第八十八話 修復の剣
眩い光が
戦場を包み込む
浩平は
ゆっくりと柄を握った
不思議なことに
重さは感じない
手に吸い付くような感覚だった
ゆっくりと引き抜く
カシャン……
工具箱から姿を現したのは
一本の美しい剣だった
派手な装飾はない
透き通るような白銀の刀身
柄には
工具箱と同じ紋章が刻まれている
工具というには
あまりにも美しかった
工具箱へ表示が浮かぶ
【戦闘用工具】
《修復の剣》
【使用者確認】
相澤浩平
【最終依頼限定】
【使用を承認しました】
――――
魔王は目を見開く
「その剣は……」
「伝説の聖剣か」
浩平は首を横へ振る
「違います」
剣を静かに構える
「これは」
**「便利屋の工具です」**
その言葉に
魔王は思わず笑った
「最後まで」
「お前らしいな」
――――
グラディウスが咆哮を上げる
巨大な腕が
浩平へ振り下ろされる
浩平は避けない
一歩踏み込む
「浩平!」
円の叫びが響く
剣を横へ払う
キィィン……
白い軌跡が走る
グラディウスの腕が
静かに宙を舞った
「なっ……!」
魔王も
兵士たちも
言葉を失う
初めて
グラディウスが傷付いた
――――
怒り狂ったグラディウスは
全身から黒い瘴気を放つ
周囲の兵士たちが吹き飛ばされる
浩平は振り返る
「円!」
「みんなを!」
円はすぐに頷く
「任せて!」
王国軍と魔族軍は
協力して負傷者を避難させる
浩平は
一人
グラディウスの前へ立った
――――
工具箱が静かに光る
新たな表示が現れる
【修復の剣】
【対象へ十分な損傷を確認】
【最終工程へ移行します】
浩平は小さく息を吐く
「最終工程……」
表示は続く
【心を込めて振るってください】
思わず浩平は笑った
「最後まで」
「工具箱らしいな」
剣を握り直す
「俺は」
「勇者じゃない」
「便利屋だ」
「でも」
「守りたい人がいる」
「だから」
「この依頼を終わらせる」
浩平は大地を蹴った
白銀の剣が
青空へ向かって輝く
その一撃が
百年続いた悲しみに
終止符を打とうとしていた




