第七十六話 浩平が歩いた道
翌朝
工房の窓から
柔らかな朝日が差し込む
円はゆっくり目を覚ました
「よく眠れた?」
浩平が笑顔で声を掛ける
「うん」
「久しぶりに安心して眠れた」
円も笑顔で答えた
――――
二人は王都へ向かって歩き始める
「ここが王都なんだ」
円は周囲を見回す
石畳の道
賑やかな市場
元気に走る子どもたち
異世界とは思えないほど
穏やかな景色だった
「思ってたより普通だね」
「俺も最初はそう思ったよ」
二人は顔を見合わせて笑う
――――
職人ギルドへ入ると
受付の女性が浩平に気付いた
「浩平さん」
「お帰りなさい」
「おはようございます」
浩平が挨拶すると
女性は円へ目を向ける
「こちらの方は?」
浩平は少し照れながら答えた
「妻です」
その一言で
ギルドの中が静まり返る
「えっ」
「奥さん?」
職人たちが次々と集まってくる
グラントも工房から姿を現した
「浩平君」
「その方が」
「いつも話していた奥さんか」
浩平は少し照れくさそうに頷く
「はい」
円は深く頭を下げた
「円です」
「いつも主人がお世話になっています」
――――
グラントは大きく笑った
「礼を言うのはこっちだ」
「浩平君には何度助けられたか分からん」
商人エドガーもやって来る
「奥さん」
「旦那さんは王都一の便利屋ですよ」
パン屋の主人も笑う
「困ったら真っ先に浩平さんを探すくらいだからな」
次々と聞こえる感謝の言葉
円は驚きながら
浩平を見る
「浩平」
「本当に頑張ってたんだね」
浩平は照れ笑いを浮かべる
「みんなが助けてくれたからだよ」
その言葉に
グラントが首を横に振る
「違う」
「浩平君だったから」
「みんなが力を貸したんだ」
その場にいた全員が
静かに頷いた
――――
ギルドを出た帰り道
円が浩平の腕へそっと手を添える
「嬉しかった」
「みんな」
「浩平のことを本当に信頼してるんだね」
浩平は少し照れながら笑う
「ありがたいよ」
円は空を見上げる
「私も嬉しかった」
「そんな浩平の奥さんで」
浩平は照れ隠しに頭をかく
「急にそういうこと言うなよ」
円は少しだけいたずらっぽく笑う
「本当のことだから」
二人は並んで歩く
王都の人々は
そんな二人を温かい笑顔で見送っていた




