第八十話 夫婦の決意
王城を後にした浩平と円は
夕暮れの王都を並んで歩いていた
行き交う人々は
いつもと変わらない日常を過ごしている
パンを買う親子
店先で笑い合う商人
広場で遊ぶ子どもたち
その光景を見つめながら
浩平は静かに口を開いた
「この景色を」
「守りたいな」
円は小さく頷く
「日本のみんなと同じだね」
「うん」
「異世界も日本も」
「大切な人が暮らしてることに変わりはない」
――――
宿へ戻ると
浩平は工具箱を静かに開いた
依頼書はもう消えている
工具が静かに並ぶだけだった
円はその隣へ腰を下ろす
「怖い?」
浩平は少し考え
素直に頷いた
「怖いよ」
「失敗したら」
「たくさんの人が悲しむ」
円は浩平の手へ
そっと自分の手を重ねた
「でも」
「一人じゃない」
浩平は円を見る
「私もいる」
「王都のみんなもいる」
「きっと」
「魔族にも」
「戦いたくない人がいる」
浩平は小さく笑った
「そうだな」
「だから」
「最後まで諦めない」
――――
翌朝
王都の門には
エリオットが待っていた
「準備は整いました」
浩平は頷く
「ありがとうございます」
「国境までは私が案内します」
円も静かに頭を下げる
「よろしくお願いします」
三人は歩き始める
門番たちは
何も知らないまま
笑顔で見送ってくれた
「行ってらっしゃい!」
「気を付けて!」
浩平は笑顔で手を振る
「行ってきます」
――――
王都を振り返る
ここへ来た頃は
知り合いなど誰もいなかった
今では
帰る場所の一つになっている
浩平は工具箱を肩へ掛け直した
「よし」
「行こう」
円も笑顔で頷く
「うん」
二人は
未来を変えるための一歩を
静かに踏み出した
ここまで『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をお読みいただき、本当にありがとうございます。
第七章では、浩平と円、そして家族それぞれの想いを描いてきました。
離れていても変わらない絆。
支え合い、背中を押し合う家族。
この章を書きながら、改めて家族の温かさを感じました。
浩平と円は再会を果たし、ようやく夫婦として同じ時間を過ごせるようになります。
そして、円もまた浩平が異世界で築いてきた絆に触れ、この世界が浩平にとってもう一つの大切な居場所になっていることを知りました。
しかし、王都には少しずつ不穏な空気が流れ始めます。
その先に待っているのは、浩平が便利屋として受ける最大の依頼。
それがどんな結末へつながるのか。
次章も、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
引き続き『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をよろしくお願いいたします。




