第107話 攻略されていない階層って
26階層は森だった。火山に比べたら涼しい。
ちらっと覗いて休憩スペースに戻り、アシュレイに浄化をかけてもらってから着替えて昼食をとった。買い置きしておいたスープと、パンに焼きたてのトロトロのチーズを乗せて食べる。
アシュレイは更にその上に蜂蜜をかけていた。本当に甘いものが好きなんだな。
「アシュレイってさ、甘いもの好きだよね。マイ蜂蜜なんか壺で買ってるし」
「そうですね。甘いものは私の癒しです」
「蜂蜜以外にも砂糖とか持ってるの?」
「私は料理をしないので砂糖は持っていません。以前はメープルという木の樹液を煮詰めたものを持っていましたが、使い切ってしまいました」
樹液を煮詰めて甘味ができるなんて知らなかった。虫が集まっているのを見たことがあるから、樹液って甘いんだろうな。
「パンケーキにかけたら美味しいやつだよね?」
「ご存知でしたか」
「アリサも知ってるよね? メープルシロップ」
「うん。この世界にもあるんだね」
樹液から作る甘味はレオンたちがいた世界にもあるのか。ちょっと気になる。
いつか食べてみたいものだ。
ドランはすっかり栗の虜になっており、今も黙々と栗のジャムをパンに乗せて食べている。
「そろそろ行く〜?」
レオンの声で椅子やテーブルを片付け、26階層に踏み出した。
「なるほど、ここは大型の魔物がいるのか〜」
「ミノタウロスは美味いからストックしておきたい」
大型というよりは、巨大化した魔物な気がする。さっき見かけたウルフも通常種と比べて倍くらいあったし、目の前のミノタウロスもデカすぎる。
「バルムンクがやっとやる気になったみたい。ちょっと俺別行動するから後で呼んで〜」
レオンはそう言うと、ポチすら置いて風のように消えた。
「ドランはダメだぞ」
ちょっと不満そうな顔をしたドランは、レオンと同じように一人で勝手にどこかへ行くつもりだったんだろう。戦うなと言っているわけじゃないんだから協調性を身につけろ。
結局ドランが好きなように動くのを、俺たちが付き添って見守ったり、たまにみんなにも戦わせてあげたりという感じで進んでいった。俺は戦いを欲しているわけじゃないからポチと共に見守ることに徹していた。
「そろそろレオンを呼ぶか」
「そうだな。先に進んでポータルを見つけるか、ダンジョンを制覇しないと20階層に戻らないといけなくなる」
それは勘弁してほしい。神殿はいいが火山はもう行きたくない。
レオンを呼んで27階層へ向かう。
「アシュレイ、27階層より下って誰も行ってないんだよね?」
「そうなんです。まずはこの階のボスを見つけて鍵を得て、それから下層へ続く階段も探さなければなりません」
「へぇ〜そうやって下っていくんだ」
ダンジョンの仕組みなど考えたこともなかったが、そうなのか、ただ下に降りる階段を探せばいいってわけではないんだな。ボスか。アンデッドのところにいた主ってやつとは違うんだよな? あんな高位のリッチみたいな存在がいたら倒すのはかなり難しいと思う。
27階層の森に足を踏み入れた感じは、さっきの階層と似たような森だったが、この階層は情報が少なくて、ボスがどんな魔物なのかも分かっていないそうだ。
出てくる魔物も巨大化したコカトリスと、アスプが出たことは分かっているが、それ以外に何が出るのか分からない。
この階層で終わりならいいんだが、更に下があるのなら、ポータルがある階層まで下りたい。
だが、どこにいるか分からないボスを探し……というかそれがボスだとどうやったら分かるんだ? 倒してみないと分からないのか? その後、広いこの階層の中から階段を見つけなければならないなんて……
強いだけではダメだ。根気がいるし、ダンジョン攻略に時間がかかる理由が分かった気がした。
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