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エピソード79 危険な道

最初の二時間、道中は静かだった。


あまりにも静かで、オリヤは何度も書類の入った鞄を開きたくなる自分に気づいた。


出発前にも確認している。


最初の曲がり角でも。


そして、背後からヴェルシャインの関所の門が完全に見えなくなった時にも、もう一度。


売却記録はある。


買い取られなかった商品の一覧もある。


折り畳まれた書類の間には、カイサからサルマへ渡すよう頼まれた紙も挟まっていた。


受け取った金の一部も、この鞄に入っている。


残りは出発前に分け、二台目の荷車の座席の下にある小さな木箱へ入れてある。


オリヤは鞄に手を置いた。


それから手を離した。


「また開けようとしたら、止めてくれる?」


ヴァルンは一台目の荷車と一緒に歩いていた。


振り返りもしない。


「無理だ」


「どうして?」


「お前が何してるか見えないから」


オリヤはその背中を見た。


「すごく役に立つ」


「ありがとう」


一台目の荷車の左には人間族の衛兵。


右にはダークエルフの衛兵。


二台目の後ろにも二人がついていた。


人間族とダークエルフ。


一人が小さく笑った。


もう一人は反応しなかった。


セイガは先を進んでいた。


時折、斜面や曲がり角の向こうへ数秒だけ姿が消える。


そのあと、暗い人影が高みに現れる。


止まり。


街道を見る。


そしてまた先へ進む。


オリヤはもう、何を見ているのか尋ねなくなっていた。


何かおかしければ、セイガの方から戻ってくる。


*


乾いた川床は問題なく渡れた。


何度か車輪が崩れやすい地面へ深く沈んだが、二台とも抜けた。


川床を越えたところで、ヴァルンは二つある水場の一つに一台目を止めた。


長くは止まらない。


自分たちが水を飲む。


馬にも飲ませ、道中の水を補充する。


車輪と馬具、革紐を確認する。


そのためだけだった。


オリヤは二台目から飛び降りた。


脚はすぐに、交易場で過ごした時間が休息ではなかったことを思い出させてきた。


彼女は膝をほぐした。


一台目の右側についていたダークエルフの衛兵は、すでに後輪を回り込んでいた。


掌で車輪の縁をなぞる。


留め具を確認する。


それから荷物を固定している縄を引いた。


「緩んでない」


オリヤが彼を見る。


「車輪のこと? それとも荷物?」


「全部」


「とても正確な答えね」


ヴァルンは水辺へ行った。


少しだけ掌にすくう。


見る。


匂いを嗅ぐ。


それからようやく飲んだ。


オリヤはそれに気づいた。


「井戸の件で、水を信用しなくなった?」


「前から信用してない」


「なら、どうして今だけ確かめたの?」


ヴァルンは掌をズボンで拭いた。


「お前が今まで見てなかっただけだ」


オリヤが鼻を鳴らした。


数分後、セイガが戻ってきた。


すぐには水を飲まない。


まず後ろを見る。


次に前方の街道。


それからようやく水辺にしゃがんだ。


ヴァルンが聞いた。


「橋までは問題ないか?」


セイガが水をすくった。


「橋の手前の曲がり角までは」


「その先は?」


「見てない」


オリヤは二台目の荷車の縁に腰を下ろした。


「つまり、何かいるってこと?」


セイガが彼女を見る。


「そこまで行ってないってことだ」


オリヤは一瞬止まった。


それから頷いた。


「そうね」


一台目のそばにいた人間族の衛兵がぼそりと言った。


「ラリオンじゃ、エンナがみんなにそれを教えてるのか?」


オリヤが答えた。


「残念ながら、うつるみたい」


セイガは笑わなかった。


水を飲み、立ち上がった。


*


小さな石橋に近づく頃には、もう夕方になっていた。


太陽は低くなり、右側の斜面が街道へ長い影を落とし始めていた。


橋の手前には、あと一つ曲がり角がある。


セイガがその向こうへ消えた。


一分少しが過ぎた。


そして再び姿を現す。


街道ではない。


もっと上。


荷車の右手にある岩場だった。


握った拳を上げる。


ヴァルンはすぐ一台目を止めた。


オリヤも二台目の手綱を引いた。


セイガは前へ進めとは合図しなかった。


逆だった。


掌を後ろへ払う。


「下がるぞ」


ヴァルンが言った。


そばにいた人間族の衛兵が彼を見る。


「何がある?」


「分からない」


ヴァルンはもう、馬具に近いところで手綱を握っていた。


「だから下がる」


そこからは、オリヤにも橋が見えた。


その手前には古い手押し車があった。


そばには誰もいない。


片方の車輪は草の中に転がっている。


もう片方はまだ軸についていた。


手押し車は轍を塞ぐように置かれている。


だが、セイガが見ているのはそれではなかった。


その上の斜面。


岩の間で、短い光が二度走った。


「近づくな」


ヴァルンは二台目を振り返った。


オリヤが先に下がるのを待つ。


彼女はまだ手綱を握り直しているところだった。


短い風切り音が空気を裂いた。


二台目の後ろにいた人間族の衛兵の身体が跳ねた。


矢が鎖骨の下、胸の上部へ深く突き刺さった。


男は半歩よろめいた。


自分の胸元を見る。


口を開いた。


だが、何も言わなかった。


二度目の風切り音。


オリヤは自分が何をしているのか理解するより先に、座席から身を落とした。


矢が荷車の縁の上を通り過ぎる。


衛兵は膝をついた。


それから横へ倒れた。


「待ち伏せだ!」


誰かが叫んだ。


もう説明する必要などなかった。


*


ヴァルンは一台目を左の路肩へ寄せた。


その左側に身を低くすれば、右の斜面から飛んでくる矢を車体で防げる。


だが、二台目の後方はまだ露出していた。


「右に二人!」


上からセイガが叫ぶ。


一台目のそばにいたダークエルフの衛兵が盾を上げた。


矢が木板へ突き刺さる。


人間族の衛兵がヴァルンから手綱を引き取った。


馬が頭を振り、後ずさる。


衛兵は地面に足を踏ん張り、路肩から離れないように押さえた。


ヴァルンは二台目へ走り、放された手綱をつかんで前の支柱に結びつけた。


後ろでは、ダークエルフの衛兵が倒れた仲間のそばにしゃがんでいた。


オリヤは左の側板に沿って身を低くし、そこまで進んだ。


「矢には触らないで」


二人で男を車輪の陰へ引き込む。


オリヤは膝をついた。


「聞こえる?」


男の目はまだ開いていた。


だが、オリヤを見てはいない。


彼女は首に指を当てた。


待つ。


胸はもう上下していなかった。


オリヤはもう一度、男の顔を見た。


それから手を離した。


そばのダークエルフは説明されなくても理解した。


斜面へ向き直る。


そして盾で、彼女と動かない仲間を覆った。


*


左の浅い溝から三人が出てきた。


所属を示す色はない。


紋章もない。


暗い旅装の外套。


高い襟と頭巾で顔を隠し、長い袖の先は手袋に覆われていた。


二人は短剣。


一人は槍。


叫ばない。


降伏も要求しない。


金も要求しない。


一人が二台目の荷車を指した。


三人とも、そこへ向かう。


オリヤには見えた。


「ヴァルン」


彼にも見えていた。


「見えてる」


最初に一台目の後輪まで来たのは、槍を持つ男だった。


ダークエルフの衛兵が、自分の槍で迎える。


大きく踏み込まない。


距離を保つ。


槍の柄がぶつかり合った。


二人目が横へ回る。


ヴァルンは荷車の覆いを支えていた長い木の棒をつかんだ。


そして短剣を持つ腕を打つ。


襲撃者が腕を引いた。


ヴァルンは車輪のそばへ下がる。


追わない。


三人目はそのまま駆け抜けた。


二台目へ。


オリヤには、そいつがどこを見ているのか分かった。


袋ではない。


覆いでもない。


座席の下。


身体の内側が冷えていくのを感じた。


男が革紐を切る。


覆いの端がめくれた。


座席の下へ腕を突っ込む。


オリヤは書類の入った鞄を胸へ抱え込んだ。


襲撃者がその動きに気づく。


振り向く。


今度は鞄をまっすぐ見ていた。


そして彼女へ飛びかかる。


*


右手で小石が崩れる音がした。


セイガが低い岩棚を伝って下り、路肩へ飛び降りる。


荷車の後ろの角を回り込んだ。


襲撃者の刃は、もう鞄の肩紐へ伸びていた。


セイガがその前腕を打つ。


止まらない。


手首を返す。


短剣が肋骨の下へ入った。


襲撃者が息を吐く。


それでも、もう一歩進もうとした。


セイガは刃を抜き、男をオリヤから押し離した。


「車輪の後ろへ」


オリヤは逆らわなかった。


二台目の左の後輪のそばに身を伏せる。


鞄は離さない。


そこから、さらに二人が見えた。


隊商の後方に現れている。


一人は街道の端。


もう一人は乾いた溝に近い。


二人と荷車の間には、盾を持ったダークエルフの衛兵がいた。


その背後に、仲間が横たわっている。


後方の襲撃者の一人が突っ込んできた。


衛兵が向き直り、迎え撃つ。


金属が金属を叩く。


一度。


二度。


その瞬間、斜面からまた矢が飛んだ。


盾の脇を抜ける。


太腿の外側を貫き、その先の地面へ突き刺さった。


ダークエルフは倒れた。


だが、武器は離さなかった。


一台目を守っていたダークエルフの衛兵が後ろへ下がり、援護に入る。


槍を持つ襲撃者が続こうとした。


ヴァルンが男と車輪の間へ木の棒を突き出す。


ほんの一瞬、足を止めさせた。


「寝てろ」


衛兵が負傷した仲間に言った。


男が苦しそうに息を吐く。


「もう寝てる」


街道から来た襲撃者は、すぐそこまで迫っていた。


負傷したダークエルフが突然その脚をつかむ。


相手の体勢が崩れた。


それで十分だった。


もう一人のダークエルフの衛兵が盾を叩き込んだ。


襲撃者が乾いた溝へ落ちる。


その縁で足首が不自然に折れ曲がった。


すぐそばの地面へ矢が刺さる。


オリヤと無傷の衛兵が身を低くした。


負傷した男は地面へ身体を押しつけた。


後方にいたもう一人の襲撃者は、その間を無理に抜けようとはしなかった。


溝のそばに残り、立ち上がれない仲間をかばった。


*


短い笛の音が街道に響いた。


襲撃者たちが同時に反応した。


撤退の合図だった。


ヴァルンは槍の間合いから外れ、側板のそばへ下がる。


腕を打たれた襲撃者が二台の間を抜け、右の路肩へ出た。


斜面へ退き始める。


槍の男は二台目の左側に残った。


切り裂かれた覆いのそば。


槍の柄を側板に立てかける。


袋を一つどける。


次にもう一つ。


どちらも持っていかない。


さらに奥へ手を伸ばす。


オリヤには、小さな木箱が見えた。


出発前、売却代金の一部を入れた箱。


「待って!」


彼女が車輪の陰から身を乗り出す。


セイガが鋭く言った。


「出るな」


男は木箱を、斜面のそばにいる仲間へ投げた。


そいつは受け取った箱を、打たれていない方の腕で抱え、そのまま上へ走った。


槍の男は残った。


再び荷物の下へ腕を入れる。


まだ探している。


セイガはすでに左の側板に沿って進んでいた。


右の斜面から声が飛んだ。


「書類だ!」


襲撃者が勢いよく顔を向ける。


オリヤを見る。


鞄を見る。


槍をつかみ、荷車に沿って彼女へ向かった。


セイガが迎えた。


短い動きで穂先をそらす。


男が槍を戻す。


セイガはまた位置をずらし、進路を塞いだ。


襲撃者は戦い続けようとしていなかった。


抜ける隙を探していた。


セイガの横を。


オリヤのところまで。


ヴァルンは二台目の左前の角にいた。


そこからは、右の斜面が一部見える。


岩の間で弓兵が身を起こした。


夕暮れの影が濃くなっていても、ヴァルンにはその輪郭が見えた。


ドロウの目は、薄闇の中でも形を失いにくい。


ヴァルンは木の棒を捨て、肩でセイガを押した。


矢が荷車の側板へ突き刺さる。


セイガがよろめいた。


槍の男はその一瞬を使った。


向きを変える。


二台の間を抜け、右の路肩へ出た。


セイガは追わなかった。


オリヤを見る。


次に負傷者。


それから上を見る。


「追わない」


一台目の馬を押さえていた人間族の衛兵が、荒く息をしていた。


「金を持っていかれた」


「一部だけ」


オリヤが言った。


まだ鞄を胸へ抱えている。


「書類は私が持ってる」


セイガが頷いた。


「隠れてろ。まだ弓兵がいる」


*


退き方も、襲撃と同じくらい統制されていた。


誰も勝手に散らばらない。


目についた袋を持ち去ろうとする者もいない。


斜面の二人が矢で他を援護する。


槍の男は荷車の後ろを回り、溝まで下がった。


そこに残っていた仲間と一緒に、負傷した男を支え起こす。


男は片脚にほとんど体重をかけられなかった。


三人は二台目の後方を通り、右の斜面へ向かった。


一方、オリヤのそばでセイガに斬られた男は、誰も回収しようとしなかった。


もう一度、短い笛の音。


それを最後に矢が止まる。


数秒。


ラリオン側は誰も動かない。


さらに数秒。


セイガが手を上げた。


「待つ」


ヴァルンは斜面を見ていた。


「何を待つ?」


「誰か残ってないか、様子を見る」


「ここから見えるか?」


「全部は見えない」


ヴァルンが頷き、再び側板へ身体を寄せた。


オリヤは後輪のそばに座っていた。


指が痛い。


そこでようやく、自分がどれほど強く鞄の肩紐を握っていたのか気づいた。


力を緩めた。


街道のそばに倒れている男を見る。


自分たちの男。


それから二台目のそばに倒れている襲撃者。


二人とも、ほとんど同じように横たわっている。


だが、一方を見る方がずっとつらかった。


*


斜面から誰も姿を見せなくなってしばらくしてから、セイガは荷車の見張りを衛兵たちに任せ、近くの岩場へ上がった。


逃げた者を追うのではない。


矢が放たれていた場所を調べた。


数分後に戻ってくる。


岩場の向こうには、襲撃前に馬を待機させていたらしい、踏み荒らされた場所があった。


新しい蹄の跡は橋から遠ざかっている。


その先の硬い地面では、ほとんど分からなくなっていた。


「馬で逃げた」


セイガが言った。


それから街道に残る死体へ目を向けた。


「最初に確認できたのは七人」


右の斜面を示す。


「弓が二人」


左の溝。


「三人」


隊商の後方。


「二人」


最後に死んだ襲撃者を見る。


「ここに一人残った。退いたのは六人だ」


追いつこうと言う者はいなかった。


負傷したダークエルフは車輪のそばに座らせていた。


オリヤは待っている間から、折り畳んだ布を傷口へ押し当てていた。


今はヴァルンが、その布を巻いて固定するのを手伝っている。


布が血で暗く染まっていく。


脚に矢は残っていなかった。


衛兵が姿勢を変えようとして、すぐに動きを止めた。


歯を食いしばる。


「もう少し、そっと」


オリヤが手を止めた。


「動かないで」


男はゆっくり息を吐いた。


「動くつもりはない」


人間族の衛兵は、死んだ仲間の前に立っていた。


長い間。


それからしゃがむ。


もう一度、首に触れた。


待った。


そして外套の端を引き上げ、顔を覆った。


誰も何も言わなかった。


*


一台目の損傷は少なかった。


側板に矢が二本。


革紐が一本切れている。


車輪には新しい傷。


二台目の方がひどい。


切断された革紐。


破れた覆い。


ずれた袋。


後ろの木板にはひびも入っていた。


オリヤは一覧と積荷を照らし合わせた。


一度。


それからもう一度。


「商品は取られてない」


ヴァルンが、座席の下の、木箱があった場所を見る。


「これだけだな」


「全部入ってたわけじゃない」


オリヤは鞄を確認した。


売却記録。


ある。


買い取られなかった商品の一覧。


それもある。


カイサの紙は書類の間に残っていた。


自分で持っていた金もなくなっていない。


オリヤは息を吐いた。


セイガは襲撃者の死体の前に立っていた。


外套をめくる。


腰帯を調べる。


靴。


袖。


服の裏側。


硬貨が数枚。


短剣。


縄。


印はない。


紋章も。


手紙も。


誰に送り込まれたのか分かるものは、何もなかった。


オリヤが近づいた。


「盗賊?」


セイガが彼女を見る。


「行き当たりばったりに、誰でも襲う連中には見えない」


ヴァルンは二台目のそばに残っていた。


「商品は目の前にあった」


「それを取らなかった」


オリヤが頷く。


「でも書類は探してた」


セイガが続けた。


「それに、俺たちが戻るのを待ってたように見える」


オリヤは後ろを見る。


ヴェルシャインの方角。


それから前。


ラリオンの方角。


「ここなら、どの隊商でも止められた」


「止められた」


セイガが言う。


「でも、あいつらは最初から二台目へ向かった」


オリヤは鞄へ目を落とした。


誰が自分たちを待っていたのか。


それは、まだ分からなかった。


*


暗くなるまで、もう時間がなさすぎた。


戦いでさらに時間を失っている。


負傷者の手当て。


車輪の確認。


ずれた積荷の固定。


そして、二人の死者をどう運ぶかも決めなければならない。


誰も言いたくなかったことを、オリヤが最初に口にした。


「今日はラリオンまで着けない」


ヴァルンが太陽を見る。


「無理だ」


「ヴェルシャインの関所まで戻る?」


セイガが首を振った。


「暗くなるまでには着かない」


ヴァルンは来た道を見る。


「それに、何時間もまた開けた街道を通ることになる」


オリヤは橋を見た。


今朝、カイサに話していた橋。


荷車は一台ずつ。


並んでは渡れない。


今はそこまで、負傷者と二人の死者を運ばなければならなかった。


街道には血が残っていた。


そして初めて、この道が行きよりも長く感じられた。


「じゃあ、どうする?」


セイガが前を示した。


「二台とも橋の向こうへ移す」


「どうして向こう?」


「近づける道が狭い」


ヴァルンが付け加えた。


「気づかれずに近づける場所も少ない」


セイガが頷く。


「まず向こう岸を確かめる。夜の分の水はある」


オリヤは死んだ衛兵をもう一度見た。


「この人は連れて帰る」


次に襲撃者を見る。


「こっちも」


ヴァルンが眉を上げた。


「なぜ?」


「ラリオンなら、誰かが顔を知ってるかもしれない」


セイガは数秒、死体を見た。


それから頷いた。


「商品とは分ける」


*


セイガはまず一人で橋を渡った。


向こうの街道へ出るところと、岩の張り出しの下を調べる。


戻ってくると、荷車を置く場所を示した。


橋の手前には、まだ古い手押し車が残っていた。


ヴァルンと人間族の衛兵が、歪んだ車体を路肩まで引いた。


外れていた車輪も轍からどける。


無傷のダークエルフの衛兵は、後方の街道を見張っていた。


セイガは右の斜面を確認した。


負傷した男は二台目の荷台の内側へ乗せ、脚の下に折り畳んだ布を入れた。


死んだ衛兵を一台目へ運ぶ。


別の布で覆った。


襲撃者の死体は本人の外套で包み、商品をどけた二台目の後端へ固定した。


それが終わってから、ようやく動き出す。


まず一台目。


ゆっくりと。


続いて二台目。


橋の向こうで、ヴァルンは一台目が二台目へのまっすぐな進入路を一部塞ぐように配置した。


人間族の衛兵が橋のそばを確認する。


無傷のダークエルフの衛兵は、野営地の反対側についた。


負傷者は武器を手の届くところに置いた。


もう地面へは下ろさない。


セイガは岩の張り出しへ上がった。


オリヤは荷車のそばに座った。


鞄を自分の前に置く。


そしてようやく、もう一度開けることを自分に許した。


売却記録。


持ち帰る商品の一覧。


カイサの紙。


手元に残った金。


必要以上に長く数えた。


(数えている間は、顔を上げなくていい)


一台目には、布を掛けられた身体が横たわっていた。


ヴァルンが隣に座った。


近すぎない場所へ。


「全部ある?」


「書類は全部」


「金は?」


オリヤが金額を答えた。


「持ち帰る商品も取られてない」


「そうだな」


ヴァルンが街道を見る。


「少なくとも、書類は奪われてない」


オリヤはすぐには答えなかった。


「こっちは一人、生きて帰れない」


ヴァルンも黙った。


オリヤは鞄を閉じた。


「向こうには、それだけで十分だったのかもしれない」


*


まだ完全には暗くなっていない頃。


橋から遠く離れた、低い岩の尾根の向こうで。


六人が七頭の馬を止めた。


一頭には騎手がいない。


脚を負傷した男が鞍から滑り降りるのを、仲間が支えた。


男はその脚へ体重をかけようとした。


すぐに反対の脚へ戻した。


別の男は小さな木箱を脇に抱えていた。


そばの男が手を出す。


「箱は?」


木箱が渡される。


「ある」


「書類は?」


「ない」


数秒、誰も話さなかった。


「こっちは?」


「一人、街道に残った」


男は負傷した仲間へ顎を向けた。


「こいつは、何とか耐えてる」


木箱を受け取った男が、橋の方角を振り返った。


「向こうは?」


「一人倒れた。起き上がってこなかった」


「もう一人、負傷」


「荷車は?」


「二台とも動く」


「今日はもう遠くへは行けない」


男が頷いた。


笑わない。


悪態もつかない。


木箱を見る。


「なら、ラリオンには戻るわけだ」


別の男が尋ねた。


「書類なしで報告するのか?」


「金も一部だけ」


男は木箱を返した。


負傷者が仲間の手を借りて鞍へ戻るのを待ち、七頭目の馬の手綱を取る。


「向こうは、全員では帰れない」


再び進み始めた。


岩の尾根に橋が完全に隠れた時、最後尾の騎手が尋ねた。


「報告は、どこへ?」


先頭の男は振り返りもしなかった。


「レヴェンガルドへ」

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