エピソード64 空っぽの通り
ミルサはパンを焼きすぎた。
小麦粉の量を間違えたわけではない。
昨日も、一昨日も、それまでのほとんどの朝も、同じ量の生地をこねていた。
だが最初のパンが窯から出ても、扉の前で待っている者はいなかった。
普段なら、最初に来るのは子供たちだった。
パンを買いに来る子もいた。
パン屋のそばが暖かく、頼めばパンの皮の切れ端ももらえるから来る子もいた。
今日は敷居が空のままだった。
ミルサは掌を前掛けで拭き、暗い布に二本の白い筋を残してから、通りを覗いた。
向かいの野菜売りの鎧戸は閉じたままだった。
少し先では、男が鎧戸を開け、左右を見てから、また閉じた。
井戸のそばにいたのは二人の女だけだった。
二人とも水を汲むと、立ち話もせずに去っていった。
ミルサは窯へ戻った。
「まあ、いい」
一番近くにあったパンの皮を、指で軽く叩いた。
「私たちだけで食べてやる」
扉が開いた。
長い灰色の外套を着た女が、急いでパン屋へ入ってきた。
ミルサはその女を知っていた。
名前までは覚えていなかったが、普段パンをいくつ買うかは知っていた。
「六つ」
ミルサは女を見た。
「何が六つ?」
「パン」
「昨日は二つだった」
「今日は六つ必要なの」
女は台の上に硬貨を置いた。
ミルサはそれに触れなかった。
「何のために?」
女は扉を見た。
「東の道が閉じられるって聞いた」
「誰が言っている?」
「みんなよ」
「私も町の人間だけど、そんなことは言っていない」
「ミルサ」
女はさらに身を寄せた。
「昨日、町の若者が喉を切られて家へ運ばれたのよ」
ミルサは手を拭くのをやめた。
「知っている」
「なら六つちょうだい」
ミルサは女の前にパンを二つ置いた。
「二つ」
「六つ分払うわ」
「私は二つだけ売る」
「そんな権利はないでしょう」
「窯が私のものであるうちは、ある」
女が言い返そうとしたが、ミルサはパンをさらに近くへ押した。
「夕方にまた来な。残っていれば、もう少し渡す」
「残っていなかったら?」
「同じように怖がっていた誰かが食べたってことだ」
女は二つのパンを取った。
硬貨はすべて置いたままにした。
ミルサは二つ分だけを取り、残りを押し返した。
「恐怖の分まで上乗せはしない」
女は何も言わなかった。
扉が閉じた後も、ミルサは数秒間そこを見ていた。
それから棚へ行き、パンをもう一度数えた。
まだ多かった。
今のところは。
パン屋から路地を二つ隔てた先で、小さな家の扉が開いたままになっていた。
壁際には干しリンゴの入った籠が置かれていた。
昨日、その家の女主人は商いに出なかった。
今日も同じだった。
ショーンゴは敷居の前で止まった。
サルマは通りに残った。
「私はここで待つ」
ショーンゴは頷き、一人で中へ入った。
部屋には、冷たい水と布、それに、洗い流しきれなかった血の匂いが残っていた。
若い見張りの遺体は低い台の上に横たえられていた。
母親がそのそばに座っていた。
泣いてはいなかった。
膝の上には濡れた布があった。
女は、もう血の跡などほとんど残っていない息子の指を、ゆっくりと拭いていた。
ショーンゴはそれ以上近づかなかった。
女は、誰が入ってきたか分かっていた。
顔さえ向けなかった。
「この子が死ぬところを見た?」
「いや」
布を持つ手が止まった。
「よかった」
ショーンゴは黙っていた。
「なぜ、よかったんだ?」
今度は女が彼を見た。
目は乾き、赤くなっていた。
「なら、自分の目で見てもいないことを、私に語らずに済むから」
「レルタは見ていた」
「なら、いつかあの子から聞く」
女は再び布で息子の指に触れた。
「今日ではなく」
ショーンゴは視線を落とした。
少年はもう血に染まったシャツを着ていなかった。
誰かが清潔な暗い色の上着に着替えさせていた。
首は布で覆われていた。
母親が言った。
「この子は石の窪みに立っているはずだったと聞いた」
「そうだ」
「それなのに、自分で出た」
「そうだ」
「出るなと命じられていた?」
「そうだ」
女は手の中の布を握りしめた。
「なら、お前がこの子を死なせるために送り出した、などとは言わないで」
「言わない」
「お前のために死んだとも言わないで」
「言わない」
女は息子を見た。
「ラリオンのためとも」
ショーンゴは少し黙った。
「彼は自分の体で、もう一人の捕虜へ向かう道を塞いだ」
女は目を上げた。
「見ていた人たちが、そう言ったの?」
「そうだ」
「なら、その通りに記録して」
「そう記録する」
女は頷いた。
ショーンゴは扉へ向き直った。
「ショーンゴ」
彼は止まった。
「お前が正しいことをしたのか、間違ったことをしたのか、私には分からない」
彼は黙っていた。
「でも、お前の決断でまた誰かが死んだ時は、その母親のところへ用意した言葉を持っていかないで」
ショーンゴは肩越しに振り返った。
「用意した言葉は持っていかない」
「それでいい」
女は再び布を取った。
ショーンゴは外へ出た。
通りには、先ほどより多くの人が立っていた。
誰も家へ近づかなかった。
人々と扉のあいだには、数歩分の空白が残されていた。
サルマは壁際で待っていた。
ショーンゴが出てくると、向かいにいた男の一人が、聞こえるように言った。
「ラリオンになる前は、よその書状のせいで息子たちが家へ運び戻されることなんてなかった」
隣にいた女が男へ向いた。
「ラリオンになる前は、人は連れていかれて、二度と運び戻されることすらなかった」
「お前に話したんじゃない」
「私はあんたに話している」
ショーンゴは足を止めなかった。
男は一歩前へ出た。
「何も言うことはないのか?」
ショーンゴは男を見た。
「ある」
人々が静かになった。
「だが、ここは俺の家ではない」
彼は開いた扉の方へ顎を向けた。
「ここでは話さない」
男は顎を強ばらせた。
部屋の中から母親の声が響いた。
「私の息子のそばでは話さないで」
それで十分だった。
ショーンゴとサルマは先へ進んだ。
昼までに、通りから静けさは消えた。
恐怖が去ったからではない。
ただ向きを変えただけだった。
ミルサのパン屋の前には、列が角を曲がるほど多くの人が集まっていた。
棚には、朝焼いたパンの三分の一が残っていた。
ミルサはもう、なぜ四つや五つ欲しいのかとは尋ねなかった。
ただ二つだけ置いた。
「次」
「四つくれ」
「二つ」
「子供が三人いるんだ」
「昨日も三人いた」
「昨日は、レヴェンガルドが道を閉じるなんて話はなかった」
ミルサは目を上げた。
「誰が閉じると言った?」
男は後ろのどこかを指した。
「みんな知っている」
「今日聞いた中で一番ひどい情報源だね」
列の誰かが小さく笑った。
だが列の後ろから声が上がると、その笑いはすぐに消えた。
「小麦粉倉庫には、もうほとんど残っていないぞ!」
何人かが顔を向けた。
ミルサは動きを止めた。
「誰が言った?」
返事はなかった。
代わりに別の誰かが続けた。
「数日分しか残っていないらしい!」
列は列ではなくなった。
人々はそこから抜け、倉庫の方へ動き始めた。
ミルサは台を掌で叩いた。
「止まりな!」
誰も止まらなかった。
ミルサは悪態をつき、前掛けを外して後を追った。
中央倉庫の前には、すでに数十人が集まっていた。
ラデムが扉の前に立っていた。
ランゼは通路を塞がないよう、左側の庇の下に立っていた。
ラデムは、数を書きつけた木の板を太い指で握っていた。
背後には小麦粉、穀物、塩の袋が見えていた。
「下がれ」
人々は聞かなかった。
「下がれと言った」
「倉庫を開けろ!」
「開いている」
「なら、どれだけあるか見せろ!」
ラデムは板を上げた。
「今、それをしている」
「小麦粉は三日分しかないって聞いたぞ」
ラデムは最前列の男を見た。
「誰が言った?」
「お前が数えているところを見た奴がいる」
ラデムは自分の手に目を落とした。
指を動かした。
「そいつが見たのは、俺の指だ」
彼は板を上げた。
「数字はここにある」
誰かが短く笑った。
だが今度は、緊張が和らぐことはなかった。
扉のそばの男が一歩近づいた。
「一袋必要なんだ」
「駄目だ」
「金は払う」
「駄目だ」
「お前の小麦粉じゃないだろう」
「お前のものでもない」
男は一番近い袋へ手を伸ばした。
盾の下端が石を打った。
ランゼが男と扉のあいだに立った。
「触るな」
男は手を引いた。
「今度は食べ物まで俺たちから隠すのか?」
ランゼは背後の開いた扉を見た。
「どこに隠している?」
男は答えなかった。
「下がれ」
「嫌だ」
後ろにいた誰かが、最初の男を押した。
男は盾にぶつかった。
すぐに振り返り、後ろにいた者を殴った。
拳が頬に当たった。
列は一瞬で崩れた。
後ろへ下がる者がいた。
反対に前へ押し進む者もいた。
一人の女が肩を壁に押しつけられ、叫んだ。
ミルサが人々を押し分けて近づいた。
「お前たち、本当に正気をなくしたのかい!」
袋のそばの男が、再び前へ手を伸ばした。
ランゼはその手首を掴んだ。
殴りはしなかった。
ただ先へ進ませなかった。
「離せ!」
「下がれ」
「俺たちの食べ物だ!」
「だからこそ、お前一人には持っていかせない」
押し合いは右へ広がった。
一人が口の開いた袋に引っかかった。
袋が傾いた。
ミルサが前へ飛び出し、ラデムと二人で倒れる寸前の袋を支えた。
少量の小麦粉が石の上へこぼれた。
ミルサは下を見た。
それから人々を見た。
「今、お前たちが食べているのはこれだ」
人々が静かになった。
彼女は小麦粉で真っ白になった掌を上げた。
「床だよ」
誰も答えなかった。
ミルサは袋をまっすぐ立て直した。
「もう一袋破ったら、明日は石を焼いて食わせるよ」
「ミルサ、俺たちは食べ物が残るのか知りたいだけなんだ」
彼女は声の方へ向いた。
「私も知りたい」
「なら、なぜ持っていかせない?」
「全員が一袋ずつ家へ持ち帰ったら、明日は熱い窯だけが残って、中に入れるものが何もなくなるからだよ」
サルマが倉庫へ近づいた。
その後ろにはショーンゴがいた。
人々はすぐには二人に気づかなかった。
最初に黙ったのは、ランゼの盾のそばにいた男だった。
それから他の者たちも静かになった。
ショーンゴは石の上の小麦粉を見た。
一人の男の切れた唇を見た。
壁際で肩を押さえている女を見た。
まだ男の手首を掴んでいたランゼの手を見た。
「離せ」
ランゼは手を離した。
男はすぐに下がった。
サルマはラデムへ近づいた。
「どれくらいある?」
彼は板を差し出した。
彼女は素早く読んだ。
「小麦粉は三日分よりは多い」
人々がざわめいた。
群衆の中から声が上がった。
「道はどうなんだ?」
ショーンゴが答えた。
「セイガが東の道を確かめている。戻るまでは、閉じられたという確証はない」
唇を切った男が、袖で血を拭った。
「戻ってきて、道が閉じられていると言ったら?」
「その時になれば、何を決めるべきかが分かる」
「手遅れになったら?」
誰よりも先にミルサが答えた。
「今日、倉庫の中身を家へ運び出したら、夕方にはもう手遅れだ」
何人かが目を伏せた。
サルマは倉庫の扉へ進んだ。
「再確認が終わるまで、ここから袋ごと持ち出すことは禁止する」
群衆が再び話し始めた。
サルマは手を上げた。
「パン屋には通常どおり支給する。先々の分まで買いだめすることは認めない」
誰かが叫んだ。
「俺たちはどうすればいいんだ!」
ミルサは自分を指した。
「パンを買う」
「欲しいだけ買えるのか?」
「昨日まで買っていた数だけだ」
群衆から不満の声が聞こえた。
ミルサは退かなかった。
「何年も一つだけ買ってきたのが誰か、いつも二つ買うのが誰か、自分でこねるのが面倒な時だけ来るのが誰か、私は全部知っている」
壁際の男が呟いた。
「パン屋の独裁だ」
ミルサは彼を見た。
「一番恐ろしいやつだよ」
今度は、より多くの人が笑った。
ランゼさえ目を伏せ、短い笑みを隠した。
緊張は消えなかった。
だが、人々を前へ押す力ではなくなった。
ショーンゴが言った。
「ラデム」
老いた勘定係は彼を見た。
「全部、もう一度数えろ」
「もう数えた」
「皆の前で」
ラデムは数秒間ショーンゴを見た。
それから頷いた。
彼は倉庫へ入り、白墨を持って戻ってきた。
ラデムは最初の袋に白い線を引いた。
二つ目にも、もう一本引いた。
人々は立ったまま見ていた。
ショーンゴを見ていたのではない。
袋を見ていた。
一つ。
二つ。
三つ。
ラデムは声に出して数えた。
一列を数え終えると、次の列へ移った。
もう誰もランゼの横を通ろうとはしなかった。
最初に袋へ手を伸ばした男が、ショーンゴを見た。
「お前が俺たちを標的にした」
ショーンゴは否定しなかった。
「そうだ」
辺りが静かになった。
男は明らかに別の答えを待っていた。
「それだけか?」
「いや」
ショーンゴは人々を見た。
「だが、ラリオンになっても何も変わらなかった、などと嘘はつかない」
「そのせいで、奴らはまた来る」
「来ようとするだろう」
群衆の中で誰かが低く悪態をついた。
男は拳を握った。
「なら、俺たちに何を言う?」
ショーンゴは扉のそばにこぼれた小麦粉を見た。
「今日、お前たちは誰も出所を言えない噂のために、互いの食べ物を奪いかけた」
誰も答えなかった。
「今日、お前たちは一つの噂に動かされた」
彼は倉庫の前の人々を見た。
「そして、それを誰が流したのか、俺たちはまだ知らない」
サルマは何も付け加えなかった。
ミルサは胸の前で腕を組んだ。
唇を切った男は目を逸らした。
通りの奥から、誰かが倉庫へ向かって歩いてきた。
人々が道を開け始めた。
若い見張りの母親が、空の籠を抱えていた。
普段なら干しリンゴが入っている、あの籠だった。
女の家の扉は開いたままだった。
中にはもう人々が集まっていた。
彼女はショーンゴを見なかった。
サルマも見なかった。
群衆のあいだを通り、ミルサの前で止まった。
「パンはまだある?」
ミルサは数秒間黙った。
「ある」
「一つ」
「二つ渡す」
「一つ」
ミルサは頷いた。
「行こう」
二人はパン屋へ戻り始めた。
女は数歩進んでから止まった。
「ミルサ」
「何?」
「代金は払う」
「私は何も言っていない」
「顔が言っていた」
ミルサは鼻から息を吐いた。
「分かった」
女は再び歩き出した。
群衆はその背中を目で追った。
もう誰も袋を要求しなかった。
ラデムは数え続けた。
パン屋で、ミルサは女の前にパンを一つ置いた。
女は台に硬貨を一枚置いた。
多くもなく。
少なくもなく。
「明日も開ける?」
ミルサは鼻を鳴らした。
「窯が夜のあいだに逃げなければね」
女は初めて、わずかに笑った。
唇の片端だけで。
それからパンを持って出ていった。
夕方になっても、通りは以前のようには戻らなかった。
だが、向かいの野菜売りの鎧戸が一枚、再び開いた。
井戸のそばには、二人ではなく三人が立ち止まった。
その日初めて、誰かが子供を水汲みに出した。
ミルサはパンのほとんどを売った。
六つずつではない。
四つずつでもない。
噂に怯える前まで、人々がいつも買っていた数だけ。
外が暗くなり始めると、彼女は鎧戸へ手をかけた。
倉庫へ水を運ぶ手伝いをしていた少年が、通りで立ち止まった。
「ミルサ」
「もう閉めるよ」
「パンを買いに来たんじゃない」
彼女は鎧戸を半分開けたままにした。
「何?」
少年は周囲を見回した。
「昨日の捕虜は、町の人たちに殺されたって本当なのか?」
ミルサの手が木の戸の上で止まった。
「何だって?」
「東通りじゃ、あの捕虜は話し始めたあと、死体で見つかったって話になってる」
「誰が言っている?」
少年は肩をすくめた。
「みんな」
ミルサはゆっくりと鎧戸を開き直した。
少年の背後では、すでに二人が身を寄せ、何かを囁き合っていた。
ミルサには言葉までは聞こえなかった。
だが数秒後、もう一人が役所の方を振り返った。
通りは再び静かになった。
ただし今度は、人々は家の中へ隠れていなかった。
小さな集まりを作り、互いに話していた。




