スレ134 効果よりフレーバーテキストが凄い
遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます
「──って、なんでそんなに魔物と友情を結べるのさ?」
「……いや、ノリで。というか、なんて言っているのか分からないのに、真面目に会話とかできるわけないだろう」
「分からなかったの!?」
ずいぶんと乗ってくれるな、アヤさん。
ミノタウロスの変異種──ミノさんは粒子となって消えていき、そこにはドロップアイテムだけが残っていた。
漆黒の宝珠、そう例えるのが最適な逸品。
呪われてはいないだろうが……うん、はたしてどんなアイテムなんだか。
「これは……なあ、これってどんなアイテムか分かるか?」
「……鑑定スキルがあるよね?」
「俺、事情があって使えないんだよ。とりあえずお願いします」
「うーん……いろいろ気になるけど、今は鑑定だよね──“鑑定”!」
俺たち呼びだされた異世界人は、本来誰もが言語理解と鑑定のスキルを与えられる。
……がしかし、俺は強奪チートを持つヤツに奪われたのでそれを所持していないのだ。
それがあれば、地球でも言語チートができたのにな……アイツらに巻き込まれている内に、ある程度は素で話せるようになったが。
ともかく、そのせいで俺は鑑定スキルを失い、この場で調べることができない。
彼女に渡した端末には、鑑定機能が登載されていないのが理由だな。
「えっと……『魔牛人の魂魄』って書いて、『ミノさんの魂魄』って読むみたい。説明のテキストは──[ミノさんの生涯を記した宝珠。魂が宿り、魄を扱える]だって」
「……聞いたことないな。今度、図書館で調べてみることにしようか。ありがとう、アヤさん。俺独りじゃ分からなかった」
「ううん、これぐらいならどうってことないから。それより……どうするの?」
「どうするって、そりゃあ持って帰るさ。この魔道具で」
(──“虚無庫”)
「あっ、持ってたんだ」
「迷宮だし、下の方なら結構出るらしいぞ」
示すように見せたバッグ型の魔道具、そこに入れると見せかけてこっそりと“虚無庫”の中へ抛り込む。
時間による劣化があるかもしれないので、念のためこちらに入れておく。
ミノさんもただの魔道具に入れられるよりは、こちらの方が気に入ってくれるだろう。
「よし、どんどん下に行くぞ」
「……そうだった、まだあるんだよね」
「その間にアヤさんも強くなれるし、俺にできることなら出来る限り手伝うつもりだ。死なれると困るし、支援してもらえるなら助かるからな」
「あ、ありがとう……アサマサ君」
顔を背けられたが、そういうことはアイツらも良くしていたこと。
悪いことではないと習っていたので、そのまま次の階層へ向かう。
……この先、全部が変異種となると少々手こずりそうだな。
◆ □ ◆ □ ◆
嬉しいような悲しいような、経験を積める変異種はもう出てこなかった。
九十五階層もただのミノタウロス……種族として上位種なのだが、変異種ではない。
「弱い、弱過ぎる──“構造複製”」
記憶していたミノさんの装備を生みだし、両手に収める。
二つの斧、炎と雷を纏う双剣ならぬ双斧の使い方を振りながら覚えていく。
「アヤさん、“聖寧”を使って経験値を稼いでおいて。失敗するだろうけど、成功すれば御の字だし経験値は貰える。魔力が尽きたら次は回復のレベリングだ」
「うぅ……なんだかキツいよ」
「とりあえずやってみようぜ。飽きたら別のことを試してみれば良い──“身体強化”」
スキルとしての身体強化を発動させ、体内から魔力で補って身体能力を高める。
能力値が固定で弱者な俺でも、魔力がある限りは強くなることが可能だ。
……気功をしっかり纏っておかないと、体が耐えられなくて大変なことになるがな。
「二つの斧で戦った経験はないけど、二刀流そのものはいろんなパターンでやってきたからできるだろう──“浮遊”」
斧二つ、元はミノさんが使うレベルの重量なので扱いづらい。
なので身体強化で強引に使うのではなく、しっかりと扱える重さにしてから振るう。
「うん、これならできるな。それじゃあ、そろそろ始めるか」
「……あのさ、どうしてボス相手にそんな余裕に戦えているの? ──ヒュドラだよ、九本も首があるんだよ! なのになんで、そんな猛攻を独りで捌き切っているの!?」
「うーん……経験?」
「け、経験でできることなんだ……」
引いているようだが、実際それ以外で説明できないから仕方がない。
俺だって、自分の勝手に冴え渡る勘に首を傾げたいほどだ。
技を使う時に体が勝手に動くように、危機となったら体が勝手に避けてくれる。
武器を持っている場合は、そのまま迎撃してくれる場合もあるな。
それはアイツらと付き合う中で、そうならざるを得なかったという本能。
スキルには記されない、命の灯火を守るため身に付けた……ならぬ身が付けた技術だ。
「で、技を自分で使えばサクッと終わる……のかな? 双技──『蓮牙』」
二刀流用の技だが、軽くしているので斧でも使うことができた。
しなやかに腕が動くと、それぞれの腕が持つ斧を振るっていく。
首が次々と落とされ、再生しようとしても炎と雷がそれを妨げる。
牙が同時に体へ食い込むように、この技も無数の傷を相手に残す。
アヤさんが言った通り、すでに最後のボスであるヒュドラと戦闘中。
そして今、その命も儚く散っていく。
「……終わり。ミノさんよりも強い魔物、結局出てこなかったな」
「えっと、五十階層でそんなに強い魔物が出てくるのはおかしいと思うよ……たしかに、中ボスの方が強いとかは今は定番だけど。五十ぐらいなら大丈夫って、理事長さんに入ったけど……ここのは無理だったよ」
「まっ、反省会はあとでいいだろう。それよりほら──最後の層へ行く道が出たぞ」
「うん……行こう!」
そして俺たちは、学園迷宮の最深部を訪れるのだった。
……二回目だけど、アヤさんといっしょに居ると何か起こるのだろうか?
今年もよろしくお願いします<○>
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