スレ133 戦いを通じて仲は深まる
皆さん、大変お待たせしました!
五十層に立ちはだかるミノタウロス。
ボスなので大きめであることに加え、変異種ゆえの特異性を有している。
漆黒の毛並みを持ち、炎と雷の斧を握り締めたカッコイイ感じだ。
「──“魔力壁”、“魔力糸”」
部屋の中に生みだした、大量の壁。
それなりに魔力を籠めてあるので、壊すのは困難だ。
加えて、糸が部屋の至る所に張り付き壁や天井、床へ張り巡らされていく。
ミノタウロスの変異種も鬱陶しそうに切ろうとするが……いかんせん、数が多い。
「アヤさん、アヤさんはそこの糸に聖魔法を籠めてくれ。攻撃魔法ならアイツに、支援魔法なら用途に応じて糸で対象に送る」
「そんなことができるの!?」
「まあ、もともとは別の用途のために習っていたんだけど……とにかく、できるから使ってみてくれ。射程距離も伸びるしな」
「……や、やってみる。糸を通して、やればいいんだよね? ──“聖強化”!」
糸を通して伝わってきた魔法の流れを、俺の方に誘導して取り込む。
途端、漲る活力にやや驚き……そういえば【聖女】の聖魔法だったと納得する。
ただの聖魔法ではない、支援に半端ない補正が入るチート職……それが【聖女】なのだと教わっているからな。
「ちょうどいい──“魔力弾・炸裂”」
『ブモォオオオオオオオオ!?』
「ついでに拝借──“構造解析”」
糸を介して斧の情報を解析。
記憶する技術も叩き込まれているので、一度覚えればいつでも思いだせる。
何より、炎と雷の斧はかなりのレアアイテム……変異種が使うだけあって、そういう価値もありそうだったし。
そんなこんなで構成をすべて脳に焼き付けて、いつでも複製できるようにした。
今は剣を使っているから、変えて使う気にはならないけど。
「そうだ、剣か……刀技──『閃煌』」
剣と互換性のある刀の技を、ミノタウロスに向けて放つ。
本来は地面を踏み鳴らして使うのだが、今回は天井を蹴りつけて代用する。
返ってきたエネルギーを気功で押さえつけて、剣から放出。
斬撃という形で飛んでいったそれは、ミノタウロスの持つ双斧に阻まれた。
「やるな」
『モォオオ……』
そっちこそ、と言われたような気がする。
場所が違えば、もしかしたら分かり合えたかもしれない……が、今の俺たちは敵同士。
戦いを通じてしか、死合でしか繋がりなど存在しない。
互いにそれが分かっているからこそ、今この瞬間にすべてを注ぐ。
「……なんか、バトル物みたいな空気感があるんだけど」
「いや、思いのほか強くてな。今のままだとどうにも戦いづらくて」
「何か、手伝えることある?」
「うーん……とりあえず、見ていてくれればいいか? 危険になったら、全力で快復してくれればいいし」
ミノタウロスには強靭な再生能力がある。
しかし俺にはそんなもの無いので、外部から補うしかない。
ポーションを飲む暇も与えなさそうなミノタウロスの気迫から、先にアヤさんに回復を要求しておく。
「じゃあ行くぞ、ミノさん」
『ブモッ!』
「『ォオオオオオオオ!!』」
互いに切り札を隠しているのは、なんとなく察している。
俺であれば虚無魔法、ミノタウロス──いや、ミノさんの場合は似たようなナニカ。
変異種なのに、その変異した特殊な力を使用していたのだからすぐに分かる。
それでも純粋な力だけをぶつけあうこの時間が愛おしく、そのまま戦い続けていた。
「もう……やるしかないのか?」
『モォオ……』
「そっか、そうだよな。アヤさん、余波に備えて自分に防御魔法を!」
「えっ? あっ、うん……けどさっきからアサマサ君、なんだかミノタウロスと会話していなかった!?」
まったく、何を言っているんだか。
ミノさんとも顔を合わせ、お互いにそう思うと共感し合う。
「だからそれ、それだよ!」
「……なんのことだ?」
『……ブモゥ?』
「えー……もういいです。防御だよね、すぐにやるから──“神聖結界”」
張られた結界の強度を信頼し、俺たちは一段階枷を外す。
俺は虚無魔法による強化を、ミノさんは体毛に炎と雷を纏わせて。
「行くぞ。歩技──『天駆』」
『ブモォオオオオオオオ!!』
咆哮と共に吶喊してくるミノさんに対し、空を駆け巡る俺。
糸を反動に加速を重ね、速度を高めたうえで小さな声で魔法を使う。
「──“虚無鎌”、“第一質料・虚火”」
生みだしたのは万物切断の小鎌、そして摂理を歪めて生みだした虚空の火。
鎌に火は灯り、文字通り鎌が示す火力を増大させ──ミノさんとすれ違う。
「鎌技──『時去』!」
『モォオオ──ッ!!』
そして、互いに体の動きが停まった。
何もしない時間が数秒経ち、俺たちは最後の会話をする。
「いい戦いだったよな、俺たち」
『ブモォ……』
「次が有るなら……いや、野暮なことを止めようか。俺たちは互いに悔いのない、最高の死合をした。そうだよな?」
『ブモッ!』
それが共通の見解だ。
誰にもそれを否定させることはない、真実は俺たち二人の秘密となるのだから。
「──じゃあな、ミノさん」
『モォオオオ……』
「次に会う時は、いっしょにバカ話でもして笑い合おう」
そして、ミノさんは地面に倒れ伏した。
それでは、また一月後に!
……来年もよろしくお願いいたします
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