第108話 ボスっぽいやつ
「あれは〜? いかにも毒持ってそうな紫の縞々の虎がいるよ」
「斬新な色の虎だよね」
「普通は黄色と黒だよね〜」
「ホワイトタイガーってのもいたよね?」
「あ〜いたいた!」
レオンとアリサが話しているが、タイガーといえば緑と黒だろ。
「タイガーと言えば緑と黒だよな?」
「私もそう思っていました」
「私は初めて見るわ」
「俺も緑と黒だと思ってた」
ドランが言えば、アシュレイが同意してココは初めて見るらしい。初めて見るのが変異種の紫色ってのはなかなか珍しいことだ。
異世界にもタイガーがいるのなら、魔法もなく、剣も所持できないのにどうやって倒すんだ? まさか素手か? 異世界人は身体能力が高いんだろうか?
後に『動物園』とかいう、動物を見世物にする場所があるのだと聞いて驚愕した。危険じゃないのか? 魔物によっては魔法を使ってくるだろ。いや、魔法はないんだったな。じゃあ大丈夫なのか?
そんなものその辺の森に行けばいるのにな。わざわざ恐ろしいものを見に行くなど、レオンたちがいた世界は面白いことを考えるものだ。
紫のタイガーはやはり毒の霧を吐いてきた。俺たちには効かないけどな。
でかいから動きは遅いのかと思ったが、かなり速かった。ドランの盾は潰れたから、でかい剣を盾代わりに受けているが、結構な威力だ。
飛ばされそうになるのを必死に耐えている。
アリサの遊撃もなかなか苦戦していて、アシュレイが放つ矢はちゃんと刺さっているのにダメージを受けているようには見えない。
ココとレオンがなかなか連携が上手く取れずに、タイミングを合わせられないでいるし、俺は遠距離からちまちま足を狙って風の刃を出したり、障壁で攻撃を防いだりしているが、何かおかしい。
「あいつ、回復してないか?」
「マジか〜、ちょっとアデル鑑定してみてよ」
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種族:トキシンティガー
レベル:32
攻撃力:98,000
防御力:180,000
魔法:風
スキル:毒素生成、身体強化、俊敏、超回復、無痛
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マジか。防御力高すぎだろ。超回復と無痛のせいで攻撃を受けても動きが変わらないんだな。
「防御力が180,000あるぞ。毛皮自体が硬いんだろう。超回復、無痛、俊敏もある」
「無痛? それはヤバいね。攻撃受けても効いてないように見えるのはそのせいかも〜、実際に効いてないのかもしれないけど」
ドランが爪でザクッとやられて、レオンが治癒している間にココとアシュレイでなんとか食い止めているが劣勢だ。
俺はレオンの辺りに障壁を展開しながら、風の刃ではなく魔力を多く込めた槍を飛ばしての攻撃に切り替えた。
毛皮として高く売れるのかは分からないが、あれだけの防御力があるのなら、革鎧にしたらかなりの性能になりそうだ。できれば大きな傷を付けないように倒したい。
そんな余裕もないが、金は大事だ。
「バフかけるか?」
「アデルお願〜い」
ココが一旦離脱し、障壁を盾代わりに使いタンク役をしている。その間にレオンとドランが攻撃を仕掛けていく。
そっちの方が連携が取れていいな。ココとレオンが上手く連携できなかったというより、ドランがタンク役として下手だった気がする。それは仕方ない。今までタンクなどやっていないし、防戦もやったことがないんだろう。どちらかと言うと力でのゴリ押しで最初から全力で攻撃を仕掛けるようなタイプのドランに、タンクをやらせるということが間違いだったんだ。
最近俺はバフを覚えた。勇者の伝記を読むときに気になったから少し調べてみたんだ。
俺は前衛は無理だし、魔法攻撃という部分ではレオンに敵わない。結界はココの役割だし、俺のいる意味というか後方で何ができるかと考えたときに見つけたのが味方の能力値アップだった。
魔力は上がらないが、速度や防御、攻撃の強度は上がるから、これはいいと思ったんだ。
ドランが怪我をしたことから、防御は上げるとして、攻撃か。
連携はいいんだが、レオンがどうも本調子ではないように見える。レオンなのかバルムンクなのか、神殿の時は出てこなかったし。
ダンジョンが嫌いなのか?
まあいい。レオンは万が一にも倒れることはないだろうし、誰も死ぬような大変なことにはならないと確信があるから、こうして色々考えながら試していけるんだ。
「ココ、前衛に戻るか?」
「今の私にはまだあれは荷が重いわ」
「そうか。じゃあ結界と遠距離攻撃で援護するか」
「そうね。アリサはいいけど、アシュレイもそろそろキツそうだから下がるかもね」
そうココが言うと、アシュレイがタイミングを見て下がった。
まだアシュレイはパーティーに入って間もないから、レオンがコピペしたスキル、主に経験値上昇の恩恵をほとんど受けていない。そのうちアシュレイも人間辞めることになるんだが、まだ今は人だ。
「ちょっと俺、前衛キツイかも〜、バルムンクがちょっと不調なんだよね。もう魔法で一撃でやっちゃっていい〜?」
「いいぞ。それなりに楽しんだ」
ドラン、お前はちゃんと休んで地になるものを食え。
みんながそれぞれ了承の声を上げていくと、レオンが鋭い光の槍を飛ばして、本当に一撃で倒した。
「何? どうなってんの?」
戸惑うレオンの声が聞こえると、紫のタイガーであるトキシンティガーが光に包まれて粒子になって消えた。
珍しそうで高く売れそうな素材が……
「やはりあれが階層ボスですね。階層ボスを倒すと下層への鍵だけを残して消えると言われているんです」
アシュレイがあの現象を説明してくれた。なんだ。最初からあいつの素材は期待できなかったということか。
「鍵あったよ〜」
「早く階段を探して休憩スペースで休みたい」
「そうだな」
アリサもドランも一度休憩したいようだ。俺も実践でいきなり慣れないバフをかけてみたが、かなり神経を使って疲れた。課題が残る実戦だった。
階段を探して彷徨い歩くこと小一時間、ボスでなければ魔物と遭遇してもドランが楽しそうに倒しているし、バルムンクも調子を取り戻したらしい。
「あった〜」
下層へ続く階段は、五段ほど下りたところに扉があり閉ざされている。ここを開ければ、27階層の攻略となるんだな。おそらくあと二階層でポータルがあるから、今日はそこまでだな。
そう思いながらレオンが鍵をさしこむのを眺めた。
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