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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【祭りの始まり】面倒事対処 その06【無数の戦付き】

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134/138

スレ134 効果よりフレーバーテキストが凄い

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます



「──って、なんでそんなに魔物と友情を結べるのさ?」


「……いや、ノリで。というか、なんて言っているのか分からないのに、真面目に会話とかできるわけないだろう」


「分からなかったの!?」


 ずいぶんと乗ってくれるな、アヤさん。

 ミノタウロスの変異種──ミノさんは粒子となって消えていき、そこにはドロップアイテムだけが残っていた。


 漆黒の宝珠、そう例えるのが最適な逸品。

 呪われてはいないだろうが……うん、はたしてどんなアイテムなんだか。


「これは……なあ、これってどんなアイテムか分かるか?」


「……鑑定スキルがあるよね?」


「俺、事情があって使えないんだよ。とりあえずお願いします」


「うーん……いろいろ気になるけど、今は鑑定だよね──“鑑定”!」


 俺たち呼びだされた異世界人は、本来誰もが言語理解と鑑定のスキルを与えられる。

 ……がしかし、俺は強奪チートを持つヤツに奪われたのでそれを所持していないのだ。


 それがあれば、地球でも言語チートができたのにな……アイツらに巻き込まれている内に、ある程度は素で話せるようになったが。


 ともかく、そのせいで俺は鑑定スキルを失い、この場で調べることができない。

 彼女に渡した端末には、鑑定機能が登載されていないのが理由だな。


「えっと……『魔牛人の魂魄』って書いて、『ミノさんの魂魄』って読むみたい。説明のテキストは──[ミノさんの生涯を記した宝珠。魂が宿り、魄を扱える]だって」


「……聞いたことないな。今度、図書館で調べてみることにしようか。ありがとう、アヤさん。俺独りじゃ分からなかった」


「ううん、これぐらいならどうってことないから。それより……どうするの?」


「どうするって、そりゃあ持って帰るさ。この魔道具で」

(──“虚無庫(ストレージ)”)


「あっ、持ってたんだ」


「迷宮だし、下の方なら結構出るらしいぞ」


 示すように見せたバッグ型の魔道具、そこに入れると見せかけてこっそりと“虚無庫”の中へ抛り込む。


 時間による劣化があるかもしれないので、念のためこちらに入れておく。

 ミノさんもただの魔道具に入れられるよりは、こちらの方が気に入ってくれるだろう。


「よし、どんどん下に行くぞ」


「……そうだった、まだあるんだよね」


「その間にアヤさんも強くなれるし、俺にできることなら出来る限り手伝うつもりだ。死なれると困るし、支援してもらえるなら助かるからな」


「あ、ありがとう……アサマサ君」


 顔を背けられたが、そういうことはアイツらも良くしていたこと。

 悪いことではないと習っていたので、そのまま次の階層へ向かう。


 ……この先、全部が変異種となると少々手こずりそうだな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 嬉しいような悲しいような、経験を積める変異種はもう出てこなかった。

 九十五階層もただのミノタウロス……種族として上位種なのだが、変異種ではない。


「弱い、弱過ぎる──“構造複製(トレース)”」


 記憶していたミノさんの装備を生みだし、両手に収める。

 二つの斧、炎と雷を纏う双剣ならぬ双斧の使い方を振りながら覚えていく。


「アヤさん、“聖寧”を使って経験値を稼いでおいて。失敗するだろうけど、成功すれば御の字だし経験値は貰える。魔力が尽きたら次は回復のレベリングだ」


「うぅ……なんだかキツいよ」


「とりあえずやってみようぜ。飽きたら別のことを試してみれば良い──“身体強化”」


 スキルとしての身体強化を発動させ、体内から魔力で補って身体能力を高める。

 能力値が固定で弱者な俺でも、魔力がある限りは強くなることが可能だ。


 ……気功をしっかり纏っておかないと、体が耐えられなくて大変なことになるがな。


「二つの斧で戦った経験はないけど、二刀流そのものはいろんなパターンでやってきたからできるだろう──“浮遊(フロート)”」


 斧二つ、元はミノさんが使うレベルの重量なので扱いづらい。

 なので身体強化で強引に使うのではなく、しっかりと扱える重さにしてから振るう。


「うん、これならできるな。それじゃあ、そろそろ始めるか」


「……あのさ、どうしてボス相手にそんな余裕に戦えているの? ──ヒュドラだよ、九本も首があるんだよ! なのになんで、そんな猛攻を独りで捌き切っているの!?」


「うーん……経験?」


「け、経験でできることなんだ……」


 引いているようだが、実際それ以外で説明できないから仕方がない。

 俺だって、自分の勝手に冴え渡る勘に首を傾げたいほどだ。


 技を使う時に体が勝手に動くように、危機となったら体が勝手に避けてくれる。

 武器を持っている場合は、そのまま迎撃してくれる場合もあるな。


 それはアイツらと付き合う中で、そうならざるを得なかったという本能。

 スキルには記されない、命の灯火を守るため身に付けた……ならぬ身が付けた技術だ。


「で、技を自分で使えばサクッと終わる……のかな? 双技──『蓮牙』」


 二刀流用の技だが、軽くしているので斧でも使うことができた。

 しなやかに腕が動くと、それぞれの腕が持つ斧を振るっていく。


 首が次々と落とされ、再生しようとしても炎と雷がそれを妨げる。

 牙が同時に体へ食い込むように、この技も無数の傷を相手に残す。


 アヤさんが言った通り、すでに最後のボスであるヒュドラと戦闘中。

 そして今、その命も儚く散っていく。


「……終わり。ミノさんよりも強い魔物、結局出てこなかったな」


「えっと、五十階層でそんなに強い魔物が出てくるのはおかしいと思うよ……たしかに、中ボスの方が強いとかは今は定番だけど。五十ぐらいなら大丈夫って、理事長さんに入ったけど……ここのは無理だったよ」


「まっ、反省会はあとでいいだろう。それよりほら──最後の層へ行く道が出たぞ」


「うん……行こう!」


 そして俺たちは、学園迷宮の最深部を訪れるのだった。

 ……二回目だけど、アヤさんといっしょに居ると何か起こるのだろうか?



今年もよろしくお願いします<○>


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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