表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/47

エピソード45 染料に残る青い痕

古い染工場の窓に

青い光が一度だけ瞬いた


それだけで十分だった


タルヴェンが息を止めたのは

その建物を恐れたからではない

その光を知っていたからだ


ショーンゴはすぐには動かなかった

三つ目の乾燥穴のそばで

細い布紐を手にしたまま立っていた

周囲の夜は

戦いの後とは思えないほど静まり返っていた


レルタは石のそばで

逃げようとした一人を地面に押さえていた

セイガは穴から引き離したもう一人のそばに立っていた

ミロスはタルヴェンの背後にいた

メラは少年を離さなかった


リオルは橋に近い場所に残っていた

彼は染工場には視線を向けていなかった

むしろ染工場と自分たちのあいだにある何かに

耳を澄ませていた


タルヴェンは縛られたまま立っていた

けれど干上がった水盤のそばにいた時ほど

もう落ち着いてはいなかった


- あの光を知っているな

ショーンゴが言った


タルヴェンは答えなかった


ショーンゴはゆっくりと布紐を下げた

青い痕がタルヴェンの目の前にくるように


- 三度目は聞かない


タルヴェンはようやく息を吐いた


- 青はこの町に出るはずがなかった


- オルデクも同じことを言っていた

ショーンゴが返した

- なら ただの色じゃない


タルヴェンは染工場の方を見た


- 緑の印は人を渡す

- 青は渡さない


メラが鋭く顔を向けた


- じゃあ何をする


タルヴェンは少年を見た


- その人間が

- 自分の足で来たと証明する


少年の顔から血の気が引いた


- 違う

- 俺は来てない

- 知らなかったんだ


メラは少年をさらに自分の後ろへ押しやった


- この子は子どもよ


- 記録には関係ない

タルヴェンは言った

- あそこに入って

- 正しい言葉に答えれば

- あとで誰も強制されたとは証明できない


セイガは襲撃者の一人が倒れた地面のそばにしゃがみ込んだ

その指には緑の蝋がついていた

爪の下には細かな青い粉が入り込んでいた


セイガは顔を上げた


- 彼らはただ罠を置いていたんじゃない

- 証言を作っていたんだ


ショーンゴは布紐を握りしめた


橋に力をかけたあとから

手はまだ冷えていた

その時の力は痛みではなく

手首の内側に空洞を作るように返ってきていた

まるで指先が一瞬

自分のものではなくなったみたいに


彼はもう一度そこへ手を伸ばそうとはしなかった


- なら 誰も最初には入らない

彼は言った

- 何を待っているのか分かるまで


タルヴェンがかすかに笑った


- 俺を扉まで連れていくと思っていたが


- 連れていく

ショーンゴは答えた

- だが お前がそれに値するからといって

- お前の失敗をあいつらに贈るつもりはない


タルヴェンは返す言葉を見つけられなかった


それは

またあの薄い笑みを返されるよりずっとよかった


役所の中庭では

その頃

古い染工場という言葉が

冷たい風のように人々のあいだを通り抜けていた


サルマは鍵を手に

アーチのそばに立っていた

ランゼは通路から退かなかった

ケルトは開いた紙片を持っていた

エンナは群衆ではなく

ページの下端を見つめていた


- ここにも線がある

エンナが言った


ケルトは身を乗り出した


- どこだ


エンナはインクに触れないように

余白に沿って指を動かした


- 行の中じゃない

- その横

- 人じゃなくて

- 記録そのものに印をつけたみたいに


オルデクが一歩近づいた

そして求められる前に足を止めた


サルマはそれに気づいた


- 来なさい

彼女は言った

- 今日 あなたの沈黙はもう誰の役にも立たない


オルデクは印章の置かれた石へ近づき

青い線を見た

そして一瞬で

さらに老け込んだように見えた


- これは俺たちの帳簿じゃない


ケルトが目を上げた


- 誰のだ


オルデクはゆっくり息を飲んだ


- 役所に残らなかった方だ


群衆の中で誰かが囁いた


- また下段か


- 違う

エンナが言った


その声は小さかった

だが今度は人々が聞いた


- 下段は人を隠していた

- これは

- その人を誰が連れていったかを隠している


ベレンは階段に座ったまま床を見ていた


サルマが彼に向き直った


- 知っていたの


ベレンは顔を上げた

その顔に

命令する者の色はなかった

ただ自分の秩序が最上位ではなかったと

急に理解した人間の疲れだけがあった


- 緑の印のあと

- いくつかの記録が消えることは知っていた

- どこへ行くのかは知らなかった


デランは指のあいだで静かに硬貨を回した


- 半分だけ知っているのは便利だな


ベレンは答えなかった


それが白状にいちばん近かった


乾燥穴のそばで

ショーンゴは染工場へ真っ直ぐには向かわなかった


レルタは低い壁に沿って左へ回った

セイガは古い木枠に近い右端を取った

ミロスはタルヴェンをそのあいだで歩かせた

メラは少年を自分の後ろに残したが

彼が布紐を見失うほど離しはしなかった


リオルは最後尾を歩いた


彼らの前に

古い染工場の建物が立っていた

長く

低く

片側の屋根が落ち込んでいる

窓は黒かった

ただ入口から右に二つ目の窓だけが

内側から時おりかすかに青く光っていた


扉の前に見張りはいなかった


その方が悪かった


レルタは敷居から三歩手前で止まった


- きれいすぎる


セイガが頷いた


- 扉の前に新しい足跡がない

- でも窓へ向かう足跡はある


ショーンゴはタルヴェンを見た


- なぜ扉の前は空なんだ


タルヴェンは窓を見ていた


- 扉は

- 中で待っている者がいると

- 思わせるためにある


メラは少年に顔を寄せた


- 妹は窓から入れられたのかもしれない


少年は首を横に振った


- あいつは高いところが怖い

- 絶対に登らない


声は崩れた

それでも叫ばなかった


それだけで

もう一つの勝ちだった


染工場の中で何かが小さく鳴った


一度


それから二度目


中から誰かが木を指で叩いたような音だった


少年がびくりと動いた

メラの手が彼の胸を押さえるのが間に合った


- 止まりなさい


中から細い声がした


- ここ


少年が固まった


- 妹だ


タルヴェンが鋭く少年へ振り向いた


- 答えるな


ショーンゴは窓から目を離さなかった


- なぜだ


- それは彼女がどこにいるかを聞いていない

タルヴェンが言った

- 誰が来たかを聞いている


声が繰り返した


- ここ


今度はもっと近くで聞こえた

扉の向こうではなく

窓の向こうでもなく


まるで彼らのあいだに立っているかのように


リオルがゆっくりと手を上げた


- これは生きている人間の息じゃない


メラは少年に囁いた


- 私を見て

- 扉じゃない

- 私を見て


少年は震えていた

それでも見た


ショーンゴは窓へ一歩踏み出した


セイガがすぐに言った


- 足元


ショーンゴは止まった


目の前の埃の上に

細い青い痕が伸びていた

ほとんど見えないほど淡い

それ自体が光っているのではない

窓からの光を受け止め

こちらへ返している


その痕は扉へ向かっていなかった


ショーンゴの影へ向かっていた


ショーンゴは半歩下がった


青い痕は動かなかった

だがその縁が

わずかに暗くなったように見えた


- 体を掴むんじゃない

セイガが言った

- 結びつく場所を探している


タルヴェンの沈黙が長すぎた


ショーンゴは彼を見ずに言った


- 続けろ


タルヴェンは声を落とした


- 印が返答を捕まえるなら

- 力ずくで人を取る必要はない

- その人間が自分で自分を認めれば足りる


- そのあとは

レルタが尋ねた


- 記録に

- そいつは自分の意思でここにいたと書かれる


メラはゆっくり息を吐いた


- つまり

- 少年を妹のところへ連れてきたんじゃない

- 彼自身を証拠にするために連れてきた


タルヴェンは否定しなかった


ショーンゴは自分の影のそばにある青い痕を見つめた


- 俺は


タルヴェンは答えなかった


それで十分だった


役所の中庭で

ケルトは紙に噛まれるかのような慎重さでページをめくった


- ここにも線がある

彼は言った

- もう読んだ名前の横だ


エンナが身を乗り出した


- でも同じ名前じゃない


オルデクは冷たい水を前にしたように息を吸った


- 青い記録は犠牲者の横につくんじゃない

- 確認した者の横につく


ランゼがアーチへ顔を向けた


- ショーンゴへ伝えろ


デランはすでに動きかけていたが

サルマが止めた


- 一人では駄目


彼女は二人の見張りを指した


- それに大通りは使わない

- 青い印が返答に働くなら

- 町中に叫ぶのは刃物より悪い


デランは硬貨を指のあいだで止めた


- ここまで来ると

- 沈黙まで気に入らなくなるな


サルマは彼を見た


- なら静かに行きなさい


染工場のそばで

中の声が変わった


もう細くはなかった


低く

年を取っていた


- ショーンゴへ伝えろ


それはサルマの言葉だった

彼女が中庭で言った

そのままの言葉


少年が小さくしゃくり上げた

メラの顔から血の気が引いた


セイガは町の方へ鋭く振り返った


- 反響じゃない

- ほかの場所の言葉を取っている


リオルは片耳を手で覆った


- 違う

- 場所からじゃない

- たった今それを聞いた者からだ


ショーンゴは久しぶりに笑った


愉快そうではなかった


- なら こいつは俺たちだけを聞いているわけじゃない


タルヴェンが彼を見た


- 思いついたことをやるな


- 俺が何を思いついたかも知らないだろ


- 見たくないと思う程度には知っている


ショーンゴは緑の蝋と青い痕の残る布紐を持ち上げた


- 答えが欲しいなら

- 違う答えをくれてやる


タルヴェンは激しく首を振った


- 青い記録は馬鹿じゃない


- いい

ショーンゴは言った

- なら 欲深いかどうかを見る


彼は布紐を扉へは投げなかった


横へ投げた


古い木枠の下の影へ

まだ襲撃者の一人が倒れている場所へ


窓の青い光が瞬いた


一度


二度


それから

地面の細い痕が向きを変えた

完全にではない

指の幅にも満たないほど


だがセイガは見た


- 引かれた


ショーンゴは動かなかった


- 蝋にか


セイガは布紐を見た


- もう緑の記録を持っているものにだ


タルヴェンはそれを見ていた

まるで

開いてほしくなかった扉が目の前で開いていくのを

見せられているように


染工場の中で何かが軋んだ



金属


そして

水などあるはずがないのに

濡れた何か


レルタが短剣を上げた


- 中で誰かが動いている


- 違う

リオルが言った


彼はひどく静かに立っていた

顔はほとんど白くなっていた


- 中に

- 息をしていないものがたくさんいる


少年は両手で口を塞いだ

メラはその肩を押さえた


窓の青い光が消えた


そして今度はもっと低い場所で灯った


窓ではない


扉の下の隙間だ


入口前の埃の上に

最初の文字がゆっくりと浮かび上がった


少年の名ではなかった


彼の妹の名でもなかった


ショーンゴ


タルヴェンが一歩下がった

ミロスの手が彼の背に当たった


- 立っていろ


ショーンゴは青い埃に書かれた自分の名を見ていた


手がまた冷たくなった


橋のあとよりも冷たく


染工場の中の声が

ほとんど優しくその名を呼んだ


- ショーンゴ


そして今度

答えようとしたのは人間ではなかった


彼の周りの空気そのものだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ