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異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~  作者: 椿綺
第七章 家族の選択
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第七十二話 家族の選択

夕食を終え


食卓には温かいお茶が並んでいた


誰からともなく


静かな時間が流れる


円は湯飲みを見つめたまま


小さく息を吐く


「浩平に」


「もう一度会えたらって考えちゃうの」


その一言に


部屋は静まり返った


――――


最初に口を開いたのは


円の父だった


「会いたいんだろ」


円は静かに頷く


「うん」


「会いたい」


「でも」


「みんながいるから」


「私はここにいないと」


父は笑った


「何言ってる」


「親っていうのはな」


「子どもに心配される歳になったら終わりだ」


「俺たちはまだ元気だ」


「心配するな」


――――


隣で母も微笑む


「そうそう」


「浩ちゃんを待たせちゃだめでしょ」


円は思わず笑う


「お母さん」


「でも……」


母は優しく頷く


「円は昔からそう」


「何でも一人で抱え込む」


「たまには甘えなさい」


――――


息子が静かに口を開く


「母さん」


「親父はさ」


「母さんに何も言わずにいなくなったわけじゃない」


「きっと帰りたくても帰れなかったんだと思う」


円は俯いたまま


静かに涙をぬぐう


「そうだね」


「浩平なら」


「きっとそうだね」


――――


義娘が椿綺を抱きながら微笑む


「お義母さん」


「お父さんに会ってきてください」


「椿綺は私たちが見ています」


「だから安心してください」


椿綺は何も分からないまま


楽しそうに笑っていた


その笑顔を見て


円の目から涙がこぼれる


――――


父がゆっくり立ち上がる


「家族っていうのはな」


「困った時に支え合うもんだ」


「今度は」


「俺たちが円の背中を押す番だ」


母も息子も


義娘も


静かに頷く


円は一人ひとりの顔を見つめた


みんな笑っていた


誰一人


無理をしている顔ではない


本気で


送り出そうとしてくれている


円は涙を拭き


小さく笑った


「ありがとう」


「みんな」


その言葉に


家族みんなが笑顔になった


窓の外では


満月が静かに夜空を照らしていた


同じ月を


遠く離れた異世界でも


浩平が見上げていることを


円はまだ知らなかった


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