エピソード44 乾燥穴
古い役所のアーチが背後に残った
ケルトの声はまだ中庭から届いていた
けれどもう言葉としてではなかった
張り詰めた低いざわめきとなって
そこへ人々の返事が何度も差し込んでいた
- ここだ
- 彼はいない
- あの夜 彼を見た
北の通りは狭かった
広場の近くより建物同士の距離がさらに詰まり
そのあいだに溜まる夜も いっそう濃く見えた
先頭を歩いていたのはレルタだった
彼女は通りの左側
壁に近いところを進んでいた
家々のあいだにある暗い抜け道を
最初に拾うためだった
その右側を汚れたシャツの少年が歩いていた
メラは彼の肩を掴んでいた
乱暴ではない
それでも 彼が突然横へ消えられない強さで
ショーンゴはその後ろを歩いていた
タルヴェンは彼より少し前にいた
両手を縛られたまま
ミロスはタルヴェンの後ろを
一歩分の距離でついていた
セイガはショーンゴの左を歩いていた
彼の視線は人の顔には止まらなかった
扉
窓
屋根のあいだの暗い穴
そういう場所ばかりを見ていた
リオルは少し後ろに残っていた
遅れていたからではない
彼は中庭で群衆の呼吸を聞いていた時と同じように
通りの気配を聞いていた
タルヴェンはまっすぐ歩いていた
けれど干上がった水盤のそばにいた時ほど
もう落ち着いてはいなかった
- 北側はいつもこんなに静かなのか
ショーンゴが尋ねた
タルヴェンは前を見たまま答えた
- 夜はな
- ここでは余計な目を好まない
- 好まないのか
セイガが言った
- それとも怖がっているのか
タルヴェンはすぐには答えなかった
- 長く生きれば
- その二つはほとんど同じになる
少年が身を震わせた
- 乾燥穴はこの先です
- 曲がった先
- 古い橋のそばにあります
メラは彼へ顔を近づけた
- お前は自分でそこで彼女を見たのか
少年は唇を噛んだ
- いいえ
- そこにいると言われただけです
- 誰に言われた
- フードの男に
答えは同じだった
だからこそ さらに悪く聞こえた
レルタは壊れた雨樋のそばで止まった
手を上げた
全員が止まった
前方で通りは二つに分かれていた
左には倉のあいだを抜ける細い通路が暗く開いていた
右には石の小道が
黒い水にかかる低い橋へ続いていた
橋の向こうに乾燥穴が見えた
地面に開いた丸い黒い穴で
石で縁取られている
かつてはその上で布や草
皮や穀物を乾かしていた
今は布のない木枠だけが吊るされていた
そこから風が
古い湿り気と灰の匂いを運んできた
新しい煙ではない
古いものだった
ショーンゴは少年に目を向けた
- どこだ
少年は右側を指した
- 三つ目の穴のそばです
- あそこに庇があります
- そこで待っていると言われました
タルヴェンは静かに息を吐いた
- 都合が良すぎる
ショーンゴは彼を見た
- 話せ
- 本当に彼女を人質にしているなら
- 怯えた少年に案内させる場所には置かない
- お前たちを間違えさせる場所に置く
メラは少年の肩を強く握った
- つまり彼女はここにいない
- そうは言っていない
タルヴェンは答えた
- ここで待っているのが彼女ではないかもしれないと
- そう言っただけだ
セイガは道端の石へゆっくり身をかがめた
縁に残った湿った跡に指で触れた
- つい最近ここを通った者がいる
- 一人ではない
レルタは動かなかった
- どちらから
- 穴の方から橋へ
セイガが言った
- そして全員は戻っていない
その声は大きくなかった
けれど通りは
さらに狭くなったように感じられた
ショーンゴはタルヴェンを見た
- お前が先に行け
タルヴェンはゆっくりと顔を向けた
- もう分かっている
- いい
- なら初めて聞いたふりをするな
ミロスが一つの動きでタルヴェンを前へ押した
痛くはない
だが十分だった
タルヴェンは橋へ足を踏み入れた
足元の板が低くきしんだ
レルタは左側
少し低い石の縁を進んだ
メラは少年とともに橋の手前に残った
セイガは最初の支柱のそばで止まった
ショーンゴはタルヴェンより二枚分遅れて橋へ足を置いた
リオルは全員の後ろに残り
自分たちが来た通りへ顔を向けた
そこには誰もいなかった
けれど静けさはもう変わっていた
その頃
役所の中庭ではケルトが次の紙を開いていた
エンナはその隣に立ち
風が先にページをめくらないよう
端を押さえていた
- 次の名だ
ケルトが言った
干上がった水盤のそばにいた人々は
もう互いを押し合ってはいなかった
密集して立ってはいたが
聞いていた
ランゼはアーチを守っていた
サルマは鍵を手に
保管室のそばに立っていた
オルデクは印章から離れなかった
ベレンは下段の階段に座っていた
そしてこの夜初めて
彼の沈黙は権威ではなかった
エンナが名を読んだ
群衆からすぐに返事はなかった
やがて老人の声が言った
- 彼は東へ連れて行かれたんじゃない
ケルトが顔を上げた
- もう一度言え
- 東ではない
- 馬車を見た
- 北へ向かった
- だが穴の方ではなかった
サルマが鋭く振り向いた
- どこへ
老人は前に出なかった
ただ震える手を上げた
- 古い染工場へ
オルデクが青ざめた
- あそこにはもう何もない
サルマは彼を黙らせるような目で見た
- お前がそう言うなら
- そこには必ず何かある
北の通りでは
タルヴェンが橋の中央に差しかかっていた
その瞬間
三枚目の板の下で何かが鳴った
大きくはない
物語の罠のようでもない
乾いた音
それだけでセイガが顔を上げるには十分だった
- 戻れ
ショーンゴは下がらなかった
彼はタルヴェンの肩を荒く掴み
横へ引いた
タルヴェンは膝を橋の縁に打ちつけた
板の下から細い鉄の鉤が飛び出し
たった今まで彼の足があった場所を通り抜けた
鉤はすぐ殺すものではなかった
引っかけるためのものだった
足止めするために
そして乾燥穴の暗がりから
すでに二本の短い矢が飛んできていた
レルタは一本目を短刀で弾いた
二本目はショーンゴの肩の上を抜け
後ろの板に突き刺さった
ミロスは一つの動きでタルヴェンの前に身を入れた
情けではない
生きたタルヴェンはまだ必要だった
ショーンゴは橋の縁へ手を下ろした
指が木に触れた
一瞬
橋の下の空気が重くなった
地下の時とは違う
黒い輪もない
ただ短い圧だけがあった
まるで空間そのものを屈ませたように
足元の板のきしみが止まった
暗がりの射手が二射目を放った
だが矢は本来より低く進み
水辺の石に当たった
ショーンゴは歯を食いしばった
小さな動きだった
それでも手に冷たさが返ってきた
- 左だ
彼は言った
セイガはもう動いていた
彼は穴へまっすぐ走らなかった
倉の影を斜めに抜け
橋を見通せる射手の位置へ向かった
レルタは低く滑るように
石の縁へ降りた
ミロスはタルヴェンのそばに残った
メラは前へ飛び出そうとした少年を橋の手前で押さえた
- 彼女はあそこにいる
少年は息を漏らした
- あそこにいるはずなんだ
- 息をしろ
メラが言った
- 走れば
- お前は次の鉤になる
厳しい言葉だった
けれど彼女の指は
必要以上には強くならなかった
だから少年はその場に残った
乾燥穴の方で
誰かが木枠の間を走った
セイガが最初にその動きを見た
- 一人
- 水の方へ
レルタはもうそこにいた
彼女は真正面から追わなかった
暗がりから逃げ出した者の前へ
ただ現れた
相手は自分から彼女の短刀へぶつかった
刃ではない
柄が胸に入った
男は仰向けに倒れ
肺から空気を叩き出された
もう一人が三つ目の穴のそばの枠を越えようとした
ショーンゴは橋から石の上へ降りた
手にはまだ板を押さえた時の冷たさが残っていた
だからもう一度力へ伸ばさなかった
彼はただ
古い板の破片を拾って投げた
板は逃げる者の脚に当たった
男は穴のそばで倒れ
袖を鉤に引っかけて叫んだ
叫びは短かった
痛みではない
中へ落ちる恐怖からだった
セイガが彼の襟を掴み
引き戻した
- 生かせ
ショーンゴが念を押した
セイガは彼を見た
- 今のところはな
タルヴェンは片膝をつき
荒く息をしていた
その顔からは乾いた笑みが消えていた
- 鉤に俺を捕まえさせることもできた
彼は言った
ショーンゴは上から彼を見下ろした
- できた
- だが しなかった
- お前はまだ全部を話していない
タルヴェンはゆっくり笑った
喜びのない笑いだった
- そういうことだ
- お前は
- 町が誰を迎え入れたのか理解するより早く学んでいる
ミロスが彼を立たせた
- 歩け
三つ目の穴のそばで
レルタが庇の下を確認した
空だった
古い縄
乾いた布
壊れた木の梯子
地面には小さなリボンが落ちていた
少年はそれを見て息を止めた
- 彼女のだ
メラは彼を前へ行かせなかった
- 待て
ショーンゴは二本の指でリボンを拾い上げた
布には緑の蝋が付いていた
下段の記録にあったものと同じだった
だがその隣に別の跡があった
青
とても細い
ほとんど消えかけている
タルヴェンはそれを見て目を逸らした
ショーンゴは気づいた
- これは何だ
- 外の机のものではない
タルヴェンが言った
- なら何だ
タルヴェンは黙った
ショーンゴは一歩近づいた
- 飾りでもう一度聞いているわけじゃない
タルヴェンはリボンを見た
- 染工場だ
役所の中庭では
まさにその時
アーチのそばの老人が同じ言葉を繰り返していた
- 古い染工場へ
ケルトとエンナは顔を見合わせた
ランゼは盾を握りしめた
サルマはもうアーチへ向かっていた
- ショーンゴに伝えて
誰も答える間もなかった
北の通りから
一人の見張りが駆け込んできた
息を切らし
顔を青くしていた
- 乾燥穴は囮でした
彼は息の間から言った
- 緑の蝋がありました
- それと
- 何か青い印も
サルマが止まった
オルデクがごく低く言った
- 青がここに出るはずがない
そばにいた者は全員それを聞いた
そして中庭はまた静まった
すでに起きたことへの恐怖ではない
下段の列よりさらに深いものがあったという恐怖だった
北で
ショーンゴは三つ目の乾燥穴のそばに立っていた
リボンを手にしていた
前方
暗い屋根の向こうに
古い染工場の建物がそびえていた
窓は黒かった
けれどその一つに
一瞬だけ青い光が揺れた
あまりに弱く
反射だと思ってもおかしくないほどだった
その瞬間にタルヴェンが息を止めていなければ
ショーンゴはそれを
ただの光の揺れだと思っていたかもしれない




