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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【祭りの始まり】面倒事対処 その06【無数の戦付き】

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133/138

スレ133 戦いを通じて仲は深まる

皆さん、大変お待たせしました!



 五十層に立ちはだかるミノタウロス。

 ボスなので大きめであることに加え、変異種ゆえの特異性を有している。


 漆黒の毛並みを持ち、炎と雷の斧を握り締めたカッコイイ感じだ。


「──“魔力壁(ウォール)”、“魔力糸(ストリング)”」


 部屋の中に生みだした、大量の壁。

 それなりに魔力を籠めてあるので、壊すのは困難だ。


 加えて、糸が部屋の至る所に張り付き壁や天井、床へ張り巡らされていく。

 ミノタウロスの変異種も鬱陶しそうに切ろうとするが……いかんせん、数が多い。


「アヤさん、アヤさんはそこの糸に聖魔法を籠めてくれ。攻撃魔法ならアイツに、支援魔法なら用途に応じて糸で対象に送る」


「そんなことができるの!?」


「まあ、もともとは別の用途のために習っていたんだけど……とにかく、できるから使ってみてくれ。射程距離も伸びるしな」


「……や、やってみる。糸を通して、やればいいんだよね? ──“聖強化(ホーリーブースト)”!」


 糸を通して伝わってきた魔法の流れを、俺の方に誘導して取り込む。

 途端、漲る活力にやや驚き……そういえば【聖女】の聖魔法だったと納得する。


 ただの聖魔法ではない、支援に半端ない補正が入るチート職……それが【聖女】なのだと教わっているからな。


「ちょうどいい──“魔力弾(ブリッド)()炸裂(エクスプロード)”」


『ブモォオオオオオオオオ!?』


「ついでに拝借──“構造解析(スキャン)”」


 糸を介して斧の情報を解析。

 記憶する技術も叩き込まれているので、一度覚えればいつでも思いだせる。


 何より、炎と雷の斧はかなりのレアアイテム……変異種が使うだけあって、そういう価値もありそうだったし。


 そんなこんなで構成をすべて脳に焼き付けて、いつでも複製できるようにした。

 今は剣を使っているから、変えて使う気にはならないけど。


「そうだ、剣か……刀技──『閃煌』」


 剣と互換性のある刀の技を、ミノタウロスに向けて放つ。

 本来は地面を踏み鳴らして使うのだが、今回は天井を蹴りつけて代用する。


 返ってきたエネルギーを気功で押さえつけて、剣から放出。

 斬撃という形で飛んでいったそれは、ミノタウロスの持つ双斧に阻まれた。


「やるな」


『モォオオ……』


 そっちこそ、と言われたような気がする。

 場所が違えば、もしかしたら分かり合えたかもしれない……が、今の俺たちは敵同士。


 戦いを通じてしか、死合でしか繋がりなど存在しない。

 互いにそれが分かっているからこそ、今この瞬間にすべてを注ぐ。


「……なんか、バトル物みたいな空気感があるんだけど」


「いや、思いのほか強くてな。今のままだとどうにも戦いづらくて」


「何か、手伝えることある?」


「うーん……とりあえず、見ていてくれればいいか? 危険になったら、全力で快復してくれればいいし」


 ミノタウロスには強靭な再生能力がある。

 しかし俺にはそんなもの無いので、外部から補うしかない。


 ポーションを飲む暇も与えなさそうなミノタウロスの気迫から、先にアヤさんに回復を要求しておく。


「じゃあ行くぞ、ミノさん」


『ブモッ!』


「『ォオオオオオオオ!!』」


 互いに切り札を隠しているのは、なんとなく察している。

 俺であれば虚無魔法、ミノタウロス──いや、ミノさんの場合は似たようなナニカ。


 変異種なのに、その変異した特殊な力を使用していたのだからすぐに分かる。

 それでも純粋な力だけをぶつけあうこの時間が愛おしく、そのまま戦い続けていた。


「もう……やるしかないのか?」


『モォオ……』


「そっか、そうだよな。アヤさん、余波に備えて自分に防御魔法を!」


「えっ? あっ、うん……けどさっきからアサマサ君、なんだかミノタウロスと会話していなかった!?」


 まったく、何を言っているんだか。

 ミノさんとも顔を合わせ、お互いにそう思うと共感し合う。


「だからそれ、それだよ!」


「……なんのことだ?」


『……ブモゥ?』


「えー……もういいです。防御だよね、すぐにやるから──“神聖結界(デイバインシールド)”」


 張られた結界の強度を信頼し、俺たちは一段階枷を外す。

 俺は虚無魔法による強化を、ミノさんは体毛に炎と雷を纏わせて。 


「行くぞ。歩技──『天駆』」


『ブモォオオオオオオオ!!』


 咆哮と共に吶喊してくるミノさんに対し、空を駆け巡る俺。

 糸を反動に加速を重ね、速度を高めたうえで小さな声で魔法を使う。


「──“虚無鎌(ホロウサイズ)”、“第一質料(マテリアル)()虚火(イグニス)”」


 生みだしたのは万物切断の小鎌、そして摂理を歪めて生みだした虚空(エーテル)の火。

 鎌に火は灯り、文字通り鎌が示す火力を増大させ──ミノさんとすれ違う。


「鎌技──『時去』!」


『モォオオ──ッ!!』 


 そして、互いに体の動きが停まった。

 何もしない時間が数秒経ち、俺たちは最後の会話をする。


「いい戦いだったよな、俺たち」


『ブモォ……』


「次が有るなら……いや、野暮なことを止めようか。俺たちは互いに悔いのない、最高の死合をした。そうだよな?」


『ブモッ!』


 それが共通の見解だ。

 誰にもそれを否定させることはない、真実は俺たち二人の秘密となるのだから。


「──じゃあな、ミノさん」


『モォオオオ……』


「次に会う時は、いっしょにバカ話でもして笑い合おう」


 そして、ミノさんは地面に倒れ伏した。



それでは、また一月後に!

……来年もよろしくお願いいたします

<○>

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