板を差し出した。
「セヴィラ、厩舎に残す分だって、要求された量より減らしてあるんだ」
「分かってる」
「これ以上減らしたら、明日は西から樽を運ぶ馬が使えなくなる」
セヴィラは重い頭を彼に向けた。
「だから、これ以上は減らさない」
最後の目盛りをもう一度確かめた。
それから声を張り上げる。
「次の水が届くまで、道中用の水はもう配りません!」
何人もの声が同時に上がった。
御者の一人は、自分の荷車の車輪の縁にそのまま腰を下ろした。
別の男は空の樽を手のひらで叩いた。
水路のそばの馬が、また木の水桶へ首を伸ばした。
御者が引き戻す。
(もし水の補給が遅れたら、明日はもっと大声で怒鳴るだろう)
セヴィラは計量容器を記録板の横に置いた。
作業員は、道中用の割り当て欄には新しい印を一つも加えなかった。
*
「よその荷車を足止めしておいて、私の布をしまう場所さえないなんてね」
そう言った女は、机の端に小さな硬貨を置いた。
ラヴィラ・ケルドはハーフドラゴンの女だった。
背が高く、たくましい体格をしているが、顔立ちはほとんど人間に近かった。
こめかみには小さな角が見える。
首と前腕には、暗い金色の鱗が浮かんでいた。
縦に細い瞳孔を持つ金褐色の目が、セヴィラを注意深く見つめている。
丈夫な旅装にも、道中の埃が残っていた。
「ここでは、みんな順番を待ってるの」
「今すぐ水を入れてほしいとは言ってないわ」
ラヴィラは硬貨を指の間で裏返した。
「あとどれくらい待つのか、それを知りたいの」
「次の補給まで」
「それは時間じゃないわ、セヴィラ」
彼女は硬貨を机に戻した。
「時間を言わずに済ませるための答えよ」
セヴィラはすぐには答えなかった。
ラヴィラの背後には、染め布を詰めた箱を積んだ荷車があった。
封をした二つの樽は、それぞれ別の革紐で固定されている。
「あなたには水があるでしょう」
「私の水よ」
「取り上げるつもりはないわ」
「取引を始める前に、それが分かってよかった」
ラヴィラは自分の荷車へ顎を向けた。
「樽は二つ」
「ここの井戸からも、この貯水槽からも汲んでないわ」
セヴィラは封を見た。
「あなた自身にも必要な水でしょう」
「だから、まだどちらも開けていないの」
ラヴィラは上屋の方へ目を向けた。
「布を置く場所が必要なの」
「なら倉庫へ行って」
「全部埋まってる」
彼女は少し首を傾げた。
「正確には、私より先に金を払った人たちの分で埋まってるのよ」
「倉庫は私の担当じゃない」
「知ってる」
ラヴィラは微笑んだ。
「だから、あなたの印をもらおうとしてるわけじゃないわ」
彼女は列の方を向いた。
「でも、ここには屋根の下の場所より、今すぐ水が必要な人たちがいる」
セヴィラは爪のある指を机に広げた。
「共同用に残してある水を渡すなんて、約束しないで」
「そんなつもりはないわ」
「それから、自分の名前を使って、順番を飛ばして私のところへ人を送らないで」
ラヴィラは目を細めた。
「なら、あなたも私の水をただで差し出せなんて言わないでね」
セヴィラは少し黙った。
「言わないわ」
ラヴィラは机から硬貨を取った。
「じゃあ、話はついたわね」
だが、セヴィラは視線を外さなかった。
「あなたの取引が、ほかの人のための備蓄に手をつけないことは確認する」
「私は、自分の水と引き換えに、約束したものをちゃんと受け取れるか確認するわ」
ラヴィラは自分の荷車へ戻った。
セヴィラは上屋を回り、閉鎖された井戸へ向かった。
*
閉鎖された井戸のそばでは、年配の石工ボルゲン・ハルトが、小さな金属製の槌で石板を慎重に叩いていた。
セヴィラが見つけた時、彼は囲いのある場所のそばで膝をついていた。
短く刈った白髪の、小柄な男だった。
顔さえ上げなかった。
「また同じ音?」
ボルゲンは石板を叩いた。
「聞いてみろ」
一度。
二度。
石の下から、鈍い空洞の響きが返ってきた。
ボルゲンは槌を少し横へ移した。
次の一打は違う音を立てた。
「ここは下が空洞だ」
隣の石板を指さす。
「こっちは固い地盤の上に載ってる」
セヴィラは近くにしゃがんだ。
「これを持ち上げたら?」
ボルゲンは石板の縁に触れた。
「そうしたら、こっちの部分を何が支える?」
セヴィラは隣の石へ視線を移した。
「支柱よ」
「まだない支柱だな」
ボルゲンは槌を腰の帯に差した。
「縁が落ちれば、そばに立ってる奴も一緒に落ちる」
セヴィラは石板の間の細い隙間を見た。
「安全に作業するには、何人必要?」
「今いる人数より多く必要だ」
「支柱に使う木材もいる」
彼は作業用の上屋の方へ頷いた。
「あそこから勝手に持ってくるわけにもいかない」
セヴィラはため息をついた。
「排水路は?」
「見つかった」
「開いていた部分の流れは止めた」
ボルゲンは顔を上げた。
「でも井戸の臭いは残ってる」
「じゃあ、原因は排水路じゃない?」
「そうは言ってない」
彼はもう一度、石板に触れた。
「別の通り道があるかもしれない」
「原因がそもそもここにない可能性だってある」
「だが、当てもなく石を壊し始めたら、問題を一つ増やすだけだ」
セヴィラは閉鎖された井戸を見た。
囲いには、使用を禁じる木の札が掛けられていた。
「なら、まだ開けられないわね」
ボルゲンは頷いた。
「石は明日までに逃げたりしない」
セヴィラは立ち上がった。
「交易商たちは?」
「そっちを相手にする方が大変だろうな」
彼は再び槌を手に取った。
*
セヴィラが上屋へ戻る頃には、列はもうきれいに並んでいなかった。
荷車の一台のそばで、ラヴィラが商人の男と言い争っていた。
男は倉庫の上屋の場所を、すでに料金を払って借りていた。
その馬たちは、ほとんど空になった水桶のそばに立っていた。
「樽一つで、俺の場所を寄こせってのか?」
「ずっとじゃないわ」
ラヴィラは上屋を指さした。
「あなたがもう支払っている期間の終わりまでよ」
「自分の金で払った場所だぞ」
「そのまま使い続けてもいいのよ」
彼女は馬たちを見た。
「でも、倉庫の契約書から馬は水を飲めないでしょう?」
商人は封をされた樽へ目を向けた。
「それで次の水場まで足りるのか?」
「あなたの道程は知らないわ」
ラヴィラは片手を上げた。
「確かめてもいないことを約束するつもりはない」
彼女はセヴィラの計量容器へ顎を向けた。
「量なら確認できるわ」
「あなたの馬にどれだけ必要かは、自分で判断して」
商人は顎を掻いた。
「水そのものは、どうやって確かめる?」
「あなたの前で開けるわ」
ラヴィラは指の間で硬貨を転がした。
「見て、臭いも確かめればいい」
「気に入らなければ、交換しない」
セヴィラが近づいてきた。
「どういう話になったの?」
商人は樽を示した。
「この女が水を渡す」
「俺は、支払い済みの屋根の下の場所を、残りの期間だけ譲る」
セヴィラはラヴィラを見た。
「あなた自身の水?」
「そうよ」
「なら、量はここで確かめる」
彼女は商人へ向き直った。
「見た目や臭いだけで、安全まで保証できるわけじゃない。それも分かったうえで決めて」
そして付け加えた。
「場所の譲渡には、倉庫係の承認も必要よ」
商人は不満そうに首を振った。
「そいつまで探しに行くのか」
セヴィラは計量容器を机に置いた。
「ここに残って、次の補給を待っていてもいいのよ」
男はもう一度、自分の馬たちを見た。
「呼んでくる」
しばらくして、倉庫係が記録板を持ってやってきた。
屋根付きの場所の使用料が、いつまで支払われているかを確認した。
「この残り期間なら譲ってもいい」
彼は印を示した。
「その先は、あんた自身で支払うんだぞ」
ラヴィラは頷いた。
「それで十分よ」
彼女は記録板の縁に硬貨を置いた。
「記録代」
倉庫係はそれを押し戻した。
「会計所を通してくれ」
「そうしないと、後から俺が直接受け取ったと言われる」
ラヴィラは鼻を鳴らした。
「ヴェルシャインじゃ、小銭まで決められた道を歩きたがるのね」
「他人の金なら、なおさらな」
倉庫係は記録へ視線を戻した。
セヴィラは二人を見た。
「では、水の量を確かめましょう」
ラヴィラは自分の荷車へ戻り、一つ目の樽の革紐を外した。
商人も御者に頼み、荷車から空の樽を運ばせた。
セヴィラはラヴィラに、一つ目の樽の封を外すよう頼んだ。
商人は水の上に身をかがめた。
見た。
それからさらに顔を近づけ、臭いを確かめた。
セヴィラは急かさなかった。
男が身体を起こすと、彼女は計量容器を差し出した。
ラヴィラの樽から一杯ずつ水を汲み、商人が持ってきた空の樽へ移していった。
商人は満たされた容器を一杯ごとに見届けた。
ラヴィラも同じだった。
一つ目の樽が空になると、セヴィラは計量容器を脇へ置いた。
「これが水の量よ」
彼女は二人を見た。
「場所の条件については、もう合意しているわね」
商人は頷いた。
「交換しよう」
ラヴィラは硬貨を持ち、会計所へ向かった。
記録に必要な手数料を払い、控えを受け取って戻ると、倉庫係は倉庫の帳簿に変更を書き込んだ。
「明日の朝までは、あんたの場所だ」
ラヴィラは頷いた。
商人はすぐに馬へ水をやるよう命じた。
水の一部が桶へ移された。
馬たちは勢いよく鼻先を伸ばした。
一頭が肩で押すと、もう一頭は鼻先を引っ込めた。
御者が二頭を離した。
残った道中用の水は、商人の樽に蓋をして保管された。
ラヴィラはすでに、二人の荷運び人を呼んでいた。
「まず下の箱から」
染め布の方を指さす。
「それから、濡れた石の上に直接置かないで」
荷運び人たちは、最初の木箱を空いた上屋へ運んだ。
ラヴィラは木箱が湿った床に触れていないか確かめた。
それを確認してから、次の箱を運ぶように言った。
セヴィラは少し離れた場所から見ていた。
「これで商品は屋根の下ね」
ラヴィラは頷いた。
「でも、私に残った満杯の樽はもう一つだけ」
「それで、どうやって旅を続けるの?」
「今はどこにも行かないわ」
ラヴィラは、まだ封をしたままの二つ目の樽の革紐を指でなぞった。
(次の水が届くまで、私だって遠くへは行けない)
彼女は背筋を伸ばした。
「布を守るために、一晩を手に入れた」
列へ目を向ける。
「その代わり、進める道のりは短くなった」
セヴィラは上屋を見た。
「でも、布を外に置かずに済むわ」
「そうね」
ラヴィラは微笑んだ。
「今度は、その水の分まで布を売らないとね」
*
門が閉まる前に、倉庫の場所を水と交換した商人は、馬を出口へ連れていった。
御者は、道中用の水が入った樽の革紐を締め直した。
衛兵は、ヴェルシャインの国内へ進むための通行許可を確認した。
その許可を出したのはセヴィラではなかった。
彼女はただ、車輪が門のそばの石の帯を越えていくのを見ていた。
別の隊商は、空の樽を積んだまま上屋の下に残った。
ラヴィラは交換で手に入れた場所へ、最後の木箱を運ばせていた。
一つの木箱が通路の縁に引っかかった。
落ちる前に、ラヴィラが自分で受け止めた。
「下の箱はもっと気をつけて」
二人の荷運び人が荷物の位置を直した。
セヴィラは貯水槽へ戻った。
昼間、水の記録をつけていた作業員が、壁のそばに空の計量容器を置いた。
「一つは送り出せたな」
彼は残った荷車を見た。
「でも、まだあんなにいる」
「もっと少なくなっていてほしかったわ」
「明日もまた水を寄こせって言うぞ」
セヴィラは計量容器を貯水槽の縁に置いた。
「分かってる」
作業員は暗い水面を見た。
「何て答える?」
セヴィラは木の容器に刻まれた傷のような目盛りを、爪でなぞった。
「ある分を、そのまま伝える」
彼女は閉鎖された井戸へ目を向けた。
「もし補給が遅れたら?」
作業員が尋ねた。
セヴィラはすぐには答えなかった。
視線が厩舎へ移る。
それから、まだ水を待っている樽へ。
「その時は、また何を優先するか選ばなきゃならない」
門のそばの書記は、交易用荷車の出発順序が変わったことを、街道への連絡書に書き加えた。
その知らせは、通常の公務連絡の経路で届けられることになっていた。
書記はその記録を、関所からのほかの報告と一緒に置いた。
一台の荷車は、予定より遅れて出発した。
別の隊商は、次の水の補給を待つために残った。
ラヴィラは布のために屋根のある場所を手に入れたが、自分は急いで道へ戻ろうとはしなかった。
そして、水をめぐる騒ぎの発端となった井戸は、依然として閉鎖されたままだった。




