第八十七話 最後の工具
グラディウスは
ゆっくりと王都へ向かって歩き始めた
その一歩ごとに
大地が揺れる
兵士たちは必死に攻撃を続ける
しかし
剣も魔法も
巨大な身体には傷一つ付けられない
「駄目だ!」
「止まらない!」
絶望が戦場を包み始めていた
――――
浩平は前へ出る
大きなハンマーを握り
真正面から飛び込む
全力で振り下ろす
ドォン!
鈍い音が響く
だが
グラディウスは僅かによろめいただけだった
浩平は静かに距離を取る
「やっぱり……」
「これじゃ届かないか」
――――
魔王も隣へ並ぶ
「便利屋」
「もう十分だ」
「後は余が時間を稼ぐ」
浩平は首を横へ振る
「まだです」
「まだ終わってません」
その瞳には
迷いがなかった
――――
その時だった
工具箱が
今までにないほど強く光り始める
眩しい光が
戦場全体を包む
浩平は思わず工具箱へ目を向けた
表示が浮かぶ
【最終依頼】
【解析完了】
【戦闘用工具】
文字が一文字ずつ現れる
浩平は息を呑む
【使用承認を確認】
【支給準備中】
蓋が
ゆっくりと開いていく
中から溢れる
金色の光
誰も見たことのない輝きだった
魔王も
円も
兵士たちも
思わず息を呑む
「何だ……あれは」
浩平は静かに手を伸ばす
しかし
まだ握らない
工具箱の中には
一本の柄だけが見えていた
表示が最後に変わる
【戦闘用工具】
**《修復の剣》**
【支給します】
浩平は
静かに微笑んだ
「最後の工具か」
その手が
ゆっくりと柄を握る
その瞬間
戦場全体が
眩い光に包まれた




