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異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~  作者: 椿綺
第七章 家族の選択

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第九十話 最後の依頼

グラディウスが消え去った戦場は


静寂に包まれていた


誰も武器を構えない


誰も叫ばない


そこに残っていたのは


安堵だけだった


――――


魔王は静かに剣を鞘へ納める


国王も


ゆっくりと剣を下ろした


二人は互いを見つめる


百年以上


敵として向き合ってきた二人だった


長い沈黙のあと


最初に口を開いたのは


魔王だった


「今日」


「余は人間に命を救われた」


「礼を言う」


国王は静かに頷く


「我らも同じだ」


「あなた方がいなければ」


「この国は滅んでいた」


再び静寂が訪れる


しかし


今度の沈黙は


敵意ではなかった


――――


浩平は二人の間へ歩み出る


「陛下」


「魔王様」


「お願いがあります」


二人は浩平を見る


「百年前」


「人間と魔族は」


「一緒に世界を守りました」


「そして今日」


「もう一度」


「一緒に世界を守りました」


浩平は静かに微笑む


「だったら」


「もう戦う理由はありません」


「これからは」


「一緒に未来を築きませんか」


風が静かに吹き抜ける


国王はゆっくりと右手を差し出した


「共に歩もう」


魔王は少し驚いた表情を見せる


やがて


穏やかに笑う


「ああ」


「百年は長すぎた」


その手を


しっかりと握り返した


――――


その瞬間


王国軍から歓声が上がる


魔族軍も


武器を掲げ


互いを称え合う


涙を流す者もいた


笑い合う者もいた


戦争は


終わった


本当の意味で


終わったのだ


――――


工具箱が


静かに光る


浩平はそっと蓋を開く


表示が浮かび上がる


【特別依頼】


魔王との戦争を終わらせてください


【達成】


続いて


新しい文字が現れる


【報酬】


世界の平和


受領を確認しました


そして最後に


ゆっくりと


表示が変わる


【便利屋】


【依頼完了】


浩平は思わず笑った


「はい」


「完了です」


静かに工具箱を閉じる


――――


魔王が浩平へ歩み寄る


「便利屋」


「最後に一つ聞かせてくれ」


「何でしょう」


「お前は」


「なぜそこまで人を助ける」


浩平は少し考え


照れくさそうに笑った


「困ってる人を見たら」


「放っておけないだけです」


「それが」


「便利屋ですから」


魔王は大きく笑った


国王も笑う


円も


エリオットも


兵士たちも笑った


その笑い声は


百年間続いた争いを包み込み


新しい時代の始まりを告げていた


ここまで『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をお読みいただき、本当にありがとうございます。


第八章では、浩平が便利屋として受けた最後の大きな依頼を描きました。


「魔王討伐依頼」という章タイトルでしたが、浩平が選んだのは、魔王を倒すことではなく、戦争を終わらせる道でした。


そして、どうしても守らなければならない命のために、初めて剣を握ります。


その剣は勇者の聖剣ではなく、便利屋だけに託された最後の工具――『修復の剣』。


壊すためではなく、未来を取り戻すために振るわれた一振りでした。


人間と魔族が再び手を取り合い、長く続いた争いに終止符が打たれました。


けれど、浩平の旅はまだ終わりではありません。


残された仲間との別れ。


帰る場所。


そして、本当に大切なものとは何だったのか。


最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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