第110話 リーダー
「え? 27階層を攻略されたんですか? パーティー名は?」
「勇者パーティー。あれ? アデル、パーティー名って勇者パーティーでいいんだっけ?」
パーティー名か。というか勝手に名乗っているだけでギルドにはパーティー登録していなかった。
「パーティー登録してないな。この機会にしておくか?」
「いいよ〜、パーティー名は勇者パーティーでいいの?」
「いいんじゃないか?」
パーティーの登録をすると、メンバーにアシュレイが含まれていたから、また受付の人が驚いていた。
「アシュレイさんがA、ドランさん、ココさん、アリサさんがB、レオンさん、アデルさんがCランクの6名パーティーですね。リーダーはアシュレイさんでよろしいですか?」
「リーダーはアデルでいいんじゃな〜い?」
「は? なんで俺なんだよ。レオンだろ」
レオンがリーダーは俺だとか言い出したが、意味が分からない。
メンバーの中で一番低いランクの俺とレオンがどっちがリーダーになるかと言い始めたせいで、受付の人が首を傾げている。
「アデルが俺を呼び寄せたんだからアデルで決まりね〜、他にリーダーになりたい人いる〜?」
誰も何も言わなかった。そして俺がリーダーということになってしまったんだ。
おかしいだろ。
「俺はメンバーの中で一番低いランクだ」
「それが何なの〜? うちのメンバー、ランクとか関係ないよね。俺だってCだし」
そして俺はワイバーンの肉焼き職人から勇者パーティーのリーダーという不相応な地位を得てしまった。なんでこうなった?
「27階層の攻略の件で情報提供をお願いしたいのですが、お時間いただけますか?」
「いいよ〜、全員じゃなくていいんだよね?」
「ええ、お話いただけるのであれば、全員でなくても構いません」
「じゃあリーダーよろしくね。俺、武器買いに行くからさ〜」
そういうことか……
リーダーとか言っておいて、面倒ごとを押し付けるための地位だったか。
「私もアデルと残りますよ。ダンジョンのことでしたら、補足できると思いますし」
アシュレイ、いい奴だな。助かるよ。
ワッフ〜
ん? ポチも一緒に残ってくれるのか? お前も優しいな。
ということで俺とアシュレイとポチがギルドに残ることになった。
そのまま奴らは街に繰り出していき、俺たちはギルマスの部屋に通された。
「勇者パーティーのリーダーのアデルとは君のことか? 俺はギルマスのハックだ」
「アデルだ。名ばかりのリーダーで戦闘能力はメンバーの中でも下から数えた方が早い」
「だろうな。Cランクだと聞いている」
何も知らん俺よりも弱い奴に「だろうな」などと言われるのは癪だな。アシュレイがリーダーでないのが、ハックという男にしてみれば不満なのかもしれない。
「ハック、勘違いをするな。私はギルドのランクだけは高いが、戦闘能力が一番低いのは私だ。アデルは下から数えた方が早いと言ったが、私がアデルと戦えば瞬殺されるほど実力差がある」
「は? アシュレイが瞬殺だと?」
瞬殺は無理だとしても、負けはしない自信がある。ハックの態度が気に入らなかったのか、アシュレイが丁寧な言葉を使わないのは珍しい。
ワッフ〜
ポチがソファに座る俺の膝の上に乗ってきた。行儀は悪いが、まだ子どもだから許してやるか。今日もドランを止めるためにいい仕事してくれたし。そう思いながらそれぞれの頭を撫でてやる。柔らかい毛並みだ。
「そ、それは……まさかケルベロスか?」
「そうだ」
「アデル殿は、ケルベロスを従えているのですか?」
いきなり敬語を使い始めたハックに笑いが漏れそうになる。
「こいつはうちのメンバーのペットだ。俺が従えているのはシュピリツァイクベアとブラッディオーガだ」
「オーガ……」
「ランクだけで人を見るのはやめることですね」
ギルマスは慌てて紅茶を手ずから淹れ、お茶菓子まで出してくれた。待遇の差が酷い……
27階層のボスのことや、階段を下りたところにポータルがあったことも話した。
攻略したが、地図を作れるほど動き回ったわけではないから、そこは後続者たちに任せることにしよう。28階層が海だということも伝えた。
そして丁寧に頭を下げるハックに見送られてギルドを後にした。
「アシュレイ、実力差があると言ったが、今日だけでもレベルはいくつか上がったんじゃないか?」
「ええ、正直恐ろしいと思いました。ここ数年は全くレベルが上がっていなかったので……」
「経験値上昇の影響だな。これからもどんどん上がるぞ。俺は恐怖を感じてしばらくステータスを見ていない」
もう一生見ることはないかもしれない。
そんなことを思いながら、アシュレイお勧めのフルーツたっぷりパンケーキの店に入って、宝石のように綺麗な艶々のフルーツがたっぷり乗ったパンケーキを堪能した。
これ美味いな。




