第八十一話 国境への道
# 第八章 魔王討伐依頼
人を助けること。
それは橋を直すことかもしれない。
時計を修理することかもしれない。
困っている人の背中をそっと押すことかもしれない。
便利屋として歩み続けてきた浩平は、数え切れないほどの依頼を通して、多くの人と信頼を築いてきました。
そして今、その歩みは物語最大の依頼へとつながります。
魔王との戦争を終わらせること。
剣だけでは解決できない問題。
力だけでは届かない想い。
これまで積み重ねてきたすべてが、この章で試されます。
便利屋・相澤浩平が選ぶ答えを、最後まで見届けていただけたら幸いです。
王都を出発して
半日が過ぎた
街道には
荷馬車が行き交い
旅人たちが足早に行き交っている
しかし
北へ進むにつれて
その数は少しずつ減っていった
「空気が変わってきたね」
円が小さく呟く
浩平も静かに頷く
「国境が近いからだろうな」
――――
案内役のエリオットが
前方を指差した
「あの丘を越えれば」
「国境の砦です」
浩平は周囲を見渡す
畑は手入れされている
村もある
人々は普段どおり暮らしているように見えた
「思ったより平和ですね」
浩平がそう言うと
エリオットは少し寂しそうに笑った
「表向きは……です」
「いつ何が起きてもおかしくありません」
その言葉に
円は静かに空を見上げた
――――
砦へ到着すると
兵士たちが慌ただしく動いていた
武器の点検
荷車への食料の積み込み
見張りの交代
誰もが忙しそうだった
隊長らしき男が
エリオットへ敬礼する
「ご苦労様です」
「状況は」
「昨夜と変わりありません」
「魔族側にも動きはありません」
「ですが」
「互いに警戒を続けています」
浩平はその報告を聞き
少し安心した表情を浮かべる
「まだ」
「間に合うかもしれない」
――――
その夜
浩平は砦の見張り台へ上がった
遠くには
魔王領の森が広がっている
静かだった
争いの気配はない
「浩平」
円が隣へ立つ
「眠れないの?」
「少し考え事をしてた」
「戦争って」
「始めるのは簡単だけど」
「終わらせるのは難しいんだろうな」
円は浩平の肩へそっと寄り添う
「だから」
「あなたがいるんでしょ」
浩平は少し照れながら笑った
「期待され過ぎかな」
「違うよ」
「私は知ってる」
「浩平は」
「壊れた物だけじゃなくて」
「人の心もつないできた」
その言葉に
浩平は静かに頷いた
――――
その時だった
見張りの兵士が声を上げる
「隊長!」
「魔王領から」
「使者らしき一団がこちらへ向かっています!」
砦の空気が一変する
兵士たちは武器を手に取り
緊張が走る
浩平はゆっくり立ち上がった
「……使者?」
争いではなく
対話のために現れたのか
それとも――
静かな夜は
新たな局面を迎えようとしていた




