エピソード45 染料に残る青い痕
古い染工場の窓に
青い光が一度だけ瞬いた
それだけで十分だった
タルヴェンが息を止めたのは
その建物を恐れたからではない
その光を知っていたからだ
ショーンゴはすぐには動かなかった
三つ目の乾燥穴のそばで
細い布紐を手にしたまま立っていた
周囲の夜は
戦いの後とは思えないほど静まり返っていた
レルタは石のそばで
逃げようとした一人を地面に押さえていた
セイガは穴から引き離したもう一人のそばに立っていた
ミロスはタルヴェンの背後にいた
メラは少年を離さなかった
リオルは橋に近い場所に残っていた
彼は染工場には視線を向けていなかった
むしろ染工場と自分たちのあいだにある何かに
耳を澄ませていた
タルヴェンは縛られたまま立っていた
けれど干上がった水盤のそばにいた時ほど
もう落ち着いてはいなかった
- あの光を知っているな
ショーンゴが言った
タルヴェンは答えなかった
ショーンゴはゆっくりと布紐を下げた
青い痕がタルヴェンの目の前にくるように
- 三度目は聞かない
タルヴェンはようやく息を吐いた
- 青はこの町に出るはずがなかった
- オルデクも同じことを言っていた
ショーンゴが返した
- なら ただの色じゃない
タルヴェンは染工場の方を見た
- 緑の印は人を渡す
- 青は渡さない
メラが鋭く顔を向けた
- じゃあ何をする
タルヴェンは少年を見た
- その人間が
- 自分の足で来たと証明する
少年の顔から血の気が引いた
- 違う
- 俺は来てない
- 知らなかったんだ
メラは少年をさらに自分の後ろへ押しやった
- この子は子どもよ
- 記録には関係ない
タルヴェンは言った
- あそこに入って
- 正しい言葉に答えれば
- あとで誰も強制されたとは証明できない
セイガは襲撃者の一人が倒れた地面のそばにしゃがみ込んだ
その指には緑の蝋がついていた
爪の下には細かな青い粉が入り込んでいた
セイガは顔を上げた
- 彼らはただ罠を置いていたんじゃない
- 証言を作っていたんだ
ショーンゴは布紐を握りしめた
橋に力をかけたあとから
手はまだ冷えていた
その時の力は痛みではなく
手首の内側に空洞を作るように返ってきていた
まるで指先が一瞬
自分のものではなくなったみたいに
彼はもう一度そこへ手を伸ばそうとはしなかった
- なら 誰も最初には入らない
彼は言った
- 何を待っているのか分かるまで
タルヴェンがかすかに笑った
- 俺を扉まで連れていくと思っていたが
- 連れていく
ショーンゴは答えた
- だが お前がそれに値するからといって
- お前の失敗をあいつらに贈るつもりはない
タルヴェンは返す言葉を見つけられなかった
それは
またあの薄い笑みを返されるよりずっとよかった
役所の中庭では
その頃
古い染工場という言葉が
冷たい風のように人々のあいだを通り抜けていた
サルマは鍵を手に
アーチのそばに立っていた
ランゼは通路から退かなかった
ケルトは開いた紙片を持っていた
エンナは群衆ではなく
ページの下端を見つめていた
- ここにも線がある
エンナが言った
ケルトは身を乗り出した
- どこだ
エンナはインクに触れないように
余白に沿って指を動かした
- 行の中じゃない
- その横
- 人じゃなくて
- 記録そのものに印をつけたみたいに
オルデクが一歩近づいた
そして求められる前に足を止めた
サルマはそれに気づいた
- 来なさい
彼女は言った
- 今日 あなたの沈黙はもう誰の役にも立たない
オルデクは印章の置かれた石へ近づき
青い線を見た
そして一瞬で
さらに老け込んだように見えた
- これは俺たちの帳簿じゃない
ケルトが目を上げた
- 誰のだ
オルデクはゆっくり息を飲んだ
- 役所に残らなかった方だ
群衆の中で誰かが囁いた
- また下段か
- 違う
エンナが言った
その声は小さかった
だが今度は人々が聞いた
- 下段は人を隠していた
- これは
- その人を誰が連れていったかを隠している
ベレンは階段に座ったまま床を見ていた
サルマが彼に向き直った
- 知っていたの
ベレンは顔を上げた
その顔に
命令する者の色はなかった
ただ自分の秩序が最上位ではなかったと
急に理解した人間の疲れだけがあった
- 緑の印のあと
- いくつかの記録が消えることは知っていた
- どこへ行くのかは知らなかった
デランは指のあいだで静かに硬貨を回した
- 半分だけ知っているのは便利だな
ベレンは答えなかった
それが白状にいちばん近かった
乾燥穴のそばで
ショーンゴは染工場へ真っ直ぐには向かわなかった
レルタは低い壁に沿って左へ回った
セイガは古い木枠に近い右端を取った
ミロスはタルヴェンをそのあいだで歩かせた
メラは少年を自分の後ろに残したが
彼が布紐を見失うほど離しはしなかった
リオルは最後尾を歩いた
彼らの前に
古い染工場の建物が立っていた
長く
低く
片側の屋根が落ち込んでいる
窓は黒かった
ただ入口から右に二つ目の窓だけが
内側から時おりかすかに青く光っていた
扉の前に見張りはいなかった
その方が悪かった
レルタは敷居から三歩手前で止まった
- きれいすぎる
セイガが頷いた
- 扉の前に新しい足跡がない
- でも窓へ向かう足跡はある
ショーンゴはタルヴェンを見た
- なぜ扉の前は空なんだ
タルヴェンは窓を見ていた
- 扉は
- 中で待っている者がいると
- 思わせるためにある
メラは少年に顔を寄せた
- 妹は窓から入れられたのかもしれない
少年は首を横に振った
- あいつは高いところが怖い
- 絶対に登らない
声は崩れた
それでも叫ばなかった
それだけで
もう一つの勝ちだった
染工場の中で何かが小さく鳴った
一度
それから二度目
中から誰かが木を指で叩いたような音だった
少年がびくりと動いた
メラの手が彼の胸を押さえるのが間に合った
- 止まりなさい
中から細い声がした
- ここ
少年が固まった
- 妹だ
タルヴェンが鋭く少年へ振り向いた
- 答えるな
ショーンゴは窓から目を離さなかった
- なぜだ
- それは彼女がどこにいるかを聞いていない
タルヴェンが言った
- 誰が来たかを聞いている
声が繰り返した
- ここ
今度はもっと近くで聞こえた
扉の向こうではなく
窓の向こうでもなく
まるで彼らのあいだに立っているかのように
リオルがゆっくりと手を上げた
- これは生きている人間の息じゃない
メラは少年に囁いた
- 私を見て
- 扉じゃない
- 私を見て
少年は震えていた
それでも見た
ショーンゴは窓へ一歩踏み出した
セイガがすぐに言った
- 足元
ショーンゴは止まった
目の前の埃の上に
細い青い痕が伸びていた
ほとんど見えないほど淡い
それ自体が光っているのではない
窓からの光を受け止め
こちらへ返している
その痕は扉へ向かっていなかった
ショーンゴの影へ向かっていた
ショーンゴは半歩下がった
青い痕は動かなかった
だがその縁が
わずかに暗くなったように見えた
- 体を掴むんじゃない
セイガが言った
- 結びつく場所を探している
タルヴェンの沈黙が長すぎた
ショーンゴは彼を見ずに言った
- 続けろ
タルヴェンは声を落とした
- 印が返答を捕まえるなら
- 力ずくで人を取る必要はない
- その人間が自分で自分を認めれば足りる
- そのあとは
レルタが尋ねた
- 記録に
- そいつは自分の意思でここにいたと書かれる
メラはゆっくり息を吐いた
- つまり
- 少年を妹のところへ連れてきたんじゃない
- 彼自身を証拠にするために連れてきた
タルヴェンは否定しなかった
ショーンゴは自分の影のそばにある青い痕を見つめた
- 俺は
タルヴェンは答えなかった
それで十分だった
役所の中庭で
ケルトは紙に噛まれるかのような慎重さでページをめくった
- ここにも線がある
彼は言った
- もう読んだ名前の横だ
エンナが身を乗り出した
- でも同じ名前じゃない
オルデクは冷たい水を前にしたように息を吸った
- 青い記録は犠牲者の横につくんじゃない
- 確認した者の横につく
ランゼがアーチへ顔を向けた
- ショーンゴへ伝えろ
デランはすでに動きかけていたが
サルマが止めた
- 一人では駄目
彼女は二人の見張りを指した
- それに大通りは使わない
- 青い印が返答に働くなら
- 町中に叫ぶのは刃物より悪い
デランは硬貨を指のあいだで止めた
- ここまで来ると
- 沈黙まで気に入らなくなるな
サルマは彼を見た
- なら静かに行きなさい
染工場のそばで
中の声が変わった
もう細くはなかった
低く
年を取っていた
- ショーンゴへ伝えろ
それはサルマの言葉だった
彼女が中庭で言った
そのままの言葉
少年が小さくしゃくり上げた
メラの顔から血の気が引いた
セイガは町の方へ鋭く振り返った
- 反響じゃない
- ほかの場所の言葉を取っている
リオルは片耳を手で覆った
- 違う
- 場所からじゃない
- たった今それを聞いた者からだ
ショーンゴは久しぶりに笑った
愉快そうではなかった
- なら こいつは俺たちだけを聞いているわけじゃない
タルヴェンが彼を見た
- 思いついたことをやるな
- 俺が何を思いついたかも知らないだろ
- 見たくないと思う程度には知っている
ショーンゴは緑の蝋と青い痕の残る布紐を持ち上げた
- 答えが欲しいなら
- 違う答えをくれてやる
タルヴェンは激しく首を振った
- 青い記録は馬鹿じゃない
- いい
ショーンゴは言った
- なら 欲深いかどうかを見る
彼は布紐を扉へは投げなかった
横へ投げた
古い木枠の下の影へ
まだ襲撃者の一人が倒れている場所へ
窓の青い光が瞬いた
一度
二度
それから
地面の細い痕が向きを変えた
完全にではない
指の幅にも満たないほど
だがセイガは見た
- 引かれた
ショーンゴは動かなかった
- 蝋にか
セイガは布紐を見た
- もう緑の記録を持っているものにだ
タルヴェンはそれを見ていた
まるで
開いてほしくなかった扉が目の前で開いていくのを
見せられているように
染工場の中で何かが軋んだ
木
金属
そして
水などあるはずがないのに
濡れた何か
レルタが短剣を上げた
- 中で誰かが動いている
- 違う
リオルが言った
彼はひどく静かに立っていた
顔はほとんど白くなっていた
- 中に
- 息をしていないものがたくさんいる
少年は両手で口を塞いだ
メラはその肩を押さえた
窓の青い光が消えた
そして今度はもっと低い場所で灯った
窓ではない
扉の下の隙間だ
入口前の埃の上に
最初の文字がゆっくりと浮かび上がった
少年の名ではなかった
彼の妹の名でもなかった
ショーンゴ
タルヴェンが一歩下がった
ミロスの手が彼の背に当たった
- 立っていろ
ショーンゴは青い埃に書かれた自分の名を見ていた
手がまた冷たくなった
橋のあとよりも冷たく
染工場の中の声が
ほとんど優しくその名を呼んだ
- ショーンゴ
そして今度
答えようとしたのは人間ではなかった
彼の周りの空気そのものだった




