第八十六話 歴史が語るもの
戦場では
人間と魔族が力を合わせ
魔物の群れを押し返していた
しかし
封印獣グラディウスだけは
微動だにしない
兵士たちの攻撃を受けても
傷一つ付いていなかった
――――
「くそっ!」
王国軍の隊長が剣を振るう
鋭い一撃が甲殻へ当たる
しかし
金属を叩いたような音だけが響く
魔王も魔法を放つ
巨大な炎がグラディウスを包む
だが
炎が消えると
そこには無傷の姿があった
「馬鹿な……」
四天王の一人が息を呑む
――――
浩平は工具箱を見つめる
表示は変わらない
【解析中】
「何を調べてるんだ……」
その時
魔王が静かに口を開いた
「伝承では」
「グラディウスを倒した者は一人もいない」
浩平は顔を上げる
「倒してない?」
「ああ」
「数百年前」
「人間と魔族は協力して」
「封印することしかできなかった」
円は驚く
「そんな相手なの……」
魔王は静かに頷いた
「だから今も恐れられている」
――――
その時だった
工具箱が強く光る
【解析完了】
浩平は思わず工具箱を開く
表示が変わる
【対象】
封印獣グラディウス
【通常工具では対応できません】
【最終依頼専用工具の使用条件を確認しています】
浩平は息を呑む
「最終依頼専用工具……」
その表示は
すぐに消えた
――――
魔王が浩平を見る
「何か分かったのか」
浩平は少し迷い
正直に答えた
「まだ分かりません」
「でも」
「工具箱は」
「何か方法があると言っています」
魔王は静かに笑う
「ならば信じよう」
「便利屋の工具箱を」
浩平も笑った
「俺も」
「相棒を信じます」
――――
その瞬間
グラディウスが
大きく咆哮を上げる
地面が割れ
衝撃波が戦場を駆け抜けた
王国軍も
魔族軍も
吹き飛ばされる
浩平は円をかばいながら踏ん張る
「円!」
「私は大丈夫!」
土煙の向こうで
グラディウスが
ゆっくりと歩き始めた
その進む先には
王都があった
浩平は拳を握る
「絶対に……」
「ここで止める」




