開戦
帝国、帝都上空、八千メートル。
『うっわ……何も見えねぇ(笑)』
ハルトとその部下達は、巨大な“竜”の上に乗っていた。
「そうですね……ハルトさん。俺こっから落ちて、生きて帰れますかね?」
『「「さぁ、死ぬんじゃない?流石の食人族でも」」』
「ーーですよねぇ…」
諦めたように天を仰ぎ、腰に刺した大剣をゆっくりと撫でる。
『うっし、ふざけるのもここまでだ。作戦の最終確認といこう』
ハルトの一括で、騒がしかった空間が静寂を取り戻す。
『オレ達の目的は、勇者の殺害だ。ぶっちゃけ都市を制圧しようとかは考えなくて良い。ここまで質問は?』
「はいっ!!」
『はい!メレフ!何かね!』
「えっとね。噂だけどね。相手に、すっっごく強い人達がいるって聞いたんだけどね。その人達は、どうするの?」
『多分、メレフが言った“すっごく強い人達”の一人は、オレの友人だと思う。バカみたいに強いし、ここに居るメンツじゃあちょっと心許ないしね。目的もあるしまぁ、そこは協力者に任せてオレ達は基本“無視”だ』
「うん!分かった!!」
ハルトの言葉を聞いて、パァッと笑顔になり満足した様子でうなずいた。
「ーーそれで?最初に逝くのはハルトなのね」
『おい待て、何勝手にオレを殺そうとしたんだ。最初に行くやつは、ちゃんと考えてるよ』
そう言って、右の人差し指をある人物に向けて……
『ーー最初はお前だ。かましてやれよ?』
ーー最初に“異変”に気付いたのは、異世界から来た『剣聖』であった。
「まさか……大魔術を使う気か!!」
王城から飛び出し、帝都のど真ん中に着地すると同時に、【大規模転移魔術】にて帝都そして近隣の町に居る全ての人間を転移させる。
そして上からくる重圧に、頬が吊り上がる。
落ちて来たのはーー人であった。
ピンクの長髪を靡かせ、その手に弓を持って『剣聖』めがけて構える。
「ーーこの際。はっきりしましょう……ハルトさんが言ってたわよ。『フラベルが一番強い』って、だから確かめてあげる」
「嬉しいね……唯一の友人に、そんな事言ってくれるなんて」
その言葉を最後に、互いに黙り込む。
お互いに魔力を練り出し、魂を削ってその力を行使する。
「ーー『宝具』開放」
人馬宮、適合率74%
十二宮第三位
ルクト・コルス
弓を持つルクトの左手が、『宝具』と同化する。
ルクトの『宝具』は、『魔術の複製』の効果を持つ。その“複製”に一才の魔力は使わず、“複製”の上限数は……存在しない。
フラベルの目の前には、町一つ破壊し尽くす【大規模魔術】、その数五十を超えている。
そして対するフラベルの足元には、ルクトが展開した魔術の数を遥かに超える数の魔術を、自力で展開していた。
「さぁ……この一撃を持って始めようか」
「「戦争を《ザンッ!!》」」
瞬間、両者共に空白が生まれる。
何故なら『剣聖』フラベルの両腕が、宙を待っていたからだ。
フラベルの視界を占めるのは、舞った腕と切り傷から噴き出る己の血。
赤が占めている視界で、己の腕を切った人物をハッキリと見ており、その視線に気付いたのか、男は
「ーー悪いね」
肩をすくめ、自分の得物である大剣を肩に担ぐ。
最初に落ちたのは人馬ではなく、大剣を持つ暴牛が、自らを燃やして堕ちてきた。
「なぁ、展開した魔術どうすんの?」
「ーー知らないわよ」




