エピソード48 声を記憶する染料
青い桶はショーンゴの顔を映していなかった
その深みにあったのは役所の中庭だった
白い行のある本が干上がった水盤のそばに置かれていた
その隣でエンナがページを押さえていた
ケルトが記録の上に身をかがめていた
サルマは鍵を手に立っていた
ランゼはアーチのそばに立っていた
オルデクとベレンは
そのページが足元に穴を開けていくのを見るように
見つめていた
映り込みは静かだった
だが死んではいなかった
中庭で誰かが動くと
染料の表面が少し遅れて震えた
まるで染工場が中庭をただ見ているのではなく
それを真似ることを学んでいるようだった
タルヴェンが囁いた
- 長く見るな
ショーンゴはすぐには目を逸らさなかった
- 理由は
- 桶は今あるものを映しているんじゃない
タルヴェンが言った
- 確認として受け取れるものを探している
セイガはショーンゴの右に立った
彼は青い円をまっすぐ見なかった
染料が古い金属に触れる縁だけを見ていた
- 桶から糸が出ている
彼は言った
- 床を通ってじゃない
- 布紐を通っている
レルタは染料の部屋の入口に立っていた
彼女の短刀の刃は光っていなかった
青い光が鋼に触れたがらないようだった
メラは少年を敷居のそばで押さえていた
彼は桶を見ていなかった
見ていたのは
さっき子どもの声が聞こえた
右側の闇だった
リオルがゆっくり手を上げた
- 生きた息は桶の中じゃない
- その奥だ
- もっと低い
少年が半歩踏み出した
メラが手で止めた
- 私たちより前へ出るな
- あそこにいる
彼は囁いた
- かもしれない
メラが言った
- だからこそ 声を渡すな
今度は少年が自分で口を手で塞いだ
ショーンゴはそれを聞いた
だが振り返らなかった
今は一つ一つの動きに代価があったからだ
部屋の中央には古い桶が三つ立っていた
一つ目は青く光っていた
二つ目は暗かった
だがその縁には乾いた緑の染料がこびりついていた
三つ目は空だった
水がないのではない
色だけが空だった
そこにはまだ何の色も与えられていなかった
だからこそ青い桶を見るより悪かった
タルヴェンは三つ目の桶を見て目を伏せた
ショーンゴは気づいた
- 白か
タルヴェンは答えなかった
- 毎回お前から言葉を引きずり出させるな
タルヴェンは息を吐いた
- 白い桶は染めない
- 印を押す者の色を受け入れる
ミロスがタルヴェンの手の縄を締めた
- つまり所有者を待っているのか
- 権利を待っている
タルヴェンが言った
- 所有者はそのあと来る
役所の中庭で
エンナは自分が桶から見られていることを知らなかった
だが目の前のページの端が突然暗くなった
彼女は手を引いた
- また動いた
オルデクが一歩近づいた
- 触るな
ケルトはすでに両手で帳簿を押さえていた
- 町名オルヴェンの下の白い行が深くなった
サルマは干上がった水盤のそばの人々を見た
- 全員 一歩下がって
群衆はすぐには下がらなかった
ランゼが盾の縁を石に打ちつけた
鈍く
恐れさせるためではない
境界を作るために
- 下がれ
彼は言った
- 本にお前たちの影を取らせるな
その言葉のあと
人々は下がった
遠くではない
一歩だけ
だがそれで白い行がさらに暗くなるのは止まった
アーチのそばでデランが低く鼻を鳴らした
- 一歩が硬貨より高いところを初めて見た
サルマは笑わなかった
- ならその値を覚えておきなさい
染工場では
セイガが最初に変化に気づいた
青い桶の表面が震えた
中庭の映り込みが少し遠くなった
- 彼らが本から離れた
彼は言った
- それで桶は足掛かりを失った
ショーンゴは頷いた
- つまり言葉だけを取るわけじゃない
- 位置も取る
タルヴェンが彼を見た
- 距離
- 影
- 接触
- 視線
- 存在として記録できるものすべてだ
レルタが低く言った
- 素晴らしい仕組みね
- 立つ場所を間違え 見る場所を間違えれば
- それでもう自分の罪になる
タルヴェンは否定しなかった
リオルが突然 右の壁へ顔を向けた
そこには二列の白い布紐のあいだに
厚い布が吊られていた
かつては乾燥棚を覆っていたのだろう
今は濡れていた
部屋の中に雨などないのに
- あの向こうだ
リオルが言った
少年が震えた
メラは彼の前に立った
ショーンゴはレルタを見た
彼女はもう動いていた
布へまっすぐではない
青い桶を左から回り込み
セイガが先ほど埃をずらした壁際に寄って進んだ
セイガは彼女の前を板の破片でなぞった
乾いた帯が
彼女の足元と
桶から白い布紐へ伸びる細い青い糸とのあいだに落ちた
糸は消えなかった
だが横へ退いた
レルタは濡れた布のところまで行った
- 子どもがいるなら開ける
タルヴェンが鋭く言った
- 急にするな
レルタは手を止めた
- ではどうする
タルヴェンは青い桶を見た
- 布は声を保っているかもしれない
- 引き剥がせば 先に出るのは声だ
- 人ではない
リオルが一歩近づいた
- 生きた息がある
- でもそのそばの声は本人のものじゃない
ショーンゴは少年を見た
- 妹の名は言うな
少年はすぐに頷いた
目は濡れていたが
口は閉じたままだった
メラは彼へ身を寄せた
- よし
小さな声だった
けれど彼にとっては命令より重かった
ショーンゴはレルタへ視線を戻した
- 下から開けろ
レルタはしゃがんだ
短刀の柄で布の端をすくった
刃ではない
布がゆっくり持ち上がった
そこから冷たい水と古い染料
そして人の恐怖の匂いが流れ出した
布の向こうにあったのは部屋ではなかった
壁と桶のあいだにある狭い空間だった
そこに少女が座っていた
小さく
青白く
両手を胸に押しつけていた
首には文字のない白い布紐がかかっていた
手首には緑の布紐
そして唇のそばには
皮膚にほとんど触れないほど近く
細い青い糸が伸びていた
彼女は少年を見ていた
だが彼の名を言わなかった
少年が震えた
- あいつ
メラが最後まで言わせる前に口を塞いだ
乱暴ではない
間に合った
少女はゆっくりと自分の唇に指を当てた
静かに
彼女も分かっていた
リオルが息を吐いた
- 生きている
その言葉は大きくなかった
けれど少年はそれだけで崩れそうになった
メラが支えた
ショーンゴが一歩近づいた
少女の唇のそばの青い糸が張った
タルヴェンがすぐに言った
- 彼女が自分の名を言えば 白が埋まる
- こちらが彼女の名を呼んでも
セイガが続けた
- 同じだ
レルタは少女のそばに立っていた
短刀は手にあったが
この夜で初めて それは役に立つものに見えなかった
- 糸を切るか
タルヴェンは首を振った
- 口元の青い糸が掴んでいるのは体じゃない
- 返答だ
ショーンゴは少女の前にゆっくりしゃがんだ
近すぎない
青い糸が動かない距離で
少女は大きく見開いた目で彼を見ていた
そこに空白はなかった
ただ疲れ
恐怖
そしてまだ奪われきっていない意地の残りがあった
ショーンゴは低く言った
- 自分の名を言うな
少女はかすかに頷いた
- 彼の名も言うな
彼女はまた頷いた
メラの背後で少年は
両手で彼女の袖を握っていた
ショーンゴは少女の首にある白い布紐へ視線を移した
- これを外すには何が要る
タルヴェンは黙っていた
ミロスが彼の耳元へ身を寄せた
- 質問は聞こえただろう
タルヴェンは脅しに反応しなかった
彼は少女を見ていた
そして初めて
その沈黙は策略ではなかった
彼自身が知っていることへの嫌悪だった
- 他者の返答が要る
彼は言った
- 誰かが彼女の代わりに確認しなければならない
レルタが顔を向けた
- つまりまた犠牲か
- 違う
ショーンゴが言った
彼は青い桶へ目を上げた
役所の中庭の映り込みの中で
オルヴェンの下の白い行がまた暗くなっていた
人々は本から離れた
だが繋がりは消えていなかった
染工場は
掴むものを探していた
ショーンゴはゆっくり手を伸ばした
少女へではない
空の桶へ
色を持たない桶へ
タルヴェンが鋭く身を揺らした
- 白に触るな
ショーンゴは縁の上で指を止めた
- 触らない
手に冷えが戻った
橋のあとと同じもの
青い埃の中の名のあとと同じもの
だが今回は
それは胸へただ昇ってくるだけではなかった
聞いていた
まるで彼の内側にも
記録できる空間があるようだった
ショーンゴは力で押さなかった
命じなかった
壊さなかった
ただ自分と桶とのあいだに
扉の前で言ったのと同じものを置いた
拒絶
青い桶が震えた
役所の中庭では
オルヴェンの下の白い行が突然さらに暗くなった
ケルトが下がった
- 何か別のものを取っている
オルデクはページを見ていた
- 違う
- 取っているんじゃない
- 境界を受け取ったんだ
サルマは鍵を握りしめた
- 誰の
オルデクは答えなかった
ページのオルヴェンの下に現れたのは
所有者ではなかった
印章でもなかった
名前でもなかった
細い線
染工場の扉の前に現れたものと同じ
拒絶
染料の部屋で
空の桶がかすかに鳴った
何の衝撃もなかった
ただ金属が
自分は満たされなかったと認めた
少女の唇のそばの青い糸が緩んだ
ほどけはしなかった
だが彼女の息に触れるのをやめた
リオルがすぐに言った
- 今だ
レルタは切らなかった
彼女は短刀を糸の下へ入れ
少女の肌には触れないように
それを濡れた布へ押しつけた
セイガが彼女の手元へ板の破片を投げた
乾いた帯が
糸と白い布紐のあいだに落ちた
糸が跳ねた
消えた
少女は息を吸った
まるで長い間
呼吸することにまで許可が必要だった身体が
初めてそれを取り戻したみたいに
少年がメラの手から抜け出した
今度は彼女も放した
ただ言った
- 名はなし
彼は妹の前に膝をついた
すぐには抱きしめなかった
半歩手前で止まった
少女の方から手を伸ばした
二人は指先で触れ合った
黙って
だからこそ染工場は何も得られなかった
ショーンゴは立ち上がった
空の桶は鳴るのをやめた
青い桶はまだ役所の中庭を映していた
だが今
その映り込みにもう一つ現れた
人ではない
印章でもない
ページの端
オルヴェンを渡す相手の印が現れるはずの場所に
見慣れない輪郭だけが浮かんだ
名ではない
紋章だけだった
波の上に立つ三つの細い塔
タルヴェンはそれを見て青ざめた
中庭でオルデクもページに同じ印を見て
目の前に崖が開いたように後ずさった
サルマが彼の袖を掴んだ
- 誰の印
オルデクはすぐには答えなかった
染工場でタルヴェンが先に言った
- レヴェンガルドじゃない
ショーンゴは彼を見た
タルヴェンは無理に言葉を続けた
- オルヴェンが記録の上で自分のものではなくなった時
- 渡されるはずだった相手だ
役所の中庭で
オルデクがようやく囁いた
- 外の机
そして青い桶は
オルヴェンの下の白い行が
印を待ち始めるところを映していた




