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エピソード68 道の代価

最初の護衛依頼が入ったのは、まだ昼前だった。


一人の騎手が南門へやって来た。


馬は腹のあたりまで埃まみれだった。


騎手自身も同じだった。


彼は中へ入れろとは言わなかった。


境界の前で止まり、空の両手を上げた。


「ヴェルシャインの隊商です」


ランゼはアーチの下に立っていた。


「何台だ?」


「荷車が五台」


「人は?」


「俺を入れて十一人です」


「どこだ?」


騎手は南を振り返った。


「古い境界石のそばです」


「そこで待っています」


ランゼは数秒、黙っていた。


昨日までは、ただ紙に書かれた一文だった。


今日はもう、その一文が本当に機能するのか確かめたい者が門の前に立っていた。


サルマが詰所から出てきた。


その後ろにはケルトがいた。


手には、昨日決めた規則の写しを持っていた。


ケルト自身が、街道そのものに今にも署名を見せろと言われるのを恐れているようだった。


騎手は紙を見た。


「護衛は金を払えば頼めると聞きました」


サルマが答えた。


「頼めるわ」


「こちらに人手があれば、だけど」


ランゼは振り返った。


内側の中庭には、すでに四人の見張りが待っていた。


偶然ではない。


ランゼは朝から、最初の護衛依頼に備えて彼らを予備として残していた。


セイガは門の右側にある低い屋根の縁に座っていた。


その下ではデランが、自分の袖の留め具を今の話よりよほど重要なもののように眺めていた。


ランゼが言った。


「いる」


屋根を見た。


「セイガ」


デランを見た。


「こいつ」


それから四人の見張りを見た。


「それと、あいつら」


ケルトはもう書いていた。


「七人」


サルマは規則の写しを開いた。


「護衛料は出発前に受け取る」


騎手は提示された額を確認し、革袋から硬貨を数えて渡した。


ケルトは金額と受領時刻を書き加えた。


デランが顔を上げた。


「俺が行きたいかどうかすら聞かなかったな」


「行きたくないのか?」


「行きたい」


「なら、なぜ聞く?」


「俺の意見にも少しくらい価値があるって感じたかった」


セイガが屋根から飛び降りた。


「ない」


デランは彼を見た。


「お前がそばにいてくれて本当に助かる」


「俺がいなければ、お前も少しくらい自尊心を保てたかもしれないのにな」


サルマは折り畳んだ紙をランゼへ渡した。


「条件は同じ」


「古い境界石から門までの護衛」


「街道そのものが安全になるという保証ではない」


ランゼは紙を盾の帯の下へ差し込んだ。


「覚えている」


通りの方からショーンゴが近づいてきた。


騎手はすぐに彼だと分かった。


服で判断したわけではない。


彼が数歩近づくあいだに、周囲の人々の振る舞いがわずかに変わったからだった。


騎手の視線が、ショーンゴの姿に少し長く止まった。


ショーンゴはそれに気づいた。


「何かあるのか?」


騎手はすぐに視線を外した。


「いいえ」


ショーンゴはランゼを見た。


「お前が行くのか?」


「ああ」


「なら行け」


ランゼがわずかに首を傾けた。


「お前は来ないのか?」


「行かない」


騎手はもう一度ショーンゴを見た。


今度は短く。


ショーンゴは騎手へ視線を向けた。


「今度こそ、何かあるな」


「ただ、あなたが来ると思っていました」


「なら、考えが間違っていた」


騎手は何も答えなかった。


ショーンゴは、出発の準備をしている七人を見た。


「荷車一台ごとに俺が必要なら、俺たちには街道なんてない」


ランゼは盾の帯を直した。


「五台とも連れて戻る」


ショーンゴが答えた。


「人を連れて戻れ」


ランゼは一秒だけ彼を見つめた。


それから頷いた。


「分かった」



古い境界石は、街道が最初に斜面のあいだへ入り込む場所に立っていた。


かつては一つの大きな岩だった。


今では、割れた二つの岩塊が、細い隙間を挟んで向かい合っていた。


隊商はその少し北で待っていた。


荷車が五台。


一台目は穀物。


二台目も同じ。


三台目には、布の下に塩の袋が積まれていた。


四台目には布と簡単な道具。


五台目が最も小さかった。


そこには薬と包帯類を入れた小箱が積まれていた。


一台目のそばでは、カイル・メルが待っていた。


四十歳ほどに見える人間の男だった。


短い栗色の髪には、すでにこめかみのあたりに白いものが混じっていた。


右の掌には、縄擦れによる古い傷痕があった。


戦士には見えない。


だが、五台すべてを一度に見渡せる位置に立っていた。


ランゼたちを案内してきた騎手が手を上げた。


「カイル」


男が近づいてきた。


「カイル・メル」


自分から名乗った。


それからランゼの盾を見た。


「お前が指揮するのか?」


「門までだ」


「いい」


カイルは後ろを示した。


「荷車は五台」


「人は十一人」


「本当に戦えるのは二人」


「あと三人は、武器のどちら側を持てばいいかくらいは知っている」


「残りは荷車につかまっていた方がましだ」


デランが彼を見た。


「お前は?」


「自分の命は、安く売らない」


「それも才能だな」


カイルは笑わなかった。


だが、口元だけがわずかに動いた。


ランゼは隊商に沿って歩いた。


急がなかった。


車輪。


固定具。


縄。


荷車同士の間隔。


一つずつ確認していった。


その間に、セイガは街道を少し先へ進んだ。


遠くまでは行かず、最初の曲がり角で止まった。


左の斜面を見た。


次に、右側の密集した木々。


デランがその後ろを歩いていた。


突然、足を止めた。


一本の木の幹に、明るい削り跡があった。


つい最近、誰かが刃物で表皮を削ったように見える。


デランは指で触れた。


「セイガ」


セイガが振り返った。


「見えてる」


「新しい」


「見えてる」


「今日は本当に話しやすいな、お前」


セイガが近づいてきた。


削り跡は腰ほどの高さにあった。


真っ直ぐだった。


真っ直ぐすぎた。


セイガはしゃがんだ。


木の根元の地面を見た。


足跡はほとんど残っていなかった。


デランは笑みのない笑いを浮かべた。


「これは嫌な感じだ」


「なぜ?」


「偶然、木の皮を切った奴なら、地面の跡まで消したりしない」


セイガは斜面の上を見た。


「目印か?」


「それか、俺たちに目印だと思わせたい」


セイガは数秒黙った。


それから言った。


「上を見てくる」


ランゼにも聞こえた。


「遠くまで行くな」


「分かってる」


「何も見つからなくても、その先まで探しに行くな」


セイガは彼を見た。


「それも分かってる」


ランゼはカイルへ向き直った。


「荷車の間隔を詰めろ」


「列を伸ばすな」


「一台目と二台目は三台目の速度に合わせる」


「五台目も遅れさせるな」


カイルは頷いた。


「聞いたな」


隊商の者たちが動き始めた。


誰も反論しなかった。


それがランゼには気に入った。



最初の十分間、街道はただの街道だった。


石。


轍。


埃。


木々のあいだを抜ける風。


セイガは隊商より高い位置を、左の斜面に沿って進んでいた。


茂みの向こうへ消えたかと思えば、また木々のあいだから姿を見せた。


ラリオンの見張り二人が先頭付近を守った。


ランゼは三台目のそばを歩いていた。


もう一人の見張りが四台目についていた。


デランと最後の見張りが五台目を守った。


カイルは一台目と二台目のあいだを行き来していた。


座らなかった。


列の中央に隠れもしなかった。


時折、それぞれの荷車の縁に指を触れていた。


一つ。


二つ。


三つ。


目ではなく、手で隊商を数えているようだった。


デランはそれに気づいた。


「何台あるか忘れるのか?」


カイルは振り返らなかった。


「まずいことが始まると、目は見るべき場所を見なくなる」


四台目の縁に触れた。


「手の方が嘘をつきにくい」


五台目。


「今のところ、五台」


デランは改めて彼を見た。


今度は、冗談を返さなかった。



街道が狭くなり始めた。


右側では木々が近づいていた。


左側では斜面がさらに急になっていた。


昨日、三人がいた場所だった。


今日は姿が見えない。


ランゼが拳を上げた。


隊商が止まった。


一台目。


二台目。


三台目。


四台目。


五台目。


五台すべて。


上の斜面にセイガが姿を見せた。


指を二本立てた。


それから掌を横へ向けた。


二人分の跡。


離れていく方向。


ランゼが聞いた。


「新しいか?」


「今日のものじゃない」


デランは街道の端へ行った。


しゃがんだ。


埃の中に細い引きずり跡があった。


ほとんど真っ直ぐ。


指でなぞった。


「何か引きずったな」


ランゼは線の先を見た。


木々の方へ続いていた。


「丸太か?」


「かもな」


デランは先ほど印のあった木の方を振り返った。


それから引きずり跡を見た。


「俺たちに、ここを見させたかったのかもしれない」


ランゼは黙っていた。


数秒のあいだ、街道は再び静かになった。


カイルが近づいてきた。


「戻るか?」


ランゼは五台の荷車を見た。


それから前方の道を見た。


ラリオンへ進む方が、開けた街道まで戻るよりかなり近い。


「いや」


「ただし、配置を変える」


前方の二人の見張りを示した。


「一人は前へ。セイガの下を進め」


「もう一人は四台目へ」


それからカイルを見た。


「荷車のあいだを歩き回るな」


「二台目のそばにいろ」


カイルが聞いた。


「なぜ二台目だ?」


「俺が間違っているなら、どこにいても同じだ」


「だが間違っていなければ、誰かがお前をいちばん騒ぎの大きい場所へ向かわせたがっている」


カイルは頷いた。


それ以上は聞かなかった。


隊商が再び動き出した。



襲撃が始まったのは、引きずり跡の場所ではなかった。


印のついた木の場所でもない。


最初のボルトは、反対側から飛んできた。


右側の木々から。


見張りには当たらなかった。


ランゼにも。


カイルにも。


五台目にいた男の首に突き刺さった。


男は叫びすらしなかった。


手から力が抜け、身体が後輪のそばの路肩へ滑り落ちた。


同時に、何か重いものが車輪へぶつかった。


金属の鉤だった。


そこから伸びた縄が張り、木々の中へ向かって一気に引かれた。


五台目が横へ大きく揺れた。


牽引獣が悲鳴を上げた。


車輪が固い轍から外れた。


「止まれ!」


ランゼが振り返った。


その瞬間、三台目と四台目のあいだへ小さな土器が落ちた。


割れた。


濃い灰色の煙が一気に立ち上った。


魔術ではない。


樹脂。


乾燥した草。


目がすぐに痛くなるほど刺激の強い何か。


煙が隊商を真っ二つに分断した。


前方には三台。


煙の向こうに四台目と五台目。


「荷車を動かすな!」


ランゼは後ろへ走った。


射手のいる側ではない。


切り離された者たちの方へ。


デランはもう五台目のそばにいた。


死体は見ない。


まだ。


三人の襲撃者が街道へ飛び出した。


その一人は、昨日木のそばに立っていたダークハーフエルフだった。


広い肩には、幅広の運搬帯が掛かっていた。


左右には、小箱を一つずつ固定できる輪が付いていた。


まだ何も固定されていなかった。


彼は人には目もくれなかった。


小箱へ走った。


ラリオンの見張りの一人が剣を上げた。


襲撃者は彼へ向かわず、横へ退いた。


木々から二本目のボルトが飛んできた。


見張りの鎖骨の下に刺さった。


彼は片膝をついた。


デランは襟をつかみ、車輪の陰へ引きずった。


「生きてるか?」


見張りは歯を食いしばった。


「今のところは」


「最高だ」


「続きは後で言え」



斜面では、セイガが煙を見るより先に最初の衝撃音を聞いていた。


すぐに引き返した。


真っ直ぐ下へは走らず、さらに高い位置へ移動した。


そこからなら、五台目の後ろにある木々が見えた。


そして、さらに五人を見つけた。


三人ではない。


合計八人。


一人だけ、他より遠くに立っていた。


簡素な旅装の男。


昨日、轍のそばに座っていた男だった。


撃ってはいなかった。


手で合図を出していた。


指を二本立て、下を示した。


次に、退却の合図。


そして、もう一度二本の指を立てた。


セイガは理解した。


戦闘を率いる者ではなかった。


見る者だ。


その五人のうち二人は、すでに木々のあいだから下り始めていた。


二人が向かった先は、戦っている者たちではなかった。


最初から四台目と五台目を目指していた。


セイガは斜面を横へ進んだ。


静かに。


速く。


旅装の男まで、あと二十歩ほど。


男が突然顔を向けた。


音を聞いたはずはない。


別の襲撃者が、鋭く腕を横へ振って合図したのだ。


セイガは止まった。


ボルトが顔の前を通過した。


別の木から。


もう一人、射手がいた。


自分が向かっていた男ではなかった。


囮の中に、さらに囮。


セイガは追跡を続けなかった。


木の幹の陰へ退いた。


二本目のボルトが樹皮へ突き刺さった。


「頭が回るな」


静かにそう言った。


そして観察役を追うのをやめた。


射手へ向かった。



荷車のそばでは、ランゼが盾を前にして煙から出てきた。


短い外套を着たダークエルフが上から斬りつけた。


昨日、斜面の上に立って街道を見ていた者だった。


頭を狙ってはいない。


盾を持つ腕。


脇を開けさせるつもりだった。


ランゼは受け止めた。


肩に痛みが走った。


それでも退かなかった。


二人目の襲撃者が右から斬り込んだ。


ランゼはそちらを向かなかった。


「左だ!」


隊商の一人がその声に反応した。


短い槍を上げるのが間に合った。


刃が槍の木製の柄に沿って滑った。


襲撃者が退いた。


ランゼはダークエルフを盾で押した。


華麗な技でもない。


大がかりな動きでもない。


ただ全身で押し込んだ。


相手が体勢を崩した。


片足が石のあいだにはまった。


倒れた。


ランゼには二撃目を入れる余裕があった。


だが、入れなかった。


背後で誰かが叫んだからだ。


五台目がさらに溝の方へ引かれていた。


「縄だ!」


デランはもう後輪のそばで地面に伏せていた。


張り詰めた縄を刃物で切ろうとしていた。


縄は太い。


濡れていた。


刃が滑るように、何かが塗られていた。


「いい知らせがある!」


ランゼは次の一撃を受け流した。


「今じゃない!」


「じゃあ悪い知らせだけだ!」


デランは刃の角度を変えた。


「こいつら、これも考えてやがる!」


カイルはすでに馬具のそばにいた。


箱ではない。


牽引獣が馬具の中で暴れ、このままでは傾いた荷車に巻き込まれる。


カイルが切っていたのは、その獣をつなぐ革帯だった。


ランゼが気づいた。


「二台目にいろと言っただろ!」


「俺の五台目が引かれてる!」


「荷物はお前より価値がない!」


カイルは後輪のそばに倒れた死体を見た。


表情が空白になった。


一秒だけ。


そして最後の革帯を切った。


牽引獣が前へ飛び出した。


もう荷車に引きずられることはなかった。


「荷物のためじゃない!」


カイルはデランの肩をつかんだ。


負傷した見張りをさらに後ろへ引きずるのを手伝った。


「荷物なら、また買える!」


死体へ視線を投げた。


「人は買い直せない!」


デランは一瞬、冗談をやめた。


ただ頷いた。



最初に飛び出したダークハーフエルフは、すでに五台目から小箱を一つ下ろしていた。


木々から下りてきた一人が二つ目をつかんだ。


さらに一人が四台目まで突破し、布の包みを引っ張った。


肩幅の広いダークハーフエルフは、三つ目の箱へ手を伸ばした。


デランが投げたのは刃物ではなかった。


荷車の側面にあった丸めた布。


襲撃者は反射的に腕で払った。


ただの布だ。


だが、一秒だけ視界が塞がれた。


デランが丸めた布を縛っていた縄の端を引いた。


布が襲撃者の足元へ広がった。


相手がその上へ踏み込んだ。


足裏が滑った。


横へ倒れた。


見張りの一人が上から押さえ込んだ。


襲撃者が肘を叩き込んだ。


一度。


二度。


もう少しで抜け出すところだった。


デランは同じ布の端をつかみ、相手の腕へ巻きつけた。


「ほらな」


息を吐きながら言った。


「たまには反物も役に立つ」


襲撃者が激しく身をよじった。


デランまで引きずられそうになった。


「ランゼ!」


ランゼには聞こえた。


だが、ランゼとデランのあいだには、再び短い外套のダークエルフがいた。


今度は急がなかった。


刃を低く構えていた。


視線の先は盾ではない。


膝を見ていた。


ランゼも急ぐのをやめた。


襲撃者が右へフェイントを入れた。


ランゼは動かなかった。


二度目は左。


それにも乗らなかった。


三度目が本命だった。


刃が下へ走った。


ランゼは盾の縁を下げた。


金属が手首へぶつかった。


骨の音がした。


襲撃者が声を上げた。


ランゼが前へ出た。


盾を胸へ叩き込んだ。


ダークエルフが後方へ飛んだ。


後頭部が石へぶつかった。


身体はもう起き上がらなかった。


ランゼは確認しなかった。


すでにデランの方へ走っていた。



斜面では、セイガが射手を見つけていた。


足跡からではなかった。


相手のミスから。


二発目を撃った後、位置を変えるのを急ぎすぎた。


枝がまだ揺れていた。


セイガは斜面の下手から木を回り込んだ。


射手もダークエルフだった。


鋭い顔立ち。


暗い肌。


短いクロスボウの弦は、すでに半ばまで引かれていた。


男がレバーを動かした。


間に合わなかった。


セイガが武器を蹴った。


クロスボウが斜面の下へ飛んだ。


ダークエルフが短刀を抜いた。


セイガは半歩退いた。


刃が腹の前を通った。


二撃目。


さらに速い。


セイガが手首を弾いた。


二人の距離は、身体が触れ合うほどに縮まった。


相手は射手でありながら、近接戦も強かった。


並の盗賊ではなかった。


動きに無駄がない。


刃の軌道は短く、鋭い。


大振りは一度もしない。


セイガは肩に一撃を受け、木の方へ弾き飛ばされた。


襲撃者が前へ飛び込んだ。


それこそ、セイガが待っていたものだった。


身体をずらした。


相手の短刀が樹皮へ食い込んだ。


一瞬、抜けなくなった。


セイガは相手の肘の下を打ち、その身体を回した。


同時に腰の短い刃を抜き、肋骨の下へ入れた。


ダークエルフが木のそばへ崩れ落ちた。


セイガは刃を抜き、すぐ下を見た。


旅装の男はもういない。


上に残っていたもう一人も一緒に消えていた。


セイガは追わなかった。


前方の森を見た。


次に、荷車の周囲の煙。


「退いてる」


そして戻り始めた。



笛が一度鳴った。


短く。


生き残っている襲撃者全員が、同時に反応した。


恐慌ではない。


ばらばらの逃走でもない。


撤退。


一人はすでに薬箱を背負っていた。


もう一人も、別の薬箱を抱えていた。


三人目は布の包みを肩へ引き上げていた。


残る二人は、木々のあいだをさらに高い位置へ退いていた。


ランゼには見えた。


追わせることもできた。


五人の襲撃者が森へ退いていった。


一人は足を引きずっていた。


セイガはすでに斜面を下りてきていた。


ランゼが手を上げた。


「追うな!」


見張りの一人が振り返った。


「荷を持っていかれます!」


「見えてる!」


「五人です!」


「その先に何人待っているか分からない!」


見張りは止まった。


ランゼが隊商を指した。


「人を数えろ!」


箱ではない。


敵でもない。


人だ。


煙はもう薄れ始めていた。


最初の三台はその場にいた。


四台目も。


五台目は傾いていたが、横転してはいなかった。


カイルが隊商に沿って走った。


荷車の縁に触れた。


一台目。


二台目。


三台目。


四台目。


五台目で止まった。


手は木に触れたままだった。


それから人を数え始めた。


一人。


二人。


三人。


声は次第に小さくなった。


十人目で止まった。


十一人目は、立っていなかった。


後輪のそばに倒れていた。


カイルが近づいた。


しゃがんだ。


ボルトには触れず、自分の膝を指で強くつかんだ。


「レスだ」


そう言った。


誰も答えなかった。


カイルはランゼを見た。


「覚えておけ」


ランゼは頷いた。


「覚えておく」



負傷者は三人。


ラリオンの見張りが一人。


鎖骨の下にボルト。


出血は多い。


だが呼吸はしていた。


隊商のダークエルフの女が一人、太腿に深い切り傷を負っていた。


四台目にいたダークハーフエルフは肩を斬られていた。


腕を動かすことはできる。


だが、まともには上げられなかった。


見張りと隊商の者たちが、三人に応急処置を施していた。


死者も三人。


レス。


ランゼが倒したダークエルフ。


そして斜面のダークエルフの射手。


生きたままの捕虜が五台目のそばに横たわっていた。


ダークハーフエルフ。


広い肩。


やや短い尖った耳。


昨日、「ここだ」と言った男。


今日は何も言わなかった。


両手は自分の装備から外した革帯で縛られていた。


デランがそばにしゃがんでいた。


「いい知らせ、言っていいか?」


ランゼは負傷した見張りを確認していた。


「今ならいい」


デランは捕虜を指した。


「こいつは生きてる」


「悪い知らせは?」


デランは森を指した。


「あの五人も生きてる」


ランゼは彼を見た。


「それは悪い知らせじゃない」


「まだ終わってない知らせだ」


デランは少し考えた。


「そっちの方が余計に嫌な響きだな」


襲撃者は八人。


二人が死亡。


一人を拘束。


五人が森へ消えた。


数は合っている。


それでも、答えが増えたわけではなかった。



セイガが、死んだ射手の短いクロスボウを森から持ち帰った。


ランゼのそばへ置いた。


「印は何もない」


ランゼが見た。


普通の木。


普通の金属。


革帯さえ、部分ごとに擦れ方が違っていた。


まるで、それぞれ別の来歴を持つ部品ばかりを、わざと集めて組み上げた武器のようだった。


デランは、捕らえた男のそばに落ちていた幅広の運搬帯を拾った。


左右に固定輪が一つずつあった。


二つの輪の間隔は、小箱を左右に一つずつ吊るすのにほとんどぴったりだった。


「こっちはもっと面白いな」


カイルはそれを見た。


表情が暗くなった。


「大きさを知っていた」


デランは頷いた。


「それか、同じ荷を前にも見たことがある」


セイガが言った。


「配置も知っていた」


ランゼが振り返った。


「なぜそう思う?」


「最初の一発は五台目を狙った」


「穀物じゃない」


「お前でもない」


「俺でもない」


セイガは捕虜を見た。


「こいつらは戦いに勝ちに来たんじゃない」


デランが付け加えた。


「運搬帯まで持ってな」


ランゼはゆっくり息を吐いた。


それからダークハーフエルフの前にしゃがんだ。


「誰に金をもらった?」


沈黙。


「もう一度聞く。だが、声を荒らげるつもりはない」


捕虜が目を上げた。


「知らない」


ランゼは捕虜を見つめた。


「悪い答えだ」


「でも本当だ」


「仕事を受けた場所は?」


捕虜が少し顔を横へ向けた。


血を吐き捨てた。


「古い焼き場」


ランゼは眉を寄せた。


「もっと南か」


捕虜は小さく頷いた。


「誰が来た?」


「一人」


「種族は?」


「見てない」


「どうやって隠していた?」


「外套」


「手袋」


「布越しの声」


セイガは少し離れた場所に立っていた。


捕虜はセイガを見ていなかった。


森を見ていた。


「何を命じられた?」


捕虜はまた黙った。


ランゼが言った。


「お前の五人はもう遠い」


「二人は死んだ」


「お前はここだ」


「あいつらを守るために黙っていても、迎えには戻らない」


効いた。


大きくはない。


だが、捕虜の肩がわずかに落ちた。


「荷車が五台」


そう言った。


カイルが鋭く振り向いた。


捕虜は続けた。


「最後の一台は軽い」


「小箱」


「できれば二つ取れ」


デランが五台目の空いた場所を見た。


二つ。


正確に二つ。


「布は?」


デランが聞いた。


「時間があれば」


「穀物は?」


「いらない」


ランゼは視線を外さなかった。


「人は?」


「標的じゃない」


カイルがレスの死体を見た。


捕虜もそれに気づいた。


「俺は撃ってない」


カイルが静かに答えた。


「撃ったのが誰かなんて、俺には同じことだ」


襲撃者は目を伏せた。


ランゼが聞いた。


「他には?」


沈黙。


「お前らは護衛を待っていた」


もう質問ではなかった。


捕虜がランゼを見た。


ランゼは続けた。


「だから境界石より前では襲わなかった」


「俺たちが何人来るか見たかった」


捕虜の顎に力が入った。


デランが静かに言った。


「ようやく正しい扉を叩いた感じだな」


ランゼは少しだけ身を近づけた。


「護衛について何を言われた?」


捕虜はすぐには答えなかった。


「見ろ、と言われた」


「何を?」


「人数」


「誰が前へ出るか」


「誰が荷車に残るか」


「誰が追うか」


セイガがようやく顔を向けた。


「ショーンゴが来た場合は?」


今度は反応がはっきり出た。


捕虜が彼を見た。


セイガが一歩近づいた。


「ショーンゴについても指示があったな」


捕虜は息を吐いた。


「本人が街道にいたら……」


間が空いた。


「始めるな」


数秒、誰も口を開かなかった。


ランゼが身体を起こした。


デランから笑みが消えた。


カイルがゆっくり北を見た。


ラリオンの方向へ。


セイガが聞いた。


「なぜだ?」


「知らない」


「ただ、撤退の合図を出せと言われた」


ランゼが言った。


「なら、これはただ荷を奪うための襲撃じゃなかった」


捕虜は答えなかった。


デランが捨てられた運搬帯を持ち上げた。


「荷物もちゃんと盗んでいったけどな」


ランゼは彼を見た。


「ああ」


「だからこそ、うまく隠せる」


ランゼは街道へ視線を移した。


「問いを隠したいなら、ただの盗みだったように見せればいい」



五台目を立て直すには、三十分あまりかかった。


車輪は壊れていなかった。


固い轍から引きずり出されただけだった。


鉤につながった縄を切り離した。


縄も鉤も、証拠として回収した。


まず牽引獣を落ち着かせ、脚を確認した。


切った革帯は、荷車にあった予備の帯と取り替えた。


荷車を固い轍へ戻してから、牽引獣を再びつないだ。


負傷したラリオンの見張りは四台目へ乗せた。


負傷した隊商の二人は二台目へ。


レスは一台目へ運び、布を掛けた。


襲撃者二人の遺体は、身元確認のため三台目の後部へ載せ、別の布を掛けた。


捕虜は四台目と五台目のあいだを歩かされた。


両手は前で縛った。


両足首は、襲撃者の装備から取った別の短い革帯でつないだ。


歩けるが、走れない程度に。


クロスボウ、運搬帯、縄、鉤は別にまとめ、ラリオンへ持ち帰ることにした。


出発前、カイルはもう一度隊商に沿って歩いた。


一台目の縁に触れた。


二台目。


三台目。


四台目。


五台目。


それから、二つの箱が抜けた空所で止まった。


デランがそばにいた。


「五台」


そう言った。


カイルは頷いた。


「五台」


布を掛けた身体を見た。


「でも、十一人じゃない」


今度ばかりは、デランにも冗談が見つからなかった。



ラリオンへ着いたのは昼を過ぎてからだった。


城壁の上から、まず五台の荷車が見えた。


次に、一台目に載せられた一つの覆われた身体。


三台目の後部には、さらに二つの覆われた遺体があった。


その次に、四台目に残る血の跡。


最後に、両手を縛られ、二人の見張りのあいだを歩くダークハーフエルフ。


門が開いた。


大きくは開かなかった。


隊商を管理しながら通せるだけの幅だった。


ショーンゴが内側に立っていた。


右にはサルマ。


ケルトはすでに紙を持っていた。


エンナは少し離れた場所にいた。


一台目が入った時、ショーンゴは布を掛けられた身体を見た。


荷物のことは聞かなかった。


「誰だ?」


カイルが二台目から降りた。


「レス」


「俺たちの仲間だ」


ショーンゴは一度だけ頷いた。


「他は?」


ランゼが四台目を示した。


「こっちは一人重傷」


「隊商側に二人負傷者」


それから三台目の後部を示した。


「襲撃者は二人死亡」


後ろへ視線を移した。


「一人は生きたまま捕らえた」


「五人は逃げた」


ケルトが書き続けた。


今度は誰も紙について冗談を言わなかった。


ショーンゴが聞いた。


「荷車は?」


「五台」


「荷は?」


カイルが答えた。


「薬箱を二つ失った」


「布も一包み」


「残りはある」


ショーンゴは彼を見た。


「荷物から数えたのか?」


カイルは首を振った。


「人の後だ」


ショーンゴはしばらく彼を見た。


それからランゼへ視線を移した。


「最初に何を襲った?」


「五台目」


「誰がいた?」


「他より特別な奴はいなかった」


ショーンゴは質問を変えた。


「何が載っていた?」


「薬」


「知っていたのか?」


デランが運搬帯を持ち上げた。


「大きさまで知ってた」


ショーンゴはそれを受け取った。


二つの固定輪を指でなぞった。


デランへ返した。


「他には何を見ていた?」


ランゼは捕虜を見た。


「俺たちが何人出すか」


「誰が前へ行くか」


「誰が残るか」


「誰が追うか」


セイガが付け加えた。


「それと、お前が来るかどうか」


ショーンゴは彼を見た。


「俺が来ていたら?」


「襲うなと言われていた」


門のそばにいた何人かにも聞こえた。


囁きが広がった。


ショーンゴはそちらを振り向きもしなかった。


捕虜だけを見ていた。


「本当か?」


ダークハーフエルフは黙った。


それから頷いた。


「そうだ」


ショーンゴが聞いた。


「誰の命令だ?」


「知らない」


「見たか?」


「いや」


「名前は?」


「知らない」


「印は?」


「ない」


「金は?」


「銀」


ケルトが顔を上げた。


「どんな?」


捕虜が答えた。


「切り銀」


「貨幣の印はない」


ケルトがペンを下ろした。


「都合がいいですね」


サルマが言った。


「良すぎるくらいね」


ショーンゴはランゼを見た。


「追わなかったな」


「ああ」


「なぜ?」


「追えば、五台の荷車と負傷者を置いていくことになる」


「それを待っていた」


セイガが付け加えた。


「森には、追ってきた奴を狙うための射手まで置かれていた」


「さらに進めば、もう一戦やることになってた」


ショーンゴは数秒黙った。


それから言った。


「よくやった」


ランゼは満足そうではなかった。


「一人失った」


「荷もだ」


「勝ったとは言ってない」


ショーンゴは五台の荷車を見た。


「損失をそれ以上広げなかった判断が正しかったと言った」


カイルがそばに立っていた。


指先が再び、右の掌の傷痕に触れた。


落ち着かないからではない。


まだ自分の手がそこにあると確かめるように。


サルマが聞いた。


「ヴェルシャインには何を書く?」


ショーンゴはすぐ答えた。


「事実を」


ケルトはもうペンを構えていた。


「どこまで?」


「分かっていること全部」


「荷車は五台」


「護衛は七人」


「襲撃者は八人」


「うち二人死亡」


「一人拘束」


「五人逃走」


「隊商側の死者一人」


「負傷者は合計三人」


「失った荷は、薬箱二つと布一包み」


ケルトは書き続けた。


ショーンゴは続けた。


「依頼主は不明と書け」


「推測は一言も加えるな」


サルマは頷いた。


「分からないから」


「分からないからだ」


ショーンゴは捕虜を見た。


「レヴェンガルドかもしれない」


「ヴェルシャインかもしれない」


「第三者かもしれない」


ヴェルシャインという言葉で、カイルが鋭く彼を見た。


ショーンゴは視線を外さなかった。


「お前が目の前に立っているというだけで、お前の側を候補から外すことはしない」


カイルは数秒黙った。


それからゆっくり頷いた。


「正しい」


サルマが彼を見た。


「腹は立たないの?」


「今の時点で俺たちを信用していると言われる方が、よほど腹が立つ」


エンナが静かに言った。


「この人とは仕事ができそう」


カイルが彼女を見た。


「褒めてるのか?」


「まだ」



新しい捕虜は、もう一人を収容している中庭へは連れていかなかった。


別の場所に収容した。


サルマがそう主張した。


別々の襲撃を生き延びた二人の証人を、見張りにとって都合がいいという理由だけで同じ場所へ置くつもりはなかった。


襲撃者二人の遺体も、捕虜とは別の施錠された物置へ移され、装備と傷を記録することになった。


負傷者たちは西の路地の老薬師のところへ運ばれた。


昨日、薬を確認したあの老人だった。


今度は、昨日買った薬箱を、彼の確認を経て開けた。


検査のためではない。


治療のために。


ケルトは門のそばの卓に座っていた。


彼の前には三つの別々の記録。


人。


商品。


襲撃者。


混ぜない。


サルマがそばに立っていた。


「『戦闘』とは書かないで」


ケルトが顔を上げた。


「なぜです?」


「そう書けば、明日には誰かが『ラリオンが南街道で戦争を始めた』と言い出すから」


ケルトは考えた。


言葉を一つ消した。


別の言葉を書いた。


『ラリオン護衛下の隊商への襲撃』


サルマは読んだ。


「それでいい」


ショーンゴは扉のそばに立っていた。


セイガは壁へ肩を預けていた。


デランは地面に直接座っていた。


襲撃者が捨てた運搬帯を、手の中でまだ弄んでいた。


ショーンゴが彼を見た。


「何だ?」


デランが帯を持ち上げた。


「箱を二つ持っていった」


「帯の固定輪も二つ」


「ああ」


「それが?」


デランは一つ目の固定部を指でなぞった。


「別に」


次に二つ目。


「ただ、ここまで準備して盗みに来る奴らが嫌いなだけだ」


セイガが言った。


「それは新しい話じゃない」


「違う」


デランはセイガを見た。


「新しいのは別の方だ」


帯を卓へ置いた。


「こいつらは、隊商が来ると知っていただけじゃない」


「限られた時間の中で、何を取るのが一番得かまで知っていた」


ケルトのペンが止まった。


サルマが静かに聞いた。


「つまり、誰かが積荷の中身を知っていたのね」


「それか、とんでもなく勘が良かった」


ショーンゴが答えた。


「勘じゃない」


全員が彼を見た。


「俺の反応を確かめるために金を払う奴が、一番価値のある部分を運任せにするはずがない」


サルマがゆっくり息を吐いた。


「なら、次の問いね」


「どうやって知ったのか」


ショーンゴは南門を見た。


その向こうの街道は、もう何事もなかったかのように見えていた。


「それが正しい問いだ」



ラリオンから遠く離れた場所。


数時間前まで射手たちが潜んでいたのと同じ森の奥。


五人は街道の音が聞こえなくなってから、ようやく足を止めた。


先頭を歩いていたのは、簡素な旅装の男だった。


昨日、轍を確かめていたあの男。


その後ろでは、二人が盗んだ箱を運んでいた。


負傷したダークエルフは脇腹を押さえていた。


血が指のあいだから流れていた。


ダークハーフエルフは布の包みを背負っていた。


誰にも紋章はなかった。


揃った服もなかった。


一人が後ろを見た。


「二人戻っていない」


取りまとめ役は振り返りもしなかった。


「見れば分かる」


「もう一人捕まった」


「それも分かる」


「三人失った」


今度は男が振り返った。


「数くらい数えられる」


別の一人が聞いた。


「それだけの価値はあったのか?」


男はようやく二つの箱を見た。


「箱のことか?」


自分で首を振り、北へ目を向けた。


「違う。価値があるのは、俺たちが取りに来たものの方だ」


誰も答えなかった。


男は指を折り始めた。


「七人」


一本目。


「盾持ちは隊商を守り、追わない」


二本目。


「高所を取る奴は斜面を確認し、二つ目の罠には入らない」


三本目。


「五台目についていた奴は、人だけでなく物を見る」


四本目。


「ショーンゴは来なかった」


五本目。


手を下ろした。


負傷したダークエルフが聞いた。


「それは良いのか、悪いのか?」


「俺たちが決めることじゃない」


男は箱を一つ持ち上げた。


手の空いている者へ渡した。


「俺たちは答えを届けるだけだ」


「誰に?」


男は、その質問自体が不要だと言うように相手を見た。


「金を払った奴に」


五人は再び進み始めた。


旗もなく。


紋章もなく。


道さえ使わず。


ラリオンは一人を失った。


積荷の一部も失った。


襲撃者側も二人を失い、さらに一人が生きたまま捕らえられた。


そして、その両者のあいだに潜む誰かは、すでに荷車には積めないものを受け取っていた。


答えを。

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