表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/47

エピソード40 最初の鐘まで

水車の輪は

急に止められたあともまだ軋んでいた


その下の水はもう平底船を先へ引いてはいなかった

それでも石にぶつかり続けていた

まるで町が

まだ認めたくないみたいに


一つの道はここで折った

だがそれで

夕方が軽くなったわけじゃない


ショーンゴは水路に架かる橋の上に立っていた

セイガは左寄り

手すりの近くにいた

メラは右

エンナのそばにいた

ランは水へ下りる石段の下に立っていた

レルタは橋の入口に残り

通りを視線で押さえていた

ミロスはもう

水車小屋の屋根の上のどこかへ消えていた


エンナはまだ荒く息をしていた

けれど話し始めた時

声はもう崩れていなかった


- 老船頭のガヴル

- 下の水路

- 船着き場から三軒目

- 双子のニルとセナ

- 魚市場の裏

- 扉の上に青い紐がある家

- それと

- 壊れた浴場のそばのカヴェル爺さん


イルヴァは水車小屋の足場に立っていた

手には秤の重り

ここまで来ると

その重りはもう勘定の道具には見えなかった


- まだ迎えが来ていないなら

- 小さい鐘までには来る

と彼女は言った

- そのあとは

- 水で静かに連れていく


ショーンゴは屋根のあいだの空を見た

光はもう低い

町はいま

人だけでなく

時間とも戦っていた


- 船頭は逃がすな

とランへ言った

- 話すなら全部聞け

- 黙るなら

- 自分がいなくても道が裂けていくところを見せておけ


ランは短く頷いた


- 分かった


ショーンゴはイルヴァへ目を移した


- 水車は閉じろ


- もう閉じた

と彼女は答えた

- それでもまた穀物を持ってくるなら

- 帰る時に歯は全部そろっていない


大げさな言葉ではなかった

自分の仕事を

汚れた通路に使われた者の

現実的で固い怒りだった


エンナは

縄の跡が残る手首を握った


- 私も行く

と自分から言った

- 途中で迷ったら

- 場所をもう一度言う


ショーンゴは頷いた


- ならメラの横だ


彼らは橋を下りた

中庭へ戻るためでも

門へ戻るためでもない


町へ入るために


下の水路は左に

暗い帯のように伸びていた

右には職人の家

細い庭

縄で結ばれた門

昼の熱をまだ残す低い屋根


水の方からは

魚と濡れた綱と舟板の匂いがした

町の方からは

灰と台所の煙と

今日すべての家で作られるとは限らない夕食の匂いがした


セイガは最短を選んで進んだ

ただ路地を知っているからではない

町がまだ踏み消しきれていない経路の跡を

見ていたからだ


レルタは少し前

角と曲がり角に近い位置を取った

メラはエンナのそばにいた

ショーンゴは中央を歩いた

速すぎない

けれど窓の内側にいる人間にも

理解させるには十分だった


今日は誰かが

許しを求めて歩いているのではない


下の水路へ降りる最初の坂で

右の屋根からミロスの声が落ちた


- 三軒目

- もう誰かいる


ショーンゴは走らなかった

ただ歩く速度を上げた


ガヴルの家は水路のすぐ上にあった

古く

傾き

扉の上には舟の鉤が掛かっていた

昔は青かった窓板は

もうほとんど灰の色まで褪せている

戸口には

畳まれた櫂が二本

網の継ぎ布を入れた籠が一つ置かれていた


ガヴル本人は

すでに外に出ていた


細く

筋張った老人

肌は古い綱のように黒い

左耳は昔裂け

曲がったままくっついていた

何か言う前に

いつも掌の傷を親指でなぞる

言葉を体の記憶に照らすように


いま彼は戸口に立ち

小さな包みを手にしていた

その両側には男が二人


一人は清潔な灰色の上着

細い袖口

肩には旅用の鞄

顔は普通で

少し疲れてさえ見えた

だが彼が見ているのは老人ではなく

通りだった


もう一人は背が低く

肩が広く

荷運びの外套を着ていた

けれどその袖は

一日中袋を運んだ者にしてはきれいすぎた


ガヴルはショーンゴたちを見た

喜びもしない

怯えもしない

ただ掌の傷をなぞった


- まったく

と嗄れた声で言った

- 今日は

- 飯を食わせに連れていかれるか

- 埋められに連れていかれるかのどっちかだと思ってたぞ


灰色の上着の男が先に振り向いた


- 老人は親族のもとへ移す

と平らに言った

- 一人で残せる状態ではない


ガヴルは口を歪めた


- 一人で無理なのは

- その馬鹿話を酒なしで聞くことだけだ


メラは灰色の上着の男を見た


- 誰が移送に署名した


男は怒りもしない

目も逸らさない


- 署名はある

- それで足りる


- 足りない

ショーンゴが言った


荷運びの外套の男が

肩をわずかに動かした

攻撃ではなく

ただ横を抜けるための準備だった


レルタはそれを先に見た

男が動き出す前に

もう右側へ入っていた


同時にショーンゴは

男の一歩を短くずらした

強くではない

ただ

まっすぐ進むはずの足を

段差の縁に乗せるだけ


男は肩を戸枠にぶつけた

そこにはもうレルタがいた

肘を首へ入れる

短く

乾いて


男は戸口のそばに座り込み

叫びではなく

空気を飲み込んだ


灰色の上着の男は

水路の方ではなく

庭の奥へ退こうとした


だが上から落ちたミロスの影が

すでにその前にあった

頭上ではない

逃げるはずだった道の先だ


ミロスは刃さえ抜かない

ただ

男が次の瞬間に立つはずだった場所へ

先に立っていた


ランはガヴルに近づき

老人の手から包みを取った


- もう連れていかれていた

と言う

- 自分で行くつもりじゃない

- 戸口の足跡が本人の歩幅じゃない


灰色の男は

ゆっくり両手を上げた


- 俺たちは殺し屋じゃない

と言った

- 名前と時間と道を渡されただけだ

- 老人を引き渡せばよかった


ガヴルは埃に唾を吐いた


- 引き渡す

と繰り返した

- そう言う奴ほど

- 自分はどこにも行かん


ショーンゴはレルタを見る


- 手を縛れ

- 二人とも生かしておけ


- 縛る

レルタは答えた


エンナはガヴルを見ていた

生きている顔を

記憶の中の行と照らしているように


- その人は下の一覧にいた

と言った

- 名前を覚えてる


ガヴルは短く彼女を見る

それからショーンゴを見る


- 助けるなら

- 俺の前で立ち止まるな

と言った

- 魚市場の裏に子どもがいる

- そっちの方がまずい

- 子どもは静かに待つのが下手だからな


それも本当だった


魚市場の裏では

町の匂いがもっと強かった


樽に残った古い水

燻し小屋の煙

夕方はここで

より低く

より狭く

より生々しくなっていた


扉の上に青い紐がある家は

二つの物置のあいだの細い通路にあった

低いが

妙に踏ん張っている家だった

入口のそばには子どものシャツが干されている

戸口には

三十ほどの女が立っていた

太い前腕

後ろで結んだ頭巾

手には魚包丁


彼女は恐ろしいわけではなかった

誰かの物語に飾られるような美しさでもなかった

ただ疲れていて

強くて

隅に追い込むべきではない女だった


鼻には古い骨折の跡

答える前に

いつも舌で頬の内側を押す

余計な言葉を押し止めるように

名はマレヴァ


魚を売り

一人で暮らし

弱い方が折られそうになっているのを見ると

関係ない喧嘩にも割って入る癖があった


マレヴァはまずエンナとメラを見た

それからショーンゴを見た

包丁は下げない


- 子どもを取りに来たなら遅いよ

と言った

- あんたたちの前に来た二人には

- ここにあるのは魚と

- 私の性格の悪さだけだって言ってやった


セイガが見たのは彼女ではない

扉の下

少し右

床板の細い隙間だった


- 中にいる


マレヴァは彼を見る

それからようやく

包丁を半分だけ下げた


- 頭は回るんだね

と言った

- なら時間を捨てなくて済む


彼女は横へ退いた

広くではない

彼らが中へ入るのに必要な分だけ


ニルとセナは

小部屋にも

机の下にもいなかった

塩魚を入れる細長い箱の中にいた

マレヴァが急いで

乾いた布を敷いたのだろう


二人とも十歳ほど

それ以上ではない

少年の方は妹の手を強く握っていた

もう分かっていた

これは遊びでも

罰でもない

大人たちの

静かで

とても悪い何かだと


セナはまっすぐショーンゴを見た

泣いてはいない

ただ目だけが大きく開いていた


- あの人たちじゃないの


- 違う

ショーンゴは答えた


ニルはエンナを見る

次にメラを見る

そしてようやく

指の力を少し緩めた


マレヴァは包丁を

扉の横の柱へ突き立てた


- 迎えはもう来た

と言った

- 一人は袖に緑の結び目

- もう一人は市場の馬鹿

- 子どもを移すと言った

- どこへか聞いたら

- 金を払った相手のところだと言った

- それで

- 言葉で分かり合う段階は終わったと判断した


ランは扉の縁を調べた

そこには

鉤で引いたような細い傷が残っていた


- 鍵はもう触られている


- また触りに来る

マレヴァが答えた

- 私がここに一人で残ればね


ショーンゴは彼女を見た


- なら一緒に来い


マレヴァは鼻で笑った

だが目に嘲りはなかった


- ようやくまともに言う奴が来たね


メラは双子の前にしゃがんだ

触れはしない

ただ

二人が全員を下から見上げなくていい高さで


- 私たちと来る

と言った

- 今すぐ


セナは短く頷いた

ニルは頷かなかった


- カヴェル爺さんも

- そこに来るの


エンナが青ざめた


- その人も一覧にいた

と言った


マレヴァは包丁を柱から抜き

袖に隠した


- なら急ぎな

- あの爺さんは馬鹿だから

- 待てと言われたら

- 茶まで用意するよ


そしてそれも

また本当だった


壊れた浴場は

町の古い端に近かった

石は角から崩れ

木の庇は必要以上に低く傾いている

昔はそこに熱い蒸気があった

いま建物から漂うのは

乾いた葉

濡れた煤

そして板から抜けきらない古い白樺の匂いだけだった


扉の前の長椅子に

カヴェル爺さんが座っていた


老人だが

骨格はまだ広い

片方の目は灰色に濁り

もう片方だけが鋭く残っていた

肩には擦り切れた浴場番の外套

足元には小さな包みがある

本当にどこかへ行くつもりだったみたいに


何か言う前に

カヴェルはいつも隣の木を

指の節で三度叩く

世界がまだ

単純なものに応えるかどうかを

確かめるように


彼は三度叩き

彼らを見た


- 遅い

と言った

- 名前を聞かない相手が

- 先に来るかと思っていた


扉の柱には

肩より少し下の高さに

小さな黒い印があった



乱暴に描かれたものではない

文字ではなく

意図を読む者へ向けて置かれた確かな印だった


その下には

誰かが木へ歪んだ一語を押し込んでいた



メラが固まった

地下で固まった時とは違う

もっと嫌な止まり方だった


結び目と一緒に埋まったはずだと

彼女が思いたかったものが

生きている通りのそば

この長椅子に座っているようだった


ショーンゴは近づいた


- 何を言われた


カヴェルは膝の包みに指を走らせた


- 待てと言われた

- 今夜

- 俺は連れていかれない

- 客が来たら

- 扉を開けろ

- 何も聞くな


セイガが鋭く顔を上げた


- つまり

- あんたは連れ出される側じゃない

と言った

- ここで誰かを受け入れる側だった


カヴェルは

鋭い方の目で彼を見た


- ほらな

と言った

- 俺も

- 馬鹿のまま死ぬわけじゃなさそうだ


ランは扉の柱にある黒い輪へ近づいた

指先ではなく

節で触れる

表面ではなく

印が木の中にどう座っているかを聞くように


- 地下の痕跡じゃない

と平らに言った

- 新しい

- でも根は同じだ


それが重要だった


戻り道ではない

新しい部屋でもない

古い仕組みが

地上で

石板も結び目もないまま

生きる方法を覚えたということだ


レルタは左の路地を見た


- 客が実在するなら

- まだここへ向かっている可能性がある


壊れた浴場の屋根から

ミロスの声が落ちた


- あるいは

- もう立って待ってる

- こっちが扉を開けるかどうかをな


双子と一緒にここまで来たマレヴァが

袖の中の刃を押さえながら

乾いた声で言った


- なら待たせときな

- 今日の町は

- そこまで素直じゃない


ショーンゴは浴場の扉を見る

黒い輪

客という文字

カヴェル

メラの後ろにいる子どもたち

まだ誰かが作った一覧の行を頭に残しているエンナ


いま彼らが得たものは

ただ三人を救ったという事実だけではない


生きている老人

二人の子ども

証人

扉の印

そして

誰かが自分から来るはずの場所


- 全員

- 役所へ戻れ

ショーンゴが言った


メラは彼を見る


- あなたは


ショーンゴは黒い輪から目を離さなかった


- 俺は残る

- 客を迎える


一瞬

誰も言い返さなかった

レルタでさえ

マレヴァでさえ


全員が理解したからだ


今度はもう

向こうの道を追って走っているのではない


彼らは初めて

その道の前に立っていた

そして

向こうから誰がぶつかってくるのかを

待っていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ