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復讐狂気の不等録  作者: 工藤
帝都強襲
29/34

ぼくがかんがえたさいきょうの……

前提として、ハルトはアルカナの一つを持っています。


「Grrrryyyaaaaa!?!」


『クッソ何だよこいつ!!暴走しやがった!!』


 自分が流した血を見て、テンバランスは発狂して体から出た【黒】により、人間の有り合わせのような外見になった。


 ハルトはそれを見て、既に逃走を開始していた。


「Krrrrooooaaa!?!!」


 四つの口で奏でる不協和音がハルトの耳に届き、その表情には焦りが見えている。


『あーもう!こんなのどうしようも無ぇじゃねぇか!?」


 ハルトは、己の顔を隠す仮面に触れる。これを剥がせば、あの狂える節制を完全に()()()()事が出来る。

 しかし()()()が、ハルトにとっては恐ろしい。故にこの手は不要と判断し、数瞬の思考の末破棄する。


 変異したテンバランスは、その場から一つとして動いてはおらず。しかし、何故ハルトはテンバランスに背を向けているのか?


『クッソ、()()()!!』


 何かが変わった筈なのに、()()()()()()()()


 大きく歪んだ建物(初めからそうだった)捩れた時計塔(何も変な所は無い)を見て初めからそうだったと(何も変わらない)、そう思ってしまっている事が異常なんだ。


『“原型”の変異!!今のお前(節制)の能力はそれかよ!!』


 地面が明らかな幾何学的構造に捲れ上がり、それを目の前で見たのに、それを“異常”であると感じれない。


「Rrrrrrraaaaaaaaaa!!!!」


『あぁっ!もう、うるせぇな!?人間が理解できる言葉を話しやがれぇ!!』


 苦し紛れに魔力糸で薙ぎ、牽制を放つが『節制(テンバランス)』は避ける事はせずただそこに“在る”だけ。


 魔力糸は『節制(テンバランス)』の体の寸前で静止し、それ以上の進行は権能の力に阻まれた。

 ハルトは進まない魔力糸を見て舌打ちをし、その糸を()()し役目を果たせず魔力として霧散させる。


 そして、試しにそこら辺の長い建物を『節制(テンバランス)』の方に切り倒すが、ズドンと言う轟音と砂煙を立ち上げ、パラパラと豆粒程の大きさの石に打たれて現れたのは無傷の姿。


『マジかよ、無敵バリアとか使うなよ。多分、オレの『宝具』じゃ届かねぇ……いや、でもこれなら!!』


 ただの魔術ではアルカナ持ちの肉体に傷をつけれず、しかし不用意に近づけば権能の餌食になる。

 最悪な事に、今のハルトと『節制(テンバランス)』の権能は相性がすこぶる悪い。


 “原型”の変異と言う能力は、その“存在”があやふやであればある程効果を増して行く。

 今のハルトは、【契約】により現世に留まっている。つまり生者なのか死者なのか、ハルト自身理解していない。


 ハルトは、目の前で暴走している『節制(テンバランス)』の権能に、()()()()()()()、存在そのものが抹消されるのだ。


 ハルトが打てる手は必然的に限られており、逃げながら魔術で牽制をするだけである。


 しかし、先ほどハルトが放った魔力糸が、()()()()()()()()()()()事を見て、不可侵と変容を押し付ける節制(理不尽)に致命打を与える方法を見つけた。


『ーー【ヴィネ・アルテリエ】!!【ロア・ギアラ】!!』


 オレは同時に二つの『宝具』を展開する。【ヴィネ・アルテリエ】は、赤と青の二色が混ざらず混同する人馬の弓。


 本来の大きさの為、オレの腕が肩まですっぽりと見えなくなる程の大きさ……弓というより、バリスタだな。


 【ヴィネ・アルテリエ】の能力は、指定した魔術を魔力を消費する事なく際限無く増やす。と言う能力だが、いかんせん火力がアホみたいに高くなるので、使い勝手が悪く街中で扱うものでは無い。

 しかし、今回はそれを逆に利用する。



 【ヴィネ・アルテリエ】は、大きさこそ規格外ではあるが、本来の用途は弓。つまり、矢を打ち出す部分がある。

 まず、矢の代わりに【ロア・ギアラ】を()()()()()セット、そして【ロア・ギアラ】に僅かな魔力で作った『円削』を付与し、魔力糸をハルトと【ヴィネ・アルテリエ】【ロア・ギアラ】に括り付ける。


 そしてそれを、何の躊躇いも無く佇んでいる『節制(テンバランス)』に向けて放つ。


 『節制(テンバランス)』を中心に展開する不可侵は、自身に向けた敵性のある物全てを平等に停止させる。これのせいで、さっきの魔力糸は肉体の寸前で完全に停止していた。

 ここで重要なのは、『敵性がある物』と言う事。先程の建物の倒壊の時、あいつは()()()()()()()()()()()現れた、つまり……



『あいつは、自分の意思で()()()()()()()()()()!!』


 

 放たれた『宝具』が、節制目指して突き進んで行く。


「Krrrroooooaaaaaa!!!!」


 ぎょろぎょろと体中に生み出した目で、飛んでくる“敵”に権能を行使する。

 『宝具』は不可侵を進むが、進むにつれ『円削』は極限まで威力が減衰していく。


『いや、ギアラ以外の『宝具』だったら、止められてたよ絶対にな』


 進む、進む、進む。


 不可侵を掻き分け、ものともせず『節制』めがけてただ進む。

 それを不思議な顔で、『節制』は見つめる。


 ーー何故止まらぬのか。


 ーーどうしてこちらに来るのか。


 ーー何か、間違っている?


 そう。そうだ。そうなのだ。何か、勘違いをしている。僅かな、たった一つの、そうたった一つの致命的な間違いを。

 何故、()()()()()()()()()が、こっちに来るのだ?


『分かるわけねぇよなぁ!!()()()()()どうやって危機感を持てって話だ!!』


 でも、それだけじゃあオレは勝てない。


 残りの最後の一欠片は……魔力糸(これ)だっ!!


『ーー【ロア・ギアラ】【ヴィネ・アルテリエ】起動!!』


 魔力糸を通じて、二つの『宝具』を起動させる。()()()()()()()()()()()()、【ヴィネ・アルテリエ】の術式で息を吹き返す。


 虫の息だった『円削』が『宝具』の効果で、爆発的に威力を増して行く。

 それを察知した『節制(テンバランス)』は、権能を使って『宝具』を停止しようとするが、何故か自分の体が『宝具』の方に()()()()()()()()()


『おいおい……お食事中は、席を立つなって親に言われなかったのか!?』


 起動した【ロア・ギアラ】が周囲の空間を巻き込み、『宝具』と『節制(テンバランス)』の間の距離を()()にする。


「Ooooooaaaaaaaa!?!?!?」


『静かにしろよ……狂人が……』


 曲がり唸る空間の中で、静かに極星が放たれた。

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