↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/77

エピソード50 窓のない保管室

鍵はすぐには鍵穴に入らなかった


サルマは鍵をまっすぐ握っていた


だが扉の鉄が

自分が誰に従うべきか思い出したがらないようだった


窓のない保管室の前には五人が立っていた


サルマは錠のすぐそば

オルデクはサルマの半歩左に立ち

すでに自分が見るものを恐れている顔をしていた

ベレンはその後ろに立っていた

ランゼは右肩のそばに盾を構えていた

デランは少し後ろにいて

この夜で初めて硬貨を回していなかった


彼らの背後の中庭で

人々は散らずにいた


ケルトとエンナは開かれた本のそばに残っていた

町名オルヴェンの下の空白の行は

ページの上で静かに立っていた

波の上に立つ三つの塔の紋章は

灰色の境界の向こう側に残っていた


動いてはいなかった


だが消えてもいなかった


- 開けて

サルマが言った


オルデクは扉に触れなかった


- 中に白い記録があるなら

- 急な動きで記録が起きるかもしれない


ランゼが彼を見た


- 今それを思い出したのか


- 違う

オルデクは答えた

- 今 黙るのをやめたんだ


サルマは鍵をさらに深く差し込んだ


- なら誰かがあなたの記憶の代価を払う前に話して


オルデクは息を飲んだ


- 扉は押すな

- 最初の音が鳴ったら待て

- 何かが擦れる音を立てても 声で答えるな

- 本が勝手に開いても 最初の行を声に出して読むな


デランが低く息を吐いた


- 素晴らしい保管室だ

- ほとんど親切だな


サルマは鍵を回した


錠が鳴った


一度


それから二度


内側からまた紙擦れの音がした


大きくはない


速くもない


まるで多くのページが暗闇の中で一斉にめくれ

すぐに止まったようだった


サルマは扉を押さなかった


待った


ランゼも動かなかった


オルデクは目を閉じて呼吸を数えていた


ベレンは錠を見ていなかった


鉄の留め具についた古いレヴェンガルドの印章を見ていた


その下には外部の卓の紋章が引っかかれていた


波の上に立つ三つの細い塔


印章ではない


手でつけた痕だった


まるで誰かが表立って印を置く権利を持たず

それでも仲間には分かってほしかったかのように


- 誰が彫ったの

サルマが聞いた


オルデクは目を開けた


- 私じゃない


ランゼはベレンへ顔を向けた


ベレンは扉から目を逸らさなかった


- 俺でもない


デランは唇だけで笑った


- 今日はみんな無実だな

- 扉が自分で自分に印をつけただけか


サルマはようやく扉を自分の方へ引いた


ゆっくりと


古い蝶番が三度きしむほどゆっくりと


扉の向こうに暗い通路はなかった


部屋があった


低く

乾いていて

窓がなかった


棚はすべての壁に沿って立っていた


そこには白い表紙の本が並んでいた


題名は一つもない


番号も一つもない


背表紙に印章もない


ただ無垢な白い素材だけがあり

それはまだ紙になるのか皮になるのか決めていないように見えた


デランが一歩下がった


- これはもう好きになれないな


オルデクが囁いた


- 本来あるべき数より多い


サルマはゆっくり彼へ顔を向けた


- あるべき数っていくつ


オルデクは黙っていた


ランゼが一歩近づいた


- 答えろ


オルデクは棚を見た


- 二冊

- 多くても三冊

- 役所の引き継ぎ用

- 非常時の記録用

- 古い本を失った時のため


サルマは鍵を持ち上げた


- ここには三冊じゃない


棚には何十冊もあった


百ではない


だが「予備」という言葉が

意味を失うには十分だった


ベレンがようやく言った


- これは予備じゃない


その声は鈍かった


- 順番待ちだ


背後の中庭で人々はそれを聞いた


誰かがすすり泣いた

誰かが罵った

誰かが一歩前へ出た


ランゼは振り返りもしなかった


ただ盾の縁を石に打ちつけた


鈍く


- 止まれ


人々は止まった


古い権力に従ったからではない


今はもう分かっていたからだ


余計な一歩が

他人の記録の一部になり得ると


染工場では

ショーンゴがちょうど染料の部屋を出るところだった


前を行くセイガは

乾いた板で通路に残る青い糸を脇へ払っていた


レルタは白い布紐をまっすぐに運んでいた

折り畳まず

青いものに触れさせずに


メラは少女のそばを歩いていた

少年は妹の手を握っていた

リオルはその後ろを歩き

彼女の呼吸に他人のリズムが戻ってこないか聞いていた


ミロスはタルヴェンを横に連れていた


前ではない


後ろでもない


彼がまだ必要であることを

そしてまだ自由ではないことを

誰にでも見える位置だった


ショーンゴは最後を歩いていた


腕はまだ肘まで冷えていた

指は遅れて従った


彼は自分の腕を見なかった


弱さを敵に隠す必要があるなら

味方にまで見せる必要はない


それでもセイガは気づいた


- 最後まで押さなかった

彼は低く言った


ショーンゴは歩みを緩めなかった


- 押していたら 少女を連れて出られなかった


- 彼女なしなら


ショーンゴは彼を見た


セイガは目を伏せた


- 分かった


タルヴェンは黙って歩いていた


静かすぎた


ショーンゴはそれを聞いた


- お前が恐れているのは染工場じゃないな


タルヴェンは答えなかった


ミロスが縄を締めた


- 答えろ


タルヴェンは出口の方を見ていた


- 保管室だ


- なぜ


- 染工場はすでに連れてこられた者を留めていた

- 保管室は

- まだ選ばれてさえいない者を留めている


メラがゆっくり顔を向けた


- そこには子どもの名前があるの


- 名前のための場所があるかもしれない

タルヴェンが言った

- その方が悪い


少女は兄の手を強く握った


彼女はまだ話していなかった


そして誰も話すよう強いていなかった


それはこの夜で初めて

命令を必要としない正しい判断だった


中庭では

サルマが開かれた保管室の前に立っていた


中には入らなかった


- オルデク

彼女は言った

- この本をそのまま運び出したらどうなるの


オルデクは白い表紙を見た


- 分からない


サルマが彼へ一歩近づいた


- 今日はその言葉で済ませられる日じゃない


- もし空なら運び出せる

- もしすでに行を待っている本なら

- 最初に開いた者を取るかもしれない


デランは首を傾けた


- つまり本も腹を空かせているのか


オルデクは彼を見なかった


- 本は空だ

- 腹を空かせているのは

- そこに残された場所だ


中庭からエンナが

これまでより大きな声で言った


- 保管室の中で開かないでください


全員が彼女を見た


彼女は干上がった水盤のそばで

開かれた本の横に立っていた

指はページの上に置きながら

触れてはいなかった


- ここでは 誰かが本に近づくと行が反応します

- もしあそこにあるのが白紙の帳簿なら

- 閉じたまま運び出すべきです

- 一冊ずつ

- 人々の前へ


ケルトが彼女を見た


- 確信はあるのか


エンナはすぐには答えなかった


- ありません

- でも暗闇の中で開けば

- 何を取られたのかさえ見えません


サルマはランゼを見た


- 一冊ずつ


ランゼは頷いた


- 俺が最初の一冊を運ぶ


オルデクが鋭く言った


- お前ではない


ランゼはゆっくり彼へ顔を向けた


- なぜだ


オルデクは青ざめた


- お前はアーチに立っている

- 人々はお前を境界として見ている

- 本がお前の役割を取れば

- 得るのは名前ではない

- 中庭の秩序の中での場所だ


ランゼはすぐには答えなかった


やがて盾を自分の前の石に下ろした


- なら誰だ


ベレンが一歩前へ出た


- 俺が


サルマはほとんど即座に言った


- 駄目


ベレンは怒らなかった


- そこに俺の印があるなら

- 最初の一冊は俺が運ぶべきだ


- だからこそ駄目

サルマが言った

- きれいな一つの仕草で許しを得られると思わないで


ベレンはその一撃を黙って受け入れた


デランが低く口笛を吹いた


- 今のは硬貨より高かったな


サルマは彼を見なかった


- オルデクが最初の一冊を運ぶ

- どこに触れないべきか知っている


オルデクが震えた


- もしそれが私を取ったら


- その時は全員が見る

サルマが言った

- 今度はあなたが紙の中に消えることはない


オルデクは長く彼女を見た


それから頷いた


彼は保管室へ入った


一歩


二歩


三歩


棚は動かなかった


本は開かなかった


だが部屋の空気はさらに乾いた


オルデクの唇にひびが入るほど乾いていた


彼は最も近い棚に近づいた


一番上の本は取らなかった


まっすぐ置かれた本も取らなかった


彼が選んだのは

少し前へ出ていた一冊だった


まるで誰かが一度取り出そうとし

思い直したかのように


オルデクは袖の端を本の下へ差し込んだ


素手ではない


ゆっくりと引き出した


本は軽かった


町一つぶんの重さを持ち得るものにしては

軽すぎた


彼がそれを中庭へ運び出すと

人々は自分から下がった


サルマが手を上げた


- 誰も名前を言わない


エンナはすでに干上がった水盤のそばに立っていた


- ここに置いてください

- 開かれた本の隣に

- その上ではなく


オルデクは本を石の上へ置いた


白い表紙は動かなかった


ケルトがゆっくり身をかがめた


- 開くか


エンナはサルマを見た


サルマは頷いた


- あなたが開ける

- でも何か起きたら

- ランゼが盾であなたをかばう


ランゼは黙って盾を上げた


エンナは笑わなかった


- 分かりました


彼女は干上がった水盤のそばにあった細い木の棒で

表紙の端を引っかけた


本が開いた


一ページ目は白かった


空白ではない


白かった


その白さは

目が輪郭を保てないほどだった


やがてそこにゆっくり一行が浮かんだ


黒ではない


青でもない


灰色だった


町名オルヴェン


その下にもう一つの行


空白


さらにその下に


波の上に立つ三つの塔の小さな印


人々はそれを見た


そして今度の恐怖は叫びではなかった


記憶を持つ沈黙だった


これはもう一つの桶ではなかった

一本の布紐でもなかった

一人の少女でもなかった


これは本だった


まっさらな本が

自分がどの町を待っていたのか

すでに知っていたのだ


染工場で

ショーンゴは出口のそばで足を止めた


ページは見えていなかった


だが彼が置いた灰色の境界が

突然 手の中で冷たい衝撃となって返った


強くはない


正確だった


まるで向こう側の誰かが

同じ線に触れたかのように


ショーンゴはゆっくり指を握った


指は本来よりも鈍く従った


レルタが振り返った


- 何か起きたの


- 彼らが最初の本を開いた


タルヴェンは鋭く彼を見た


- 感じたのか


ショーンゴは答えなかった


タルヴェンはさらに青ざめた


- なら境界は本当に記録になった


セイガが首を傾けた


- それは良いことか 悪いことか


タルヴェンは出口を見た


- 今の俺たちにはいい

- 印を待っていた者たちには とても悪い


ショーンゴは再び歩き出した


- なら奴らは早く来る


メラは少女をよりしっかり支えた


- 誰が


- 空白の行が空白でなくなることを嫌う者たちだ


中庭で

エンナはページに触れていなかった


灰色の行は動かなかった


紋章は境界を越えなかった


ケルトが息を吐いた


- こいつは俺たちを取らなかった


オルデクは本を見ていた


- もう境界が立っているからだ


サルマはゆっくりベレンへ向き直った


- こういう本はあと何冊


ベレンは保管室を見た


- 棚がすべて埋まっているなら


彼は言い終えなかった


必要なかった


人々は彼の顔に答えを見た


サルマが声を上げた


- この瞬間から

- どの本も証人なしには開けない

- どの印章も人々なしには押さない

- どの名前も

- それが誰に仕えるものか分かるまで声に出して読まない


彼女の声は権力の声ではなかった


それでもこの夜で初めて

秩序のように響いた


ランゼは人々を見た


- 本の印を見た者は


最初は誰も答えなかった


やがてアーチのそばの老人が手を上げた


- 見た


その次に別の女が


- 私も


さらに一つの声


- 見た


そしてまた


- 俺も


ケルトは空の紙を取った


- 証人を記録する


サルマが鋭く彼を見た


ケルトは動きを止めた


そして自分で理解した


- 名前じゃない

彼は言った

- 数

- 場所

- 何を見たか


エンナが頷いた


- それぞれが安全な時に

- 自分で名乗ればいい


サルマはゆっくり鍵を下ろした


- いい


ベレンは黙ってそれを見ていた


言うことがなかったからではない


古い秩序が初めて

彼なしに動き


それでも崩れなかったからだった


デランが彼へ身を寄せた


- 痛いか


ベレンは見なかった


- ああ


- いいことだ

デランが言った

- まだ生きてるってことだからな


ベレンはわずかに震えた


染工場で

ショーンゴは夜の空気へ出た


染料の部屋のあとでは

乾燥穴のそばに残る古い湿り気の匂いさえ

清く感じられた


前方には役所へ向かう道が暗く伸びていた

背後には染工場が残っていた

その内側ではまだ布紐が擦れていた


大きくはない


弱く


まるでその場所が

最初に語る権利を失ったかのように


少女は敷居のそばで止まった


彼女は振り返った


少年も振り返った


メラは急がせなかった


リオルが低く言った


- 声が戻ってきている


少女は口を開いた


全員が強張った


だが彼女は自分の名を言わなかった


ただ一つだけ言った


- ありがとう


青い糸は戻らなかった


レルタの手にある白い布紐も動かなかった


ショーンゴは少女を見た


- 名はあとで言え

- それがもう一度お前のものになってから


少女は頷いた


少年は声もなく泣いた


役所の中庭では

サルマ オルデク ベレン ランゼ デランが

再び開かれた窓のない保管室の前に立っていた


扉は開いたままだった


鉄の留め具には古いレヴェンガルドの印章があった


その下には

誰かがずっと前に同じ紋章を引っかいていた


波の上に立つ三つの細い塔


サルマが手を上げた


そして彼女がオルデクへ合図を出すより早く

内側から紙擦れの音がした


まるで闇の中で

ページが勝手にめくられたように


二冊目の白い本が

ゆっくり前へせり出した


そしてそのまっさらな表紙に

古いレヴェンガルドの印章が浮かんだ


外部の卓の紋章の隣に

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。