第八十五話 初めての共闘
封印獣グラディウスが
大地を踏み鳴らす
その一歩ごとに
地面が激しく揺れた
続いて
森の奥から無数の魔物が姿を現す
王国軍にも
魔族軍にも
緊張が走る
――――
「全軍構え!」
王国軍の隊長が叫ぶ
それと同時に
魔王も右手を掲げた
「魔族軍!」
「迎え撃て!」
両軍が動き出す
だが
互いへ剣を向ける者は
もう誰もいなかった
――――
浩平は工具箱を開く
静かに光が溢れる
【依頼遂行に必要な工具を支給します】
現れたのは
大きなハンマー
鋼鉄製のワイヤー
固定用の杭
「いつもの相棒か」
浩平は笑う
工具を手に取り
前へ走り出した
――――
巨大な魔物が
王国軍へ迫る
浩平は地面へ杭を打ち込む
カンッ!
カンッ!
ワイヤーを一気に張る
突進してきた魔物の足が絡まり
勢いよく転倒した
「今です!」
兵士たちが一斉に飛び出す
魔物は瞬く間に倒された
「すごい……」
王国軍の兵士が驚く
「こんな戦い方が……」
――――
反対側では
飛行する魔物が
魔族軍を襲っていた
浩平は工具箱から
長いロープを取り出す
近くの木へ結び
勢いよく投げる
ロープは翼へ絡み付き
魔物は地面へ落下した
魔族の兵士がとどめを刺す
「助かった!」
浩平は笑顔で頷く
「お互い様です」
その一言に
魔族の兵士も笑った
――――
戦場では
人間と魔族が
自然に声を掛け合っていた
「左を頼む!」
「任せろ!」
「負傷者だ!」
「こっちへ運べ!」
百年以上続いた戦争ではなく
一つの軍隊のようだった
――――
しかし
グラディウスだけは動かない
巨大な体で
戦場を見下ろしている
魔王が険しい表情で呟く
「あれは」
「普通の攻撃では倒せぬ」
浩平も見上げる
あまりにも巨大だった
その時
工具箱が小さく震えた
しかし
何も出てこない
表示だけが浮かぶ
【解析中】
【対象を確認しています】
浩平は表示を見つめる
「解析?」
魔王も浩平を見る
「何か分かったのか」
浩平は静かに首を横へ振る
「まだです」
「でも」
「工具箱が何かを調べています」
グラディウスは
ゆっくりと咆哮を上げる
その咆哮は
空さえ震わせるほどだった
浩平はハンマーを握り直す
「本番は」
「これからですね」
誰もが
その言葉の意味を理解していた




