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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【祭りの始まり】面倒事対処 その06【無数の戦付き】

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132/138

スレ132 色違いは特別か使い回し

皆さん、お待たせしました!



「……何にも役に立ててない?」


「そうだな」


「……そこ、ストレートに言っちゃう?」


「言わなくても現実は変わらないしな。見えない幻想に縋るよりも、目に見えた現実を覆す方が簡単だって教わったん……だ!」


 魔法を放とうとしていた杖を握り締めていたミノタウロス、ソイツに向けて同じくミノタウロスから奪った大剣をぶん投げて首に命中させ、それからすぐに駆け抜ける。


 痛みに声を失い意識が逸れたその瞬間、強化を行った肉体で大剣の柄に体当たり。

 より深く首へ沈んでいった大剣は、そのままミノタウロスの息の根を奪う、


「……ユウト君と闘っている時から感じではいたけど、アサマサ君ってなんだか見た目よりも強いね……」


「……素晴らしい評価をありがとう。お蔭で俺は外見で相手を油断させられるって再認識できたよ……さて、これでもうあの扉まで、しばらく魔物は出てこないだろう」


「五十層……あそこにボスが居るんだね」


「そうだ。悲鳴も上げなくなったし、そろそろ入っても問題ないだろう」


 初期の方はミノタウロスが近づいてくるだけで悲鳴を上げていたが、慣らしていくことでだんだんとよくなり……何も言わないでついて来れるようになった。


 もともとあの国や教会なんかによって、精神を強くする修業はさせられていたそうだ。

 今回は相手が強かったのと、守ってくれるヤツが俺しかいなかったからダメだったと。


「ここのボスはまたミノタウロスだ。ちょっとばかしデカいが、先も言った通り俺はこの場所を攻略している。そう気を重くせずとも奥まで行けるぞ」


「……本当に? 怖くない?」


「別に問題ないだろう。それに、これまで見せ続けたのと大してやることは変わらない。ただ行って、倒して、進むだけだ」


「うん……元気が出てきた!」


 これまでの実績を思いだしたのか、少しは安心してくれたらしい。

 実際、彼女に求めているのは大人しくしていることなので竦んでいた方がいいんだが。


 それはそれで相手が強すぎてビビッてしまい、逃亡とかをされても困る。

 なので元気だけはちゃんと持っていて、その場に残るという選択肢を取ってほしい。


「じゃあ、そろそろ行くぞ」


「ま、待って! ……さっきまでは怖くて忘れちゃったけど、聖魔法をアサマサ君に使ってもいいかな? ほら、その方が熟練度を上げるのにちょうどいいし!」


「うーん……たしかにな。支援をしていた方が、レベル上げにも都合がいいか。ちなみになんだが、どういう魔法があるんだ?」


「えっと……基本の回復魔法、それに一度だけ魔法を減衰させる魔法かな? あとは祝福がある人にだけ使える、能力値に補正を掛ける魔法もあるよ」


 異世界人の場合、全員(地球神の加護)を授かっているので、その対象に含まれる。

 回復は……受けた時点で死ぬので関係ないが、それ以外は案外便利だ。


「後ろ二つを使ってくれるか? 回復魔法はその時々に使えばいいだろう」


「うん、分かった。それじゃあ始めるよ……“聖盾(ホーリーシールド)”、“神聖息吹(ディヴァインブレス)”!」


 純白の膜が俺を包み、天井があるのに上から光が降り注ぐ。

 神々しい……と思うのは、そういう類いの魔法だからだろうか?


「……凄いな、こんなに補正が入るのか」


「…………ユウキ君に使ったときよりも、効果がある気がする。アサマサ君、もしかして何か祝福を新しく授かっているの?」


「いや、そういう覚えはないんだが」


 リア充君こと【勇者】ユウキは、創造神の加護を賜わっていたはずだ。

 その加護よりも補正を高める存在の加護を持っている? それこそ冗談だと思う。


「たぶん、俺の低過ぎる能力値が原因なんだろう。元が小さい分、逆に神の力が何かしらの作用を起こして強化量を増幅してくれているのかもしれない」


「……初めてのケースだから、よく分からないな。とにかく、強い分には困らないよね」


「まあ、そうだな──じゃあ、行くぞ」


「うん、私も頑張るから!」


 そんな会話をしながら、五十層の扉を開いていく。

 中に居るのはミノタウロスの親玉、すでに倒しているのだから簡単だ。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 ……なんて、思っていたのがダメだったのだろうか。


「──変異種かよ。このタイミングでなんて運の悪い」


「……へ、変異種?」


「正しくは変異種(バリアント)、ホ°ケモンでたとえるなら色違いで6V確定みたいな感じの個体だ」


「それ、凄く厄介だね」


 大人気ゲームで例えたところ、聖女様にも理解していただけたようで。

 希少と貴重、どちらも兼ね揃えたその存在はゲームと違い凶悪な怪物である。


 これまでのミノタウロスが茶色の毛並みをしていたのだが、目の前に居る個体は漆黒に彩られ、その特別感を示していた。


「まあ、それでもやることは変わらないからいいんだけど──“構造複製(トレース)”」


「おおっ、剣が出てきた!」


「……今さらだけど、結構詳しいよな」


「ニワカだけどね。けど、それを使ってあのデカいミノタウロスに勝てるの?」


 どうせ毛並みは固いだろうし、握り締めている武器も厄介だ。

 右手には炎を燻らせる斧、左手には雷を迸らせる斧。


 二刀流……というか双斧使いのミノタウロス変異種相手に、これから俺は挑まなければならない。


「……よかったな、アヤさん。お蔭で上がるレベルも熟練度も通常種以上だ」


「もしかして、アサマサ君って……戦闘狂とかだったりする?」


「まさか。ただ、いつもと違ってアヤさんがいるからな。多少無茶をしても、助けてくれるだろう?」


「! うん、任せて。どんな傷でも絶対に治してみせるから!」


 これぐらいの相手を圧倒できないで、どうしてこの先訪れるであろう死の恐怖から逃れられようか。


 サーシャを呼べない以上、なんとしても自分で乗り切るしかない……予行演習の相手には、ちょうどいい魔物だな。



それでは、また一月後に!


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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