エピソード35 もう隠せないもの
視線はショーンゴに集まっていた
そして今度は
誰一人として先に目を逸らさなかった
彼が圧をかけていたからじゃない
倉庫からまだ地下の気配が漂っていたからでもない
むしろ逆だった
長いあいだ
この町の下には他人の手が伸びていた
いまはもうない
だからこそ
人の視線は
地下からのどんな反響よりも重くなった
倉庫の屋根の下の空気は
まだ埃と湿った板と汗の匂いに満ちていた
それでももう
奪わない
引かない
求めない
リオルはゆっくり息を吐いた
指はまだ思うようには戻っていない
だが井戸のそばの赤い髪の女と
その小さな子を見た時
それはすぐに分かった
- 脈は安定している
と静かに言う
- もう下から掴まれていない
女はすぐには答えなかった
ただ
子どもをさらに強く抱き寄せた
デランは水のそばに立っていた
硬貨は指のあいだで
もう偶然とは言えないほど長く止まっている
灰色の静かな目が
荷口を
外套についた埃を
下から戻ってきた者たちの疲れた手を
順に追った
- なら本当だな
と低く言う
- もう引くものはいない
ケルトは荷口の少し左
倉庫の壁の近くに立っていた
その目にあったのは安堵ではない
警戒だった
- なら日が落ちるまでに帳簿が燃え始める
と乾いた声で言う
- ここにまだ頭の回る奴が一人でも残っているなら
ランゼは盾をひっくり返った樽の縁に立てかけた
休んでいるわけじゃない
ただもう
次の一撃が下から来るみたいな持ち方はしていなかった
- いい習慣だな
と低く言う
- やっと死ななくなったと思ったら
- 次は書記狩りか
セイガは何も返さなかった
ショーンゴの半歩右に立つ
光の糸はすでに消えている
それでもその目は
他の者にはただの壁にしか見えない場所の縫い目を
まだ見抜いていた
彼は一度
倉庫と脇道のあいだの細い通路を見た
次に倉庫の奥
古い木箱の向こうにある
帳簿部屋へ続く暗い通路を見た
- 動くなら
と低く言う
- 荷口じゃない
- 帳簿だ
ミロスもすでに同じ方を見ていた
何も答えない
ただ肩の角度を少し変える
すると奥の木箱のあいだの影が
本来より濃くなった
ショーンゴは荷口から一歩出た
群衆へ向かったわけじゃない
倉庫の暗さと
井戸のそばの光のあいだ
視線がすべて集まる場所へ出ただけだ
- この町の下には
- もう何も残っていない
と平らに言う
- お前たちから力を奪っていたものは死んだ
誰も叫ばなかった
だが中庭はすぐに応えた
荷車のそばの老いた荷運びが
ゆっくり背を伸ばす
まだ完全ではない
それでも自分の力で
いつの間にか癖になっていた
あの痛みの歪みもない
井戸のそばの娘は
手を石に置いたまま固まっていたが
やがてその手を離した
そして戻さなかった
- 頭が澄んでる
と通路の方から誰かが言う
- 母さんの手が温かい
と別の声が続く
- 昨日なら親父はもう二度は倒れてた
と三人目が投げる
それは叫びじゃなかった
反乱でもない
ただ人が初めて
自分の体を
自分のものとして話しているだけだった
その時
脇道の方から
速い足音が来た
群衆ではない
恐慌でもない
すでに結論を持って
ここへ来た人間の足音だった
男は中くらいの背丈で
痩せていた
黒髪は後ろへ丁寧に撫でつけられている
頭の秩序さえ守れば
町の秩序もまだ守れると信じているみたいに
右手首のところには
袖の下から古い薄い傷がのぞいていた
指先はインクで汚れている
そして言葉を発する前に
何度も袖の縫い目へ指をやる
いつもの世界がまだ繋がっているか
確かめるみたいに
最初にその男に気づいたのはデランだった
- ベレン
その名は静かに
それでも十分な重さで中庭を渡った
ベレンはほんの一瞬だけ止まる
体ではなく
目が止まった
開いた荷口
下から戻ってきた者たちの埃
井戸のそばの人々
そしてデランの指に止まったままの硬貨
その一瞬だけで
中庭の全員が理解した
こいつはもう
全部を正しく読んだのだと
それでも口を開いた時の声は
まだ何かを集め直せると思っていた
- 荷口を閉じろ
と鋭く言う
- 中庭を空けろ
- 安定を確認するまで
- 誰も倉庫に触るな
声は大きくない
それが危険だった
力でではなく
帳簿と順番で長く人を動かしてきた者の話し方だった
ショーンゴはすぐには答えない
セイガはもう一度
倉庫の奥を見た
今度はもっと鋭く
- 時間稼ぎだ
と低く言う
- あいつの後ろに帳簿への道が二つある
- 一つは倉の中
- もう一つは裏壁沿いだ
- ミロス
とショーンゴが言う
奥の影はもう無かった
ベレンもそれに気づいた
そこで初めて
声ではなく目が乱れた
- 中庭を閉じろ
今度は見張りへ向かって
さらに鋭く言う
- 今すぐだ
見張りは二人いた
一人は頬骨が張り
鼻のつぶれた大柄な男
もう一人は若く
痩せていて
疲れた明るい目をしていた
一年で見るには多すぎるものを
見てきた人間の目だった
だが二人とも
最初に見たのはベレンじゃない
荷口だった
次にメラ
それからリオルの手
最後に
もう母を知らない子みたいな目ではなくなっていた
小さな子を見た
大柄な方が先に口を開く
- 何を閉じろって言うんだ
と低く問う
- もう死んだものか
- それとも
- これを上まで持ってきた連中か
ベレンはきつく振り向く
- 言われた通りに閉じろ
- 遅い
とデランが乾いた声で言う
- もうみんな見た
ベレンはそちらを見なかった
その代わり
荷口へ一歩近づく
まだ命令一つで
真実に蓋をできると思っているみたいに
ランゼはすぐ動いた
盾を持ち上げはしない
ただその縁を
ベレンと荷口のあいだの石へ立てた
鈍い音が
中庭を横切る返事になった
- これ以上は行かせない
とランゼが言う
ベレンは怒らず
まずランゼを見た
量り
計算に入れ
それからショーンゴへ目を移す
- もし本当に
- 下が終わっているなら
と平らな声で言う
- なおさら
- 群衆に帳簿と倉へ触れさせるわけにはいかない
- 町は恐れで保たれていたんじゃない
- 秩序で保たれていたんだ
ケルトが短く笑う
楽しさはない
- 違う
と言う
- この町は底で保ってた
- 今は
- 誰を何行で下へ積んだのか
- 誰にも数えさせたくなくて仕方ないだけだ
ベレンは答えなかった
その沈黙の方が
言い訳より深く彼を売った
リオルは赤い髪の女を見た
次に老いた荷運び
それから井戸の娘
- あいつが嘘をついてるのは
- 結び目のことじゃない
と低く言う
- 時間のことだ
- 今日 帳簿が消えたら
- 明日には町の半分が
- 何一つ証明できなくなる
その言葉は
命令より強く人へ落ちた
地下への恐れは今 死んだ
代わりに
借り
名前
代価
記憶が
急に地上のものになった
人のものになった
そしてとても近くなった
倉庫の奥の扉の方で
何かが乱れる音
誰かが中で走った
セイガが鋭く振り向く
- 右の通路だ
その瞬間
木箱のあいだの濃い影が動いた
影じゃない
ミロスだった
追いかけない
ただ
逃げるはずの場所に先に現れる
棚のあいだから
油で汚れた胴着の若い男が飛び出してくる
二十ほど
胸には厚い帳簿を抱えていた
ミロスを見るのが遅すぎた
ミロスはただ足を差し入れ
男を崩し
膝が床へつく前に
帳簿だけを奪った
綺麗でもない
見せ場でもない
ただ正確だった
帳簿は荷口のそばの石へ
鈍く打ちつけられる
それだけで十分だった
これでもう
中庭の真ん中に転がったものは疑いじゃない
最初の物証になった
人を救うためではなく
嘘を救うために走ったものが
ベレンの顔から色が落ちた
結び目の死を聞いた時でもなく
ショーンゴを見た時でもない
帳簿がみんなの前へ転がった
その時に初めて
デランが最初にそれへ歩み寄る
止まったままの硬貨を表紙の上へ置いた
事実を木へ打ちつけるみたいに
- じゃあ安定の問題じゃない
と静かに言う
- 勘定の問題だ
赤い髪の女が顔を上げる
その目には
もう恐れだけじゃないものがあった
- それが倉の帳簿なら
- そこにうちの夫の名がある
- うちの兄もだ
と通路の方から声が飛ぶ
- 全部の名前だ
と老いた荷運びが続ける
中庭が動き出す
まだ群衆ではない
だがもう向きは決まっていた
人々はショーンゴへ寄ったんじゃない
ベレンから離れた
メラは黙ってそれを見ていた
肩にはまだ埃が積もっている
だがその目の均一さは
もう以前のようには保たれていなかった
- 地上の方が
- いつだってひどい
と小さく言う
皆にではなく
自分へ向けて
ランはその左に立ち
一度だけ倉庫の壁へ手を触れた
- こっちは
- ひびが入るのが早い
と平らに言う
レルタはベレンから目を外さない
- まだ皆
- 覚えてるから
と乾いた声で言う
ショーンゴはもう一歩進む
今や
帳簿と荷口とベレンが
一本の線の上に並んでいた
- よく聞け
と平らに言う
- 倉庫はもう
- お前たちの盾じゃない
- 帳簿もだ
ベレンは顎を強く結ぶ
- お前はここでは何者でもない
と言う
- 下から出てきたぐらいで
- 条件を出せると思うな
- 違う
とショーンゴが返す
- 下から出てきたから分かる
- 条件がなければ
- お前たちは夜までに全部焼く
彼は見張りたちを見る
- 封じるのは中庭じゃない
- 倉と帳簿部屋の出口だ
- 一冊でも持ち出したら
- それだけで自分から名乗ったことになる
若い見張りはベレンを見なかった
すぐに倉庫の奥の出口へ向き直る
大柄な方は一拍だけ残った
それから脇へ唾を吐き
やはりベレンの命令は待たなかった
それが
ベレンが失ったものだった
落ち着きじゃない
自分の言葉だけで
人が動くという習慣だった
- お前にそんな権利はない
と彼は前より低い声で言う
ショーンゴは荷口のそばの帳簿を見る
その上のデランの硬貨を見る
そしてもう目を逸らさない人々を見る
- 権利か
と返す
- お前の言葉のあとで残るのは逃げる音だ
- それを止める方が先だ
ケルトは帳簿のそばへ寄る
開かない
ただ乾いた掌を表紙の上に置く
- 今
- 印と鍵を持ってる連中を集めないなら
と低く言う
- 日が落ちるまでに
- 町の半分は帳簿の上でだけ清くなって
- 記憶の中では死ぬ
セイガはもうベレンではなく
倉庫の向こうの通りを見ていた
- もう三人動いてる
と静かに言う
- 一人は旧役所へ
- 二人は西の倉へ
- ミロス
とショーンゴが短く言う
- もう行ってる
姿のない声が
横の影から返った
リオルは自分の手首を撫でる
まだもう一つの拍を探しているみたいに
- 人は集まれる
と低く言う
- でも
- もう一度嘘を飲まされたら
- 今度は耐えない
ショーンゴは一度だけ頷いた
- なら今だ
と言う
- 夕方じゃない
- 旧役所の中庭に
- 鍵と帳簿と借りと印を持つ者は全員来い
- 来ない者は
- それだけで自分の立場を名乗ることになる
それは脅しの声ではなかった
演説でもない
その条件のあとで
町が集まるか
嘘の方へ裂けるか
それだけを決める声だった
デランは石から帳簿を拾い上げる
表紙を見て
次にショーンゴを見る
- これなら俺が運ぶ
と言う
赤い髪の女も井戸のそばから立ち上がる
小さな子はその手を離さない
- 私も行く
- 目の前で言わせる
- 誰を下へ積んだのかを
そのあとに声が続く
まだ群衆じゃない
だがもう沈黙でもなかった
ベレンは動かなかった
怒鳴りもしない
飛びかかりもしない
ただ見ていた
自分の指のあいだから
失われていくものを
倉庫でも
帳簿でもない
まだ全部に蓋ができたはずの
あの一瞬そのものを
ランゼは盾を石から少しずらす
危険が消えたからじゃない
もう危険が荷口にはないからだ
上へ移ったのだ
人の中へ
言葉へ
勘定へ
ショーンゴは中庭を見た
荷口を見た
デランの手の帳簿を見た
見張りたちが出口を塞ぎに向かった通りを見た
死んだ地下と
まだ生きた嘘のあいだに立つ
メラとランとレルタを見た
そして自分の側に立つ者たちを見た
それでやっとはっきりした
地下は本当に終わったのだと
結び目が死んで初めて
町は次の一撃を下から待たなくなった
その代わり
これから誰がその上に立つのかを
見始めていた




