エピソード34 地上での最初の息
通路はもう前みたいに嘘をつかなかった
ただ死んでいただけだった
両側の石は乾いた層になって剥がれ落ち
背後へ向かって 埃が沈んでいく
まるで地下そのものが
自分の痕跡を消しているみたいに
メラが先頭を行く
守り手としてではなく
どこなら死んだ道があと数拍だけ息をするのか
よく知っている人間として
ランはすぐ後ろ
何度も掌で壁に触れた
聞いているのは規則じゃない
崩れ方だ
レルタは半歩後ろを保っていた
明るい髪は低い結び目から少し乱れていたが
歩き方は変わらずまっすぐだった
まるで長い時間ぶりに
下ではなく上へ向かっているみたいに
セイガは光を前へ向けない
通路の縁
まだ正しい線が残っている場所へ流していた
糸は震えていた
それでもまだ彼のものだった
リオルはケルトとランゼのあいだ
片方の手でまだ熱を保ち
もう片方で時々壁に触れた
確かめるためだ
これはまだ石なのか
それとも今にも落ちるものなのかを
ミロスは列の後ろにはいない
影が横を滑っていく
この通路には
もう一つ暗い側面があり
彼は今 そちらを使っているみたいだった
ショーンゴは中央寄りを保つ
メラより前ではなく
ランゼより後ろでもない
どちらへでも間に合う位置だ
ランゼは最後尾
盾は縁を前に構え
肩は少し下がっていた
それでも歩みは崩れず
頑固なくらい生きていた
- 今 崩れたら
- 俺が最初に聞く
- 崩れたら
ケルトが乾いた声で返す
- お前が最初に残って聞くことになる
ランゼが鼻を鳴らした
今度は冗談ではなかった
死んだ通路の中で
ただ一つ生きた音だった
背後で鈍い衝撃
核の間の下の区画が沈んだ
爆発ではなく
質量として
全員が一瞬だけ揺れる
セイガは光の糸を継ぎ目へ押し当て
線ごと天井に折り畳まれないようにした
メラが鋭く言う
- 左へ
- 右はもう死んでる
全員が左へ寄る
その直後
右側が崩れた
ただの亀裂ではない
壁の一部が突然
壁である意味そのものを失って
下へ落ちていった
リオルは反射でケルトを引いた
だが自分も滑りかける
足は見せているほど言うことを聞いていなかった
先に動いたのはレルタだった
彼の肩を掴み
乾いた動きで
誇張なく
生きている石板へ引き戻す
- 足元を見て
レルタが平らに言う
- 下を見るな
リオルは短くうなずく
説明に使う息はなかった
前の通路が急に狭くなる
あまりに急だった
まるで上層の倉庫がまだ迷っているみたいに
彼らを出すか
もう一つ蓋を閉じるか
ランが上の継ぎ目を指でなぞる
- ここは昔の整備路だ
- 石の記憶がまだ死んでいなければ
- 倉庫の下へ出る
- その もし がな
ランゼが低く言う
ショーンゴは待たなかった
掌を石そのものではなく
二枚の石板のあいだの距離へ置く
今回は押さない
境も置かない
彼がずらしたのは向きだった
上で噛み合っていた通路に
かつてどちらへ開いていたかを思い出させるために
微かな代価はすぐに返る
右腕は手首から肩まで重くなる
心臓が歪んで打ち
通路は一瞬だけ本来より遠くへずれた
距離そのものが
昔の形へ戻るのを嫌がっているみたいに
それでも石はもう誤っていた
上の石板は下へではなく
横へずれ
埃の向こうに
細く暗い裂け目が開く
セイガはすぐにそこへ光を流す
閃きではない
細い線だ
確かめるため
それが本当に道なのか
それとも死んだ結び目の最後の嘘なのかを
光はまっすぐ入った
戻ってこない
- ある
セイガが言う
- もう上の層だ
ケルトが乾いた息を吐く
今でも信じていないみたいに
最初に潜ったのはメラ
次にラン
そのあとレルタ
セイガは光の糸を細くまとめて続く
リオルは苦しそうに体を滑り込ませた
腕にはまだ力が戻り切っていない
ケルトは肩を石板の縁にかすらせかけ
ミロスはただ影へ消え
気づけば向こう側にいた
まるで最初からそこにいたみたいに
ランゼが最後に残った
ショーンゴはまだ下に立っていた
そこで初めてランゼが彼を見る
- こんな町まで背負うつもりなら
- ぐずぐずするな
ショーンゴは上を見る
そこには
もう死んだ結び目の匂いがしない
生きた出口があった
- だから ぐずぐずしない
二人は上へ出る
そこは倉庫の下の細い整備路だった
魔法の間でも
輪でも
板でもない
古い木
鉄のかすがい
埃
湿った土の匂い
そして よその圧のない
ただの静けさ
それがいちばん強く胸を打った
最初に止まったのはケルトだった
手で壁に触れる
ただの
少し荒い壁に
そして囁く
- 引いてない
誰も返さなかった
全員が同じものを感じていたからだ
空気は奪わない
石は聞いてこない
距離は嘘をつかない
町の下の地下機構は
もう死んでいた
足元に残っているものは
ただの床だった
地上
倉庫と井戸のまわりには
もう人が集まっていた
誰も
今日は普通の日だという顔をしていない
あの灰色の目の男は井戸のそば
硬貨は初めて掌の上で動かずにいた
隣では赤い髪の女が 幼い男の子の肩を掴んでいる
現実がまた揺れるのを恐れるみたいに
群衆の中の誰かが小さく言う
- 下の音が消えた
それは本当だった
何週間もの恐れのあとで
町は初めて
下にあるものへ耳を澄ませなくてよくなった
その時
倉庫の中から鋭い鈍音
古い荷揚げ口の板が跳ね
埃が舞い
金具が内側からの圧で折れた
何人かが後ずさる
誰かはナイフを握り
誰かは祈りを飲み込む
二度目の衝撃
そして蓋が上へ開いた
最初に出てきたのはメラ
青白く
埃まみれで
もう以前の均一さはない
そのあとにラン
レルタ
セイガ
リオル
ケルト
ミロスは樽のあいだの影に
いつのまにか立っていた
倉庫そのものが
彼の現れた瞬間を見逃したみたいに
ランゼが一つ前で這い上がる
体を起こし
倉庫の光の中で盾を持ち上げた時
人々は思わずさらに半歩下がった
魔法に対してではない
帰らないはずの場所から
本当に戻ってきた者たちの生々しさに対してだ
最後にショーンゴが出てくる
暗い埃が外套と肩に積もり
髪はさらに乱れていた
それでも歩みはまっすぐだった
下で結び目一つが落ちたのではなく
ただ誰かの嘘が終わっただけみたいに
倉庫の中が静まり返る
外で
井戸の縁から落ちた一滴が
水へ戻る音まで聞こえるほどに
灰色の目の男は
ショーンゴから目を離さなかった
よそ者を見る目ではない
もう先延ばしにできない答えを見る目だった
最初に息を吐いたのは
群衆の誰かだった
- で
その声は人のものだった
苛立ちがあり
怖れがあり
それでも本物だった
- 下には何があったんだ
ショーンゴは沈黙を長く引かない
- 生きてるものは
- もう何も残っていない
メラは一瞬だけ目を伏せ
それから認めた
飾らず
古い仕組みを庇わず
- 核は死んだ
- 局所の結び目も もう終わった
群衆にそれは叫びではなく
息として広がった
重く
裂けたようで
それでも生きた息として
最初に座り込んだのは赤い髪の女だった
井戸の縁にそのまま腰を落とす
いま初めて
どれだけ長く
怖れの力だけで立っていたのか分かったみたいに
昨日まで骨に近いほど乾いていた大男も
石に手をつき
誰の助けもなく立っている
よその手も
背中を押すよその圧もない
井戸端の灰色の目が
半呼吸ぶんだけ細くなる
- なら
- 今度は別のものが始まる
低く言う
ショーンゴはそれを聞いた
だがすぐには振り向かない
自分でも分かっていたからだ
地下は死んだ
だが一緒に死んだのは
この町が 認めたがらないまま長く抱えてきた怖れでもあった
怖れが死ねば
誰かが秩序を引き受けなければならない
その夕方
倉庫の重い空気と
井戸のそばの広場の中で
それはもう
ほとんど触れられるほどはっきりしていた
まだ誰も
権力とは言っていない
まだ誰も
独立とも言っていない
だがもう全員が
地の下ではなく
ショーンゴを見ていた




