エピソード25 核の前
地上では町がまだ途切れ途切れに息をしていた
まるで誰かが湿り気を少しだけ戻し
だが喉には恐れを残したみたいに
井戸のそばでは
あの灰色の静かな目をした男が もうまっすぐ立っていた
硬貨がまた指の間を回る
一度
二度
三度
男は人々を見ていない
桶の中の水を見ていた
表面に細い震えが走る
まるで地の奥で
誰かが底そのものに触れたみたいに
- まだ終わっていない
男は小さく言う
誰かにではなく
ほとんど自分に
それから硬貨を掌に隠し
ゆっくり倉庫の方を見る
倉庫の下
塩のポンプは
鉢の上で もうゆっくり縮んでいた
だが その一度ごとの収縮は
石の奥で乾いた痛みとして響いた
暗い管はまだそれを支えている
ただ もう前ほど確かではない
ショーンゴは鉢の前に立つ
右手は重い
指はまだ完全には言うことを聞かない
それでも圧はまっすぐ保たれている
ランゼは中央
半歩後ろ
盾は縁を立て
脚は広い
ポンプが暴れた時の波を受ける構え
セイガは左
石板の継ぎ目のそば
光の糸は血管みたいに細い
打つためじゃない
導くためにある
リオルは右の壁
片手は自分の手首
もう一方はランゼの帯
二人を同じ拍でつなぐみたいに
ケルトはショーンゴの肩の後ろ
乾ききった目
だが視線はポンプではなく
遠い壁の奥
ミロスは影
鉢の低いところ
暗い管が石へ入る場所
規則が弱点を隠す場所だ
アイラは横
淡い目はもう書記の目じゃない
次の誤りの値段を知っている者の目
ポンプがまた縮む
規則が動く
だが波は上へ行かない
町も取らない
広間も叩かない
波はこの房の中へ落ちた
壁の塩を乾かし
そして皆が見る
白い膜の下に
古い線が浮かび上がる
ひびじゃない
継ぎ目でもない
書き付けだ
セイガが光の糸を壁へ走らせる
慎重に
余計を払わないように
石から文字が浮かぶ
暗い水から魚が出るみたいに
ケルトが目を細める
- これは帳面じゃない
- 警告だ
アイラがゆっくり息を吐く
- 核の前には
いつも同じ文が刻まれる
- 後で知らなかったと言わせないために
ランゼがかすれ声で
- 何て書いてある
セイガが光を下へ滑らせる
一行
もう一行
- この先
- 重さは戻らない
- この先
- 自分への権利は保証されない
リオルが顔を上げる
- 自分への権利
アイラは壁から目を離さない
- 核は歩みを奪わない
- 声も奪わない
- ポンプみたいに乾かしもしない
- ただ決める
何がまだ お前自身なのか
広間が静まる
ポンプでさえ
収縮を少しだけ慎重にしたみたいだった
ショーンゴは圧を髪一本ぶん下げる
結び目を早く壊さないために
- どう開く
アイラは鉢を見る
管を見る
塩水で黒くなった筋を見る
- これを止める
- 壊すんじゃない
- 止める
- 管を裂けば
房は町へ全部吐き出す
ケルトが乾いた笑みを浮かべる
- 簡単じゃないな
ミロスが低く
- ここに簡単な場所は最初から無い
ミロスの刃がさらに下へ滑る
一本の管が鉢へ入る場所
まっすぐではない
少しずれている
昔 誰かが触れ
あとから書き直された場所だ
- ここだ
ミロスが言う
- 弱点じゃない
修理跡だ
ショーンゴはすぐ理解する
目じゃない
意志で
圧を鉢へではなく
その縫い目へ動かす
内側から扉を支えるみたいに
空気が固くなる
万力みたいに
代価はすぐ来る
右手の中で石のねじが回る
心臓が鈍く打つ
空間が一息だけ水みたいに重くなる
ランゼはそれに気づく
だが何も言わない
ただ半歩近づく
盾がショーンゴと鉢の間に入れる距離まで
セイガが光の糸を
縫い目の反対側へ置く
二つ目の縫い目みたいに
リオルが熱を投げる
ショーンゴへ直接じゃない
二人の間の空気へ
心臓にもう一拍だけ余裕を渡すために
アイラが板を叩く
一度
二度
三度
今度は命令じゃない
解放だ
鉢の下の石板が瞬く
貢ぎが外れる
ポンプが強く縮む
最後の古い拍で
そして一本の暗い管が
音もなく
張力を失う
衝撃は来ない
波も来ない
ただ
深く乾いた吐息
壁の塩が落ちる
細い砂みたいに
房が古い皮を脱ぐみたいに
ランゼは盾の重さを感じる
軽すぎない
よそよそしくない
自分の重さだ
セイガが深く息を吸う
光の糸はもう割れない
リオルは壁に寄りかかる
手は震えている
だがもう水を抜かれてはいない
ケルトが唇を舐める
そこには久しぶりに湿り気があった
ポンプは死んでいない
止まっただけだ
暗い管は垂れ
命令を失ったみたいに揺れる
遠い壁に線が現れる
一本
もう一本
石がゆっくり開く
扉じゃない
下への階段だ
そこから来る空気は塩じゃない
別の冷たさ
深く
静かで
長く待っていた空気
アイラが青ざめる
初めて隠さない
- ここから先は行かない
ショーンゴが見る
- 怖いのか
アイラは否定しない
- そこでは借りは書かれない
- そこでは
誰が借りを持つ資格があるかを決める
ミロスが立ち上がる
刃から塩を払う
- 階段は狭い
- 先頭が一人
後ろに盾
ランゼがうなずく
セイガが光を少し上げる
最初の段に置く
光は小さくなる
ここでは叫ぶなと言われたみたいに
リオルが壁から離れる
- もしここが別の段なら
戻っても同じじゃない
ショーンゴは階段を見る
塩も
糸も
秤もない闇
急がない静けさ
どうせ来ると知っている者の静けさ
- それでいい
ショーンゴが言う
- もう手足を殴るのは飽きた
そして一段目へ足をかける
その瞬間
地上の井戸で
あの灰色の目の男が
急に顔を上げた
音じゃない
拍の変化を聞いたみたいに
指の中の硬貨が止まる
地下では
階段の下から
もう一度
ゆっくりした打撃が返る
足音でも
声でもない
核そのものが
静かに
彼らの到着を記したみたいに




