第七話 忘れ物
翌朝
浩平はいつものように森へ向かった
橋の様子を見て
そのまま村へ戻るつもりだった
「異常なしっと」
橋を軽く叩く
問題はない
帰ろうとした時だった
カサッ
聞き覚えのある音
「またお前か」
白い狼だった
昨日より元気そうに歩いてくる
前足の傷もほとんど気にならない
「治ってきたみたいだな」
白い狼は浩平の前まで来ると
その場へ何かを置いた
赤い木の実だった
「くれるのか?」
白い狼は小さく鼻を鳴らす
「お礼ってことかな」
浩平は笑う
「ありがとう」
木の実を受け取ると
白い狼は満足そうに森の奥へ歩き始めた
その時
【依頼発生】
依頼内容 忘れ物を届ける
依頼人 ???
報酬 ???
受注しますか?
YES/YES
「忘れ物?」
浩平は迷わずYESに触れた
しかし
今回は知識は流れ込んでこない
代わりに
一本の矢印だけが浮かんだ
森の奥を指している
「案内しろってことか」
白い狼を見る
狼は一度だけ振り返ると
歩き始めた
「やっぱりそういうことか」
浩平も後を追う
――――
森の奥へ進むこと三十分
見たことのない場所へ出た
大きな倒木
苔むした岩
そして
小さな切り株の上に
古びた革袋が置かれていた
「これか?」
浩平が近付く
その瞬間
革袋が淡く光る
【依頼対象を確認】
届け先 北の森
「いやいや」
浩平は思わず笑う
「北の森って広すぎるだろ」
白い狼が歩き出す
どうやら案内してくれるらしい
さらに森の奥へ進む
すると
小さな洞穴が見えた
入口には
二匹の子狼が丸くなって眠っている
白い狼は革袋を見つめた
「ここか」
浩平はそっと袋を置く
その瞬間
子狼たちが目を覚ました
嬉しそうに白い狼へ駆け寄る
袋の中には
乾燥肉と薬草が入っていた
「忘れ物じゃなくて」
「届け物だったんだな」
白い狼は浩平を見つめる
静かに頭を下げたように見えた
浩平は照れくさそうに笑う
「便利屋だからな」
「届けるのも仕事だ」
その瞬間
工具箱が淡く光る
中には一本の新しい道具
丈夫な革手袋
触れた瞬間
頭へ言葉が流れる
【保護用グローブ】
動物の保護や危険物の取り扱いに適しています
「なるほど」
浩平は工具をしまう
「今回の仕事で増えたのか」
白い狼は子狼たちと一緒に森の奥へ消えていく
別れ際
一度だけ振り返った
その姿を見送りながら
浩平はゆっくり村への道を歩き始めた
「次はどんな依頼が来るかな」
便利屋の仕事は
まだ始まったばかりだった




