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異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~  作者: 椿綺
第六章 帰るための鍵
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第七十話 変わらない日常


カーテンの隙間から


柔らかな陽射しが差し込む


円は静かに目を覚ました


時計を見る


いつもと変わらない時間


「さて」


小さく呟き


キッチンへ向かう


朝食の準備を始める


味噌汁の湯気


焼ける魚の香り


炊きたてのご飯


いつもと変わらない朝だった


――――


「おはよう」


息子がリビングへ入ってくる


「おはよう」


円は笑顔で返す


義娘も椿綺を抱いてやって来た


「おはようございます」


「おはよう」


椿綺は円を見ると


嬉しそうに手を伸ばす


「はいはい」


円は笑いながら抱き上げた


「今日はご機嫌だね」


小さな笑い声が


部屋いっぱいに広がる


――――


朝食を終え


円は食器を洗っていた


その時


ふと流し台の隅へ目が止まる


そこには


少し欠けた湯のみが置かれていた


「まだ使ってたんだ」


思わず笑みがこぼれる


浩平が昔


「まだ使える」


そう言って


捨てずに使い続けていた湯のみ


今でも


食器棚の片隅に残っている


円はそっと手に取る


「浩平らしいな」


小さく笑った


――――


午後


円は庭の花へ水をやる


風が心地よく吹き抜ける


空を見上げると


白い雲がゆっくり流れていた


その時


胸が少しだけ締め付けられる


「……会いたいな」


思わず漏れた言葉に


円自身が驚いた


どうして今日に限って


そんな気持ちになるのか


自分でも分からなかった


――――


夕方


仕事から帰った息子が


円の表情を見て声を掛ける


「母さん」


「何かあった?」


円は少し困ったように笑う


「ううん」


「何でもないよ」


そう答えたものの


息子は気付いていた


母が


どこか遠くを見ていることに


窓の外では


夕焼けが静かに街を染めていた


ここまで『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をお読みいただき、本当にありがとうございます。


第六章では、工具箱に隠されていた秘密や、歴代便利屋たちの想いに触れることができました。


浩平は多くの人と出会い、多くの依頼をこなし、その積み重ねが「特別依頼」へとつながっていきます。


便利屋とは何か。


人を助けるとは何か。


その答えを少しずつ見つけ始めた浩平ですが、物語はここからさらに大きく動き出します。


次章では、これまで積み重ねてきた想いが、一つの大きな決断へとつながっていきます。


引き続き『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をよろしくお願いいたします。


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