第3話 思わぬ出会いがありましたが、研修頑張ります
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――思わぬところで出くわした、一緒に事故で死んだ相園ミサキ。
彼女はスクールカーストでは上位の存在であり、陽キャラでありながら陰湿。
いじめをゲームとして楽しむタイプの品の無い人だ。
しかし、親が金持ちということもあり、教師も強く言えず……。
彼女の横暴さは目に余る勢いだった。
その彼女が転生課で審査が通り、異世界転生審査課のフロアにいることへ驚きを隠せない。
「なに? あんたも乗用車に撥ねられて死んだくち?」
「ええ……まぁ」
「良かった~! クソつまんない死に方だったから、私だけが恥かいてるって思ったらキツかったけど、馬鹿がもう一人いたなら良かったや」
「……」
「暇でしょ? ちょっと付き合えよ」
そう言って俺の腕をグイッと引っ張った時だった。
「中島君、仕事中です。その方と遊ぶのは後になさい」
俺が困惑していたのが分かったのだろう、田中さんが助け船を渡してくれた。
無論、相園さんはそれをよしとはしない。
世界の中心は自分だという考えの人間だからだ。
「何おばさん? 今から大事な話をしにいくんだけどー?」
「中島君は研修生です。遊んでいるだけの時間などありません。社会に出れば社会のルールに従ってもらいます」
「それはそうですよね。ごめん相園、俺仕事中なんだ。また今度な」
そうやんわり断って腕を放すと、相園は顔を真っ赤に染めて怒りだした。昔からコイツ、癇癪持ちなんだよなぁ……。
「は!? 意味分かんない! この私よりも優先してやることがあるとかふざけてんの!?」
「仕事ですから」
「仕事ってバイトみたいなもんでしょ!? だったらバイトくらい休んで私の相手しろって言ってんの、分かんないかな~!?」
「ごめん相園、俺たちもう死んでて、今の世界のルールに従わないといけないんだよ。悪いけど君のルールには従えない」
「なっ!」
「田中さん、仕事に戻りましょう。皆さんをお待たせしていてはいけませんから」
冷たい言葉ではあったけれど、事実の言葉。
相園を突き放す言葉で田中さんと一緒に課まで戻ろうとしたその時、足を蹴られてその場で突き飛ばされた。
「中島くん!」
「バーカ、転生できなくてここに残る負け犬。二度死ねば?」
痛みは無いのに、心だけがズキッとする。
そう捨て台詞を吐くと、相園は走り去っていった。
相園が発した言葉は周りの職員にも聞こえていて、彼らは一様に怒りの表情を浮かべている。
「大丈夫ですか? 死なないとは言え、驚いたでしょう?」
「はい、痛みが無くて驚きました」
「一応この世界では職員、および研修生には痛みが伴わないようになっているんです。とはいえ、彼女ですが」
「一緒に車で撥ねられて死んだ同級生です」
「なるほど……彼女が。取りあえず立てますね? 仕事に戻りましょう」
田中さんに初日から迷惑をかけたことに申し訳なく思った。
けど田中さんは冷たい人ではなく、本当に不器用な女性なのだと改めて理解した俺は、彼女の後ろをついて行く形で追いかけた。
田中さんは遅れた理由について、俺が同級生に難癖をつけられて絡まれた上に暴行も受けたことを告げると、坂本さんは渋い顔をしたのち、口を開いた。
「初日から大変な目に遭いましたね。ですが、その同級生のように難癖をつける輩は多くいます。気を引き締めて仕事に励むように」
「はい!」
「では、業務確認から始めます」
坂本さんがそう言うと、各自に書類が手渡された。
そこには、転生課から渡された、本日分の死者が十人ほど並んでいた。
この人数を多いとみるべきか、少ないとみるべきか……。
眉を寄せていると、谷崎さんが俺の様子を察して反応してくれた。
「まぁ、気になるよなぁ。異世界への切符ってのは、俺たちの上、まぁ異世界の神様が欲しい人数を集めることが肝心な訳だ」
「神様が……欲しい人数?」
思わぬ言葉に眉を顰めると、谷崎さんは溜息を吐いて言葉を続けた。
「本日、異世界側から〝欲しい人数〟として指定されたのは十人だ。彼らを審査して、了承したならそのまま異世界への切符をゲッツするわけ。けど、中には弾かれる阿呆もいるからなぁ。その辺りの折り合いが結構面倒なんだわ」
「弾かれる……ですか?」
「そりゃどんな人でもって訳にはいかないだろ? まぁ、お前に暴行するような輩もいるっちゃいるが、そういうのはまぁ……アレだ。需要もあるわけだ」
(――どんな需要?)
なんとなく言いにくそうにしていた。
まだ新人研修を受けていない俺には語ってはくれないのかもしれない。
「では、これより業務を開始します。その前に一つ報告です。本日付で新人研修生が来ることになっていましたが……」
「そういえば」
「来てないわね。遅刻かしら」
「いいえ、遅刻ではありません。彼女は体調が優れなくなってしまったので、安全を取ってお休みです。明日には来られることでしょう」
「そうなんですね、早く体調治ると良いですね」
そう何気なく言葉にすると、栗崎は俺に抱きついて「本当に良い子だわ!」と叫び、谷崎さんも「偉いし優しい」と俺の頭を撫でてくれた。
一体何がそんなに嬉しいのかは分からないけれど、初日から働けないのは悔しいだろう。新人研修の子、早く体調治ると良いな。
(それに……思っていたより、ずっと現実的な場所だ)
――それから始まった異世界転生審査。
今日一日で十人の審査が行われることになったけれど……。
書類を見ても年齢、性別バラバラだ。
彼らは異世界トラック課で命の選別をし、転生課で書類選考に残った人たち。
彼らの履歴書を見ていると、本当に無作為に選んでいるのではないだろうか?
「……異世界トラック課って、どうやって人を選んでるんでしょうね」
そう口にすると、栗崎さんが近寄ってきて俺の疑問に答えてくれた。
「そうね~? 一つは依頼、一つはノリ、一つは勢いかな?」
「そんなノリで俺も死んだんですか……?」
「人生何が起きるかなんて分からないもんだよ? 人間いつポックリ逝くかも分からないんだし、かといって、コイツしぶといな~って人もいるじゃん?」
「まぁ……いないと言えば嘘になりますけど」
「コイツ死んで欲しい! って思うときはね? 長生きすると思うんだ。だから『寿命が来い! 寿命きてやれ!』って思うと、削られそうな気がするの」
「ポジティブな願いですね」
「汚い言葉なんて本来は使いたくないもの。心まで汚れちゃうわ」
そう言ってウインクしてくる栗崎に苦笑いすると、俺は皆さんの斜め後ろに立ち、今から入ってくる一人目の異世界転生審査に臨んだ。
◆◆◆◆
「ようこそいらっしゃいました! お望みの世界と、貴方が望む三つの願いを叶えます! どんな異世界に行きたいですかぁ~?」
栗崎の明るい声に、基本的に今日来た人たちは口を開けてポカーンとしていた。
人によって差はあるけれど、男性に多く見受けられたのが――。
「神様に会うわけじゃないの?」
「一般的には美女か幼女の神様にまず会うんじゃないの? え、違うの?」
という反応が多かった。
では、女性はというと――。
「死んだら悪役令嬢に生まれ変わってる訳じゃないんだ……」
「目が覚めたらとびきりの美人になってないとかウケる……」
などと、少々沈んだ表情でいらっしゃった。
……分かる。俺もそう思ってた。
一般的に言われている、読まれている、出版されている異世界転生――。
大体が神様にまず会ってステータスをどうするかとか。
もしくは、神様に何かを依頼されてるとか。
『前の人生はクソだったから、異世界転生して無双してやるぜヒャッハー』みたいなのを望んでる人が多いのは間違いないことだと思う。
女性だと悪役令嬢に生まれ変わって、その人生をどうバッドエンドにならずに進んでいくかとか、どこかでハーレムができあがったりするんだよな。
物によっては、記憶を持って生まれてきているから、その力を存分に使っていく系とかね。
なにげにこの知識、俺の姉がそっち系の小説を読みあさっていたから知っている。
「美少女なら目の前にいるんですから、それで満足してください♪」
栗崎のかわいい笑顔に、ほだされる男性陣。
「イケメンと恋愛したいならサッサと決めちまおうぜ? 平凡な俺みたいな顔見ても、しゃーねーだろ」
と、意外とイケメンな谷崎さんに言われて頬を染める女性陣。
田中さんと坂本さんはというと、一部の男女に人気があるらしい。
なんとなく理由は分かる気がする……。
こう、マゾ属性の人は、この二人を選ぶんだろうな……。
それから十人の死者との面談をしていくわけだけど――。
最後の異世界転生審査が始まったとき……。
彼は栗崎の言葉を聞いて、部屋が震えるほどの雄叫びを上げたのだ。
一体何事!?
驚く俺を除く四人に関しては慣れているようで。
それぞれが小さく溜息をついたのだった。
嫌な予感が、背筋を冷たくした。
なぜなら……今まさに目の前にいる彼は、〝異常〟だった。
中島君、素直な良い子ですよね。
もう少しヤンチャ系の男子にしたかったんですが、気が付いたら普通の子でした。
癒し系男子になった中島君には、今後頑張ってもらいたいところです。
応援よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ




