05.キーノ村へ…02
キーノ村が間近に迫り、戦況がはっきりと分かった。
ひなた(いくら魔物が大量発生したといっても、
ここまでいるなんておかしい…。しかも、A級魔物まで…。)
魔物の大量発生自体は、各地でときたま起きる現象ではある。
だけれど、この規模で、しかもA級魔物までいるとなると、
こんな小さな村に発生するなんて事例は、
今まで見たことも聞いたこともない。
ひなた(なにかがおかしい…。でも、それより今は…。)
腰の鞘から双剣を抜いて構える。
ひなた(とにかく、ここの魔物を片付けるのが先!!)
地上にいる魔物の群れへ一気に間合いを詰め、
次々に斬り倒していく。
アリシア「ひなたさん、サポートは任せてください!」
その声とともに、アリシアが祈りのポーズをすると、
私の体が一瞬淡く光り、身体強化魔法がかけられた。
ひなた(わぁ…聖女様の支援魔法受けたのは初めてだ。
これなら余裕~♪)
不敵な笑みを浮かべ、より素早く動き、
まるで遊ぶかのように魔物たちを翻弄し、
双剣で軽々と倒していった。
そして、わずか数分と経たないうちに、周辺の魔物は全滅した。
アリシア「はぁ~…すごいです、ひなたさん…。」
その光景に、感嘆の声をもらすアリシア。
ひなた「ふぅ…とりあえず、ここはもう大丈夫かな。」
ひと息つくと、軽く辺りを見回して確認する。
アリシア「ひなたさん…こんなにお強かったんですね。
びっくりしました…。
私、こんなにお強い方を近くで見たの、初めてです…。」
口をポカンと開け、呆然とこっちを見つめてくる。
ひなた「あ…そうだったんですね。」
とりあえずの返事をしつつ、辺りを見回す。
ひなた(意外に人が見当たらない。
ここにいないなら、村の中央か…それとも避難したか…。)
2人で、安全になったキーノ村の入り口から、村の中へと入っていく。
アリシア「村人を見かけませんね。
みなさん、避難されたのでしょうか?」
キョロキョロと村の中を見回す。
しかし、キーノ村の中央に近づくと、
そこでは、激戦が繰り広げられていた。
ひなた(へぇ…強い人がいたんだ。
あの掲示板に書かれてた、冒険者仲間って人かな?)
魔物を次々と倒していくその人物に目を向けると…
ひなた(あれ?もしかして…。)
ひなた「リッド?!」
思わずその人物に向かって叫んだ。
リッド「え?…ひなた?」
交戦しつつこっちを向いて、驚く。
ひなた「なるほどね、強いわけだ。」
クスッと笑うと、双剣を構えてリッドの元へ行き、
背中合わせになって魔物と交戦する。
リッド「おい、なんでお前がここにいるんだよ?」
ひなた「リッドこそ。王都にいなかったっけ?」
お互いに魔物をサクサクと倒しながら会話をする。
リッド「いたよ、いた。先週までな。
依頼でちょっとこっちの方に用あってさ、
それで、この村に昨日から滞在してるんだけど、
そしたら突然これだ。」
ひなた「『突然』? 前兆はなかったの?」
リッド「まるでなかったね。不自然な大量湧きだった。」
ただ会話だけしてるかのように淡々と情報交換しつつも、
お互いに魔物は倒し続ける。
ひなた「やっぱりそうなんだ。
今回の大量発生、なにかおかしいよね。」
リッド「だな。普通じゃ考えられない量と質だ。
まぁ、俺がたまたま滞在してたからよかったものの。」
ひなた「ここの村人たちは?」
リッド「早々に避難させた。
そっちは俺の仲間に守らせてるから大丈夫だ。」
そして2人で、村の中央に巣くっていた魔物の群れも壊滅させた。
リッド「よし、これで大丈夫だろ。」
ひなた「そうだね。」
お互いに周囲を確認し、剣を下ろす。
アリシア「あ、あの…ひなたさん。こちらのお方は…。」
恐る恐る私の方に近づいてきたアリシアが、
リッドをちらりと見やる。
ひなた「あ、うん。知り合い。
王都に拠点を置く、国直属の冒険者のリッドだよ。」
リッド「リッド・ワイアットだ。よろしく。」
アリシア「あ、アリシア・フォーレットです。
聖都エルクレムの大聖堂にて、聖女を務めています。
よろしくお願いいたします、リッドさん。」
アリシアが少し緊張した感じで、リッドに挨拶する。
ひなた「あ、それでリッド。アラタって人、知らない?」
リッド「アラタ?」
ひなた「そう。えっと見た目は…。」
と言いかけて、
アラタって人の見た目を、全く知らなかったことに今更気づいた。
ひなた「…あ~…全然、分からない。」
リッド「はぁ?! 分からなくてどうやって探すんだよ?!」
やっぱり、ツッコまれた…。
アリシア「あの、私が知っていますので。アラタさんの見た目。」
遠慮気味に手を挙げて言う。
ひなた「あ、そうなんだ?」
アリシア「はい。会う約束をしていたので、あらかじめ、
個人メッセージにて少しやり取りをした時に聞きました。」
リッド「それで、そのアラタってやつと、
このキーノ村で約束してたのか?」
アリシア「いえ。約束したのは、
ここの東に位置するエーデ村の聖堂でした。」
リッド「なら、なんでこっちに来たんだ?」
アリシア「それが…今日、会う約束をしたにも関わらず、
待ち合わせ場所に一向に現れず…。
連絡も確認したのですが、なにも反応がなくて…。
そこに、ユーザー掲示板に、
『キーノ村で魔物が大量発生した』という書き込みを見つけ、
心配になりまして…。」
リッド「なるほどね。で、ここに来たってわけか。」
アリシア「はい。」
ひなた「それでリッド。そのアラタって人、見かけた?」
リッド「まぁ、待て。特徴は?」
リッドがアリシアの方を見る。
アリシア「はい。短髪の黒髪で、背丈はあなたと同じくらい。
体格は細身で、緑色の上着を着ているそうです。」
リッド「ふぅん…。」
記憶を探るように考え込むリッド。
私とアリシアが、リッドを静かに見つめ、返答を待つ。
リッド「いた…とは思う。
今日も魔物騒動の前までは、見かけていた気がするんだが…。
その後すぐ、見かけなくなったんだよなぁ…。」
ひなた「え? ええと…それ、どういうこと?」
リッド「さぁ?俺にも分からないな。
魔物が大量発生したタイミングで、交戦しながら仲間たちとともに、
村人に避難誘導をしてたから余裕全然なくてさ。」
アリシア「そうですか…。
アラタさん、無事だといいんですが…。」
リッド「この村の魔物もさっきので全滅しただろうし、
とりあえず村の中を探してみるか?」
ひなた「そうだね。行こう。」
そして3人、そのアラタって人を探すために村を歩いて回った。
途中、避難所の方へ立ち寄り、リッドの仲間たちとも合流。
村人は全員無事だと聞き、
リッドは、一旦仲間たちとともに避難所の元へ向かった。
再び、アリシアとともにキーノ村を歩いてアラタって人を探す。
ひなた「見当たらないですね…。」
アリシア「ですね…。どこに行ったんでしょうか…アラタさん。」
村の中央広場に戻ってくると、ベンチに2人で座って休憩を取る。
アリシア「もう一度連絡がないか確認してみます。」
アリシアがそう言って、青い半透明のウィンドウ画面のメニューを開く。
アリシア「あ…っ!来てます、連絡!」
ひなた「え?本当?」
アリシアが、アラタの個人メッセージを開いて確認する。
アリシア「…『すみません。キーノ村まで辿り着いたのですが、
突然魔物が大量発生し、即死して死に戻り、
待ち合わせ場所に辿り着けませんでした。
今、リスポーン地点のここにいます。』って、書かれています。」
ひなた「…あぁ。やっぱりそういうこと起きてたんだね。
どおりで会えないわけだ。」
アリシア「アラタさんのリスポーン地点、このキーノ村から近いですね。
南に少し下った地域みたいです。」
ひなた「なら、今から向かう?」
アリシア「はい、そうしましょう。」
そう決めると、私とアリシアはリッドたちの元に向かい、
事情を話し、キーノ村から出て、一路、南へと向かった。




